クラウド移行を成功させるには? アンチパターンを回避する「5つの鉄則」

[2020/09/18 10:00]冨永裕子 ブックマーク ブックマーク

クラウドネイティブ構成では共用モデルと回復性設計が肝

では、どうすればコストとサービスレベルの問題を解決できるのか。岡氏が勧めたのは「共用モデル」「回復性設計」を組み合わせ、モダンな「クラウドネイティブ」構成にすることである。

クラウドネイティブ

クラウドネイティブと言えば、Kubernetes、コンテナ、サーバレスのことを連想するかもしれないが、岡氏は共用モデルと回復制設計を満たすクラウドに特化した構成にすることこそが「クラウドネイティブ」だと強調し、それぞれについて説明した。

共用モデル

このモデルを理解する上で役に立つキーワードは「ウォームプール」である。反対語の「コールドプール」が電源の落ちているサーバルームだとすると、ウォームルームとはコンテナをいつでもデプロイでき、数10秒から数秒以内でリソースを利用できる。例えばGoogle App Engineの場合、Go言語で書かれたアプリケーションが5ミリ秒で立ち上がる。このように、常にウォームプールを使う選択肢がないかどうかを考えることがクラウド移行では重要だという。

回復性設計

「回復性」とは、障害から回復して動作を続行するシステムの能力を意味する。これはマラソンで走っていて途中で転んだとしても、数秒後には立ち上がって再び走り出せることができるようなものだ。障害が起きても、回復時間が限りなく短ければ冗長構成にする必要はない。実際のクラウドサービスでは、回復時間を短くするために多重化やリトライなどさまざまな手法を組合せ、回復性を高めている。

クラウドネイティブ構成の導入では、「サーバをペットから家畜に転換する」ような発想の転換も求められるという。日本のエンタープライズシステムでは、ペットのように大事に育ててきたシステムが多い。だが、必要なときに必要なリソースを割り当て、使い終わったら躊躇なく捨てる使い方に変わるとすると、ペットのままではクラウドの良さを活かせない。クラウドネイティブ構成では、表現は極端だがサーバを家畜のように扱う割り切りが必要になるわけだ。

クラウド移行の「5つの鉄則」

とは言え、いきなりクラウドネイティブ構成を自社システムに適用することは難しい。そこで岡氏はクラウド移行の”鉄則”として以下の5つを紹介した。

1. クラウド移行のゴールを明示する

まず、ゴールをはっきりさせることから始める。例えば「コスト最適化」「プロジェクト立ち上げの迅速化」など、どんなゴールでも構わない。最悪なのは「何となく」で移行に着手することである。岡氏の場合、「NoOps(No Uncomfortable Ops)」をゴールに据え、システム運用の「嬉しくないこと」をなくそうと取り組んだという。

2. クラウドネイティブの技術を使う

次に必要になるのが技術の目利きである。ここでは共用モデルと回復性設計の2つを駆使している技術を選びたいところだ。岡氏は、「フェールオーバーのダウンタイムが60秒以上必要」「プライベートネットワークに配置」「リソースの拡張に数分から数10分必要」、この3つの条件に”当てはまらない”サービスがクラウドネイティブなものに該当する。岡氏は「こうした観点で各社のサービスの仕様を読み解くと、どれがクラウドネイティブなのかが見えてくる」と助言した。

3. 分割と段階的な移行を計画する

いきなり全てをクラウド上に移行するのは、あまりにもリスクが大きい。今のネットワーク速度ならば、オンプレミスとクラウドの混在環境でも動かすことが可能だ。そこで例えば、ストレージだけ、DBサーバだけ、アプリとDBだけなどの分割ポイントを検討し、段階的な移行を進めることが望ましい。

4. サービスレベル目標(SLO)を使う

可用性やレスポンスタイムの評価は、サーバ単位からサービス単位に変わる。クラウド環境では、いかにサーバを落とさないかではなく、サービスをどれだけ継続できるかを重視することが求められる。

5. 組織のクラウドフィッティングを計画する

サーバ単位での評価がなくなれば、インフラエンジニアに求められることが変わる。ハードウェア技術ではなく、クラウドネイティブ技術やSRE(Site Reliability Engineering)技術の獲得が求められるようになるはずだ。アプリケーションエンジニアの開発スタイルも変わり、「ひいてはエンジニア組織自体が変わることになる」(岡氏)という。

これら5つの鉄則は、相互に関連し合ったものだ。岡氏は「クラウドの特性を活かしてゴールを共有し、明確な意思を持って移行を進めてほしい」と訴えて講演を終えた。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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