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国際観光都市 SHIBUYAがIoTを駆使して挑む、本気の「おもてなし」

[2018/01/12 16:10]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

「この街が好き」を醸成するために渋谷区がやったコト

渋谷区が実証実験として取り組んだのは、ビーコンを使ったリアルタイムの情報取得とサービス連携だ。渋谷区の観光情報センターとしては、渋谷駅前に設置された緑色の電車「アオガエル」の中や原宿の「もしもしボックス」、渋谷マークシティ内にある「観光協会案内所」などがある。外国人観光客は、アオガエルに月平均3,333人、もしもしボックスに月平均764人、観光協会案内所に月平均500人訪れているという。

ただし当然のことながら、案内所からどのエリアに移動したかまでは把握できていない。そこで、SNSへの書込みで「Shibuya」をキーに分析してみると「Crossing」「Night」「Street」といった単語と共に使われることが判明した。また、携帯電話の位置情報などから外国人の行動を分析すると「12:00~19:00」の時間帯が多く占めることがわかった。つまり、外国人の渋谷区観光は「日中、短時間」「スクランブル交差点だけを見て移動しているのではないか」(岩本氏)という懸念が浮かび上がったわけだ。

「どこの観光協会もそうですが、地図を印刷して配っても外国までは届きません。旅前、旅中でリアルタイムの施策で街を体験してもらうことが大切です。そこで、新たな取り組みのコンセプトとして『OPEN LOCAL』を掲げました。デジタルテクノロジーを用いて街の魅力を発見してもらう。ローカルカルチャーやローカルコミュニティを体験してもらう。それが街への『好き』を醸成すると考えました」(岩本氏)

渋谷区観光協会City Experienceディレクター岩本義樹氏

その具体的な施策が、1,500個のビーコンとビーコンを活用するアプリをサードパーティに解放することだ。ビーコンは2016年5月に渋谷駅前などに300個を設置したのを手始めに、2017年3月までに800個、2017年度中に700個と、計1,500個にまで拡大させている。スクランブル交差点から道玄坂、宮益坂方面への街灯の1つおきに設置されるほか、協力してくれている商店街の店舗内など、街中のいたるところにビーコンネットワークが張り巡らされている状況だ。

iOSとAndroid向けに公開中のリファレンスアプリ「PLAY! DIVERSITY SHIBUYA」には、スポット情報やイベント情報のレコメンド、場所にメッセージを残せるノート機能、通知機能などを搭載。また、観光サイネージアプリ「JOYin! SHIBUYA」というタブレット向けアブリを開発し、アプリをインストールした50台のタブレットを旅行者に配布する取り組みも行っている。

これらアプリとビーコンネットワークはプラットフォーム化され、外部パートナーに解放されている。これにより、例えば街を歩いているときに喫煙スポットを紹介したり、新商品を案内したりといったことが可能だ。キャラクターIP保有会社やメッセージアプリ会社、映画配給・おもちゃ会社、防災・見守り、求人情報配信会社など、サービスの開発者は一定期間無償でプラットフォームを利用することができる。

「商店街の協力を得ながら、景観を損なわないよう街灯に合わせてビーコンの箱の色を変えるなど、骨を折りながらビーコンを設置してきました。ビーコンを設置することで、外国人観光客の回遊を誘発し、地域での消費を高めようとしています。それだけでなく、街の空間をプラットフォームにして、地域が直接的な収益を得られ、また、その効果を測定できるような仕組みを提供しようとしています」(岩本氏)

データ活用で実現するマネタイズモデル

こうした事業を継続させる上で重要になるのがマネタイズだ。「よくあるのは、行政からの補助金がなくなると民間企業がいなくなり、事業が立ちゆかなくなるというパターンです。それを避けるためにお金を儲け、自走する仕組みを考えました」と岩本氏は話す。

マネタイズモデルとしては、「広告配信型」「誘導成果報酬型」「3rdパーティ利用料型」の大きく3つを想定している。広告配信型は、ビーコンに反応したアプリやブラウザでデジタル広告を表示して課金するモデル。誘導成果報酬型は、配信された広告から店舗や施設などへの誘導が実現した際に課金するモデル。3rdパーティ利用料型はビーコンを見て利用したサービスやイベントの利用料モデルである。

「地元の商店街や企業と組んで、インフラを維持し、継続的に収益を挙げられる取り組みにしていこうとしています。そこで重要になるのがデータです。データを自前で取得して、ビーコンに反応した場所、アプリが取得するプロファイル、GPSデータなどを組み合わせて可視化していきます」(岩本氏)

例えば、滞在情報とプロファイルから「どんな人がいつどこにいたか」がわかる。また、ビーコンの反応順から経路を導き、それをプロファイルと組み合わせることで「どのルートで、どんな人が来店するか」が明らかになる。さらに、ビーコンの反応とアプリへのPush通知の内容から「来店した客に適切な接客ができたか」なども可視化できるというわけだ。

こうした可視化を実現するにあたっては、オラクルが提供するPaaS「Oracle Cloud Platform」を活用し、分散したデータを統合して地域関係者に提供する。さらに、おもてなしプラットフォームへの接続も、アプリに組み込まれたSDK、各種サーバ、Oracle Cloudの3つから行っていく方針だ。

講演では、オラクルの担当者によるデータの可視化を行っていく流れのデモも行われた。再開発や、東京オリンピックを前にした訪日客の増加でますます注目を集める国際観光都市 SHIBUYA。テクノロジーを活用し、どんな「おもてなし」が実現していくのか、目が離せない。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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