今年6月、小田急電鉄が公式スマートフォンアプリ「小田急アプリ」をリリースした。

列車の運行状況はもちろん、各駅の構内図や混雑状況もすぐにわかるUIは、TwitterをはじめとするSNSでの評価が高く、リリース後約2カ月の7月末時点ですでに4万ダウンロードを突破している。

小田急アプリのホーム画面

実はこのアプリ、先進的な試みがいくつか盛り込まれている。そのうちの一つがIoT、すなわちセンサー通信を使った、トイレの空室表示機能だ。

同機能は、どういった背景から組み込まれ、どのように運用されているのか。アプリを企画した小田急電鉄 IT推進部の山田 聖氏、鈴木 毅氏に話を聞いたので、小田急アプリの企画経緯とともに紹介していこう。

小田急電鉄 IT推進部の鈴木 毅氏(左)と、同 課長代理の山田 聖氏(右)

業務担当者が必要性を感じて自ら企画

――まずは、お二方の立場を教えてください。

山田氏 : 私たちが所属するIT推進部では、当社をはじめとした小田急グループ各社に対する情報システムの導入支援や運用などを行っています。通常は、要請を受けて各社のIT担当者や業務部門と一緒に進めることが多いです。

鈴木氏 : 具体的に携わっているシステムとしては、グループウェアや経理システムをはじめとした業務システムが主で、企画・運用管理などを行っています。

――先月リリースした小田急アプリはエンドユーザー向けのものですが、IT推進部としては珍しいケースなのでしょうか?

山田氏 : そうですね、お客さま向けのシステムを扱うのは珍しいです。ですが、世間のスマートフォン活用状況を見て必要性は感じていたので、IT推進部で以前から検討を進めていました。

鈴木氏 : 当社には、交通サービス事業部門だけでも多くの部署があります。例えば、運転士らが所属する運転車両部、駅係員らが所属する旅客営業部などです。列車に関するデータについても、内容によって管理している部門が異なりますので、検討段階からそうした点も考慮して、各部署で保管しているデータや管理状況などの情報収集を行っていました。

――開発期間はどれくらいでしたか?

山田氏 : 開発に着手したのは昨年の10月で、今年の6月初頭にリリースしましたので、約8ヶ月間ですね。コンセプトや機能の概要を固めてからスタートしましたが、開発作業を進めながら、各部署に点在するデータを提供してもらう相談をしました。

データを集めるためには、各システムを改修しなければいけないということもあって、想定よりも時間がかかりました。