6月13日~15日、年次カンファレンス「Interop Tokyo」が幕張メッセにて開催された。その基調講演には、スタートトゥデイが運営するアパレルECサイト「ZOZOTOWN」の開発/運用を担う、スタートトゥデイテクノロジーズの取締役 大蔵峰樹氏が登壇。「ZOZOTOWNの縁の下」と題して、ZOZOTOWNの開発の歴史やシステム構成、組織づくりなど、これまで表に出なかったエンジニアリングの”舞台裏”を明かした。

1冊の本から始まったECサイト

「スタートトゥデイテクノロジーズはZOZOTOWNのシステム開発を行っている会社です。『ZOZOSUIT』関係のシステムも開発しています。今日も、ZOZOSUITの話が出るのではと期待した方がいらっしゃるかもしれません。でもすみません、今日はZOZOSUITの話は一切しませんので(笑)」

未来感のあるデザインとコンセプト、それが現実になったときのギャップ、さらにその後のビジネススーツ向け展開を含めて大いに話題となったZOZOSUIT。そんなZOZOSUITネタをつかみに始まった大蔵氏の講演は、ZOZOのビジネスを縁の下で支えてきたシステム開発の裏側から、今同社が力をいれているクラウドネイティブやマイクロサービスまでの道のりを紹介する内容となった。

スタートトゥデイテクノロジーズ 取締役 大蔵峰樹氏

ZOZOSUITだけでなく、配送料自由化やツケ払い、無料プレゼントなど斬新な企画でしばしば話題になり、時価総額はいまや1兆円を超える規模に成長したスタートトゥデイ。だが、同社のサービスがどのようなシステムや開発部隊によって支えられているのかは、これまであまり表に出てこなかった。

その理由について大蔵氏は「私があまり出たがりでなかったということもありますが(システム会社として独立し組織も整ってきたことなどから)、そろそろいいかなという思いで昔の苦労話として明らかにしておこうと思います」とした。

比較的有名な話だが、ZOZOTOWNの最初のシステムを作ったのはスタートトゥデイ 代表取締役社長 前澤友作氏だ。エンジニアですらなかった前澤氏は、秋葉原に出向き最初に手に取った本を参考に見よう見まねでECサイトを立ち上げた。だが、2004年12月にZOZOTOWNとしてサービスを本格展開するにあたり、システムの大幅な改修が必要になった。そこで白羽の矢が立ったのが、当時別の会社でエンジニアとして働いていた大蔵氏だった。

「100億円売れるシステムを作ってほしい、というのが当時の依頼内容でした。当時の売上は1億円程度。そんなにすぐにはいかないだろうと思って設計しましたが、約2年後の2007年3月には取扱高で112億円を売ってしまいます。さらに2013年頃に1,000億円を突破。開発コンセプトは設計当初からほとんど変わっていません。自画自賛になりますが、なかなかいい設計をしたなと思っています」

オープン後1~2年頃のZOZOTOWN

2003年末に相談を受けた大蔵氏は、既存のコードを踏まえつつ、本業の合間を縫いながら開発に取り組んだ。今でこそエンジニア約150名、デザイナー、データサイエンティスト、管理系スタッフなど含めて総勢240名という陣容の開発部隊だが、当時は大蔵氏を含めて2人体制だ。

「開発コンセプトは、『シンプル』『コードビハインド』『アパレルに特化』の3つでした。コードビハインドはデザインとコードを分離すること。アパレルに特化というのは、データベースでのデータの持ち方を当時の一般的なECシステムとは異なるものにしたことです。例えばTシャツなら、カラーとサイズが異なる場合それぞれを1つの商品としてデータベースに登録していましたが、これを1つの商品に対してカラーとサイズの商品展開があるというデータ構造に変えました。今では当たり前と思うかもしれませんが、このデータの持ち方によって、後々新しいサービスを展開する際に非常に大きな役割を果たしました」

当時の一般的なECサイト(画像左)とZOZOTOWN(画像右)の違い