ガートナー ジャパンは4月23日~25日に「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス 2019」を都内にて開催した。

本稿では、ガートナー ジャパン ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏が登壇した講演「クラウドコンピューティング・トレンド2019(春)」の模様をレポートする。

「New World」のために検討すべき「7つのコト」

「企業がクラウドをどう活用すべきか」について、ガートナーが方向性や定義付けを行ったのは今から10年前のこと。2006年にAmazon EC2がリリースされ、2011年9月にNISTがクラウドの定義を発表しているが、ガートナーは2009年の段階で、クラウドを新しい技術ではなく「新しいコンピューティングスタイル」だと捉えるべきだと主張した。

ガートナー ジャパン ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏

具体的には、クラウドを「インターネット技術を利用したサービスとして、スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力を企業外、もしくは企業内の顧客に提供するコンピューティング・モデル」だとしたのである。

当時、ガートナーのハイプサイクルにおいてクラウドは「過度な期待」のピークに位置づけられ、「信頼性はあるのか」「コストは削減できるのか」といった議論が過熱していた。しかし、10年を経て、クラウドはいよいよ「幻滅期」を超え、本格的な利用期に入った。亦賀氏によると、いまやクラウドの利用は「マスト」な状況だ。

「いまだにクラウドが使えるかどうかを議論しているのは、周回遅れと言わざるを得ません。クラウドなしに、これからのデジタルの取り組みはありえません。全ての企業がクラウドを加速させる必要があるのです」(同氏)

クラウドへの移行について、ガートナーは「モード1」「モード2」というシステムの特性に応じて分類するアプローチを提唱してきた。

モード1は基幹系システムのような業務システムベースのアプリケーションを対象としており、モード2はデジタルビジネスのベースとなるクラウドネイティブなアプリケーションを対象とするものだが、近年はその”先”のシステム像も見えてきている。それがメッシュで構成される「New World」だ。

「New Worldは、クラウドネイティブは一層進み、People-Centricなテクノロジーサービスをベースにメッシュのなかでさまざまなプロセスが自動化される世界です」(亦賀氏)

コンピューティングスタイルのパラダイムシフトを20年刻みで見てみると、1970年からのメインフレーム、1990年からのオープンシステム、2010年からのクラウド、2030年からのメッシュという位置づけになる。

「クラウドコンピューティングの真のインパクトは、世界のビジネススタイルやライフスタイルを変えることです。これから先のNew Worldを見据え、2020年までにクラウドを『自分で運転』することを開始し、基礎固めを確実に行う必要があります」(亦賀氏)

では、New Worldに向けた基礎固めのために、今検討しなければならないことは何か。

亦賀氏は基本的な事項も含めて以下の7つの論点を挙げ、それらについて順に動向、見解、提案を提示していった。

  1. 市場概況を知りたい
  2. AWSのようなクラウドの概要を知りたい
  3. クラウドの見積金額の妥当性を知りたい
  4. どのようなクラウド人材を育てたらよいか教えてほしい
  5. AWS、Azure、GCPの違いを知りたい
  6. どのようなテクノロジートレンドがあるか知りたい
  7. どのようなクラウド戦略を立案すればよいか

1つ目のクラウドの市場概況については、国内でもゆっくりと、しかし着実に導入が増えており、「オンプレミスかクラウドか」という議論は過去のものになった。ガートナーへの最近の問い合わせでは、「グローバルのSAP運用に耐え得るクラウドサービス基盤は?」「AWS、Azure、GCPのどこを選べばよいか」「AWSとの価格交渉をどう進めればよいか」「モード2人材へのスキル転換をどう図るか」など、具体的かつ将来を見据えた質問が増えてきたという。ただし、「モード1の話が多く、モード2に対しての感度はまだ低い。全てがモード2になる時代を踏まえ、アクションを加速させる必要がある」と亦賀氏は釘を刺す。

続く2つ目の「AWSのようなクラウドの概要」については、「まずは自分で検索して調べること。検索も1つのリテラシー」だと指摘。その上で「モード1が仮想ホスティングの延長だとすれば、モード2はサービス部品の集合体と考えるとわかりやすいでしょう。サービス部品はリファレンスアーキテクチャという雛形で組み立てます。これは電気回路図のようなものです。回路図を見ずにコンデンサがどうだ、抵抗がどうだという議論をしてもラジオは作れません。冗長構成がどう、DRがどうというのではなく、雛形を確認してとにかく作ってみることが大事です」(同氏)と説いた。