ガートナー ジャパンは4月25日~27日、「ITインフラストラクチャ、オペレーション・マネジメント & データセンター サミット 2018」を開催した。本稿では、日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長 三澤智光氏による講演「企業のデジタル変革を牽引するIBM Watson & IBM Cloud プラットフォーム」の模様をレポートする。

デジタル化に成功している企業の大きな特徴とは?

IBMが毎年1万人以上の経営層を対象に実施している「グローバル経営層スタディ」という調査がある。最新の調査結果によると、72%の経営層が「業界の革新的な既存企業が業界内の創造的破壊を主導している」と回答したという。三澤氏は、「これは、自社のライバルになるのはAmazonやGoogleなどの『デジタルジャイアント企業』ではなく、自社が属する業界内の『デジタル武装した企業』だと捉えているという意味」だと説明する。

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長 三澤智光氏

デジタル武装におけるキーワードの1つが、いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)」だ。デジタル変革では、コンピューティングシステムもデジタル化されるが、こうしたデジタル時代のシステムがこれまでと異なる点は、業務を支えるシステムか、テクノロジーをベースに新たな業務を作っていくかの違いだという。

これまでのシステムは、財務会計や人事給与、販売管理、生産管理、顧客管理などの業務を支えてきた。これに対し、デジタル時代のコンピューティングシステムは、IT自体が支えるのではなく、テクノロジーを主導して、新たなビジネスモデルをつくっていく。

「デジタル時代にはこの違いを考えなければなりません。デジタル化に成功している企業が取り入れているシステムには、2つのタイプがあります。1つは、新しい顧客体験を次々に生み出すプラットフォームを持っていること。これにより、新しいサービスを次々に投入して顧客の満足度を向上させています。もう1つは、さまざまなデータを組み合わせる仕組みを持っていること。社内外のデータをAIなどを活用して分析しています。この2つの仕組みを融合していることが、成功企業の大きな特徴です」(三澤氏)

新しい顧客体験を次々と生み出していくタイプのアプリケーションには、どのような条件が求められるのか。これについて、三澤氏は「マイクロサービスアーキテクチャ」「コンテナ技術」「コンテナマネージメントシステム」を挙げ、「アプリケーションのデザインをできるだけ小さな単位で疎結合していくテクノロジーによって、変化に迅速に対応していくことが重要です」とした。

具体的な技術としては、DockerとKubernatesが標準になりつつある。IBMはCluod Native Computing Foundationの初期の設立メンバーとして活動してきた経緯があり、DockerとKubernatesには2015年頃から多くの投資を行ってきた。また、Googleらと協力して、コンテナのサービスメッシュ管理やIstioの開発、ソースコード管理の標準化を推進するほか、Container as a ServiceとしてIBM Cloudへの実装もいち早く進めてきた。

また、IBM自身が持つアプリケーションのコンテナ化、マイクロサービス化も進めている。IBMは企業向けの巨大なクラウドベンダーであり、ソフトウェアベンダーであり、WebSphere、DB2、MQ、Tiboliなど代表的なオンプレミスシステムのマイクロサービス化を推進している。これによって顧客は2つのメリットを得るという。

「1つは、OSSだけでクラウドネイティブ化を進める難しさに対して、メーカーが提供する部品を活用するという選択肢を提供できること。もう1つは、既存のアプリケーションのモダナイズをスムーズに進められることです。ここまで自社アプリケーションのマイクロサービス化を進めているベンダーはIBMだけだと思っています。特徴的なサービスとしては、Container as a Serviceをオンプレミスで稼働させる仕組み『IBM Cloud Private』があります。昨年秋から提供を開始した新製品で、多くの反響があります」(三澤氏)