本格VRゲーム初開発秘話、少人数&短期間の挑戦で得られたもの - Unite 2017 Tokyo
初のVRゲーム開発、今までのゲームのお約束を全て捨てた
Unityユーザーのためのテクニカルな講演やブース出展が数多く行われた、国内最大のUnityカンファレンスイベント「Unite 2017 Tokyo」が5月8日、9日の2日間、東京国際フォーラムで開催された。
Unity本社からゲームエンジンの開発スタッフも来日し、Unityの最新機能解説をはじめ様々な講演が行われたほか、各種展示ブースも盛況のまま幕を閉じた。
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ジェムドロップ 代表取締役/スタジオディレクター 北尾雄一郎氏 |
このうち5月9日に行われた講演の1つが、ジェムドロップ 代表取締役/スタジオディレクター 北尾雄一郎氏と、同社アートディレクター 増田 幸紀氏による『僕らのVR元年はこれからだ!少人数開発 PS VR「ヘディング工場」企画とアートと技術と』だ。
講演では、同社がPlayStation VR向けに今年2月にリリースしたアクションアドベンチャーゲーム「ヘディング工場」の開発体験を基に、VRゲーム開発における注意点や課題などについて語られた。
ジェムドロップは2013年に設立されたゲーム制作会社で、VR、家庭用、スマートフォン、アーケードと幅広いプラットフォーム上のゲームを手がけている。今年2月に発売された「ヘディング工場」は、コントローラー・文字・文章・説明を一切使わずに頭だけを使うVRアクションアドベンチャーゲームとなっており、日本・アジア地域でリリース済みで、現在、北米・欧州でのリリースの準備を進めているという。
北尾氏は、このゲームの開発コンセプトについて次のように語った。
「VRが初めての人でも楽しめるような、誰でも遊べるVRゲームをつくることを目標とし、今までのゲームのお約束を全て捨てるようにした。また、最も台数の出ているHMD(Head Mounted Display)向けにまずはリリースすることも目指した」(北尾氏)
ここで同氏は、「実はこれらの他に裏のコンセプトがある」と話したうえでこう続けた。
「そもそも自分たちがVRゲームの開発が&ldquo初めて過ぎる&rdquoので無理をしないように心がけるとともに、自社パブリシティを狙ってとにかく短期間で制作するようにした。スペックが不定のハード向けに作るのは怖いので、まずはスペックが決まっているPlayStation 4を選択した」(北尾氏)
短期間&少人数開発を実現するための数々の工夫とは
こうして各種制限の中で最大のパフォーマンスを発揮することを目指し、問題に対してアイデアで解決するという前提のもと、「ヘディング工場」の開発は進められていった。
上のコンセプトから導き出された具体的な方針は、以下の7項目であった。
- コントローラーや文字・文章・説明・UIを不使用で、視線誘導を重視する
- 身体をコントローラーとしVRしかできないゲーム性を目指す
- テーマパークにあるライド物のアクションのような形にする
- 一人たりともVR酔いを出さない
- 現実より非現実の世界を描く
- まずはPlayStation VRで制作をする
- 短期間の開発を実現するため、PlayStation 4上でも制作実績のあるUnityを採用する
開発スケジュールは、まず約2ヶ月の期間でOculusのDevelopment Kit 2上で試作を行い、次に4ヶ月間をかけてPlayStation VR向けを試作。そして昨年の8月から今年1月までの約6ヶ月間で本制作を行っていった。
スタッフ構成は、ディレクター、プログラマー、ゲームデザイナーが各1名、それにキャラやモーション/エフェクト/イベント、マップセット/レイアウトなど各ジャンルのアーティストが計7名で10人程度と少人数だ。
短期開発に間に合うキャラを制作、一気に世界が広がった
ここで増田氏にバトンタッチし、短期開発のポイントについて説明した。
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ジェムドロップ アートディレクター 増田 幸紀氏 |
同氏は言う。「会社からは少人数で短期間で開発するよう指示があった。自分自身、Unityに触りはじめて一週間程度の時期だったが、とにかく無理をしないで作れる世界観にしようと考えた」
具体的には、「少ないアセットで構成できる世界」であり、「&ldquo安く作れる謎キャラ&rdquoがいる世界」であり、また「シンプルな質感でもいい世界」であった。
まず、少ないアセットで構成できる世界とするため、積極的にアセットを再利用するようにした。また、地面系アセットは作るのにそこそこ時間がかかり、VRではいろいろなところを見渡したいので、地面を無くしてしまうことを決断。その結果、地面のない空中世界を構築することとなったのだった。
「あまり削りすぎてしまうと苦しいので、環境やレイアウトなどを工夫して対応したが、やはりちょっと苦しかったかもしれない。今回の開発でわかった課題だと認識している」(増田氏)
また、&ldquoお安く作れる謎キャラ&rdquoがいる世界を目指した理由は、人型キャラを登場させるとモデル、モーションがで工数が膨らみそうだったためである。そこで、人型キャラではなく足がなく骨が6本で低ポリゴンな簡易的なキャラを作成した。
「実はこのキャラを作ってから世界観が広がっていった。世界に住人が住み着いて、動き回るようになっていった」(増田氏)
最後のシンプルな質感でもいい世界に関しては、テクスチャ/シェーダー制作の時間を減らすため、簡易的なキャラにも合うリアルすぎないおもちゃの質感の世界を目指していった。ざっくりな作りとすべく、Albedoはほぼ単色でUVは自動展開ベースとし、Unityスタンダードシェーダーのみで作成したのである。
これらの他にも、繰り返し行う単純作業は自社製のツールである程度対応するなど、短期間開発のための工夫が凝らされたという。
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