プライベートクラウド検討者のための Azure Stack入門
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前回、Azure Stack最後のテクニカルプレビューであるTP3登場のタイミングで発表された課金モデルについて説明しました。もちろん、課金モデル以外にもAzure Stackで提供予定の機能やエコシステムについてのコメントがありました。今回は、ようやく見えてきたAzure Stackの機能について解説します。
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パブリッククラウドである「Azure」では、CPUの違いやストレージ環境、高速ネットワークやGPU搭載の有無などHyper-Vを動かす物理マシンにもさまざまな種類があります。そして、それらの違いを利用者の用途によって選択してもらえるよう、「A」とか「D」、「F」といった型番が付いています。
では、Azure Stackはどうかというと、第16回の記事で解説したとおり、Azureとのハイブリッド利用時に整合性が保たれるよう同じ型番が採用されています。ただし、現時点のAzure StackにはAzureのように多くの種類のハードウェアがあるわけではないので、TP3では、A/D/そしてD v2が選択できるようになっています。
また、仮想マシンの新しい使い方として、Azureで既に提供中のAzure Virtual Machine Scale Sets (仮想マシン スケールセット)が使えるようになります。これは、全く同じ仮想マシンを複数利用する場合に有効なサービスで、1台1台を別々の仮想マシンとして管理せずに、1つのセットとして柔軟にスケールアウト、スケールインを可能にしてくれるものです。ビッグデータ系の処理ノードや、コンテナーを動かすためのベース仮想マシン、PaaSの基盤構築などで効果を発揮してくれることでしょう。
基本的な機能や使い方はこちらの記事「Azureの仮想マシン スケールセットとは」をご参照ください。
ネット非接続でも利用可能! - Disconnected scenario with ADFS
Azure Stackはこれまで、オンプレミスに配置可能なプライベートクラウドでありながらクラウドサービス「Azure Active Directory(Azure AD)」による認証が必須、というスタンスをとってきました。それにはさまざまな理由があるものの、実際のITの利用用途を考えると、インターネットとの常時接続が難しい環境があることも事実です。
そこで今回、常にインターネットにつながっていなくてもAzure Stackが利用できる仕組みがサポートされました。
構成としては、直接社内のActive Directory認証をするのではなく、「Active Directory Federation Services(ADFS)」を経由してActive Directory認証を行うようなかたちとなります。
Azureのエコシステムを感じるとき - Azure Marketplace Syndication
Azureには多種多様なアプリケーションをAzure上でスムーズに使うための仕組みとして「Azure Marketplace」が用意されています。利用者は、このMarketplaceから必要なアプリケーションを選択することで、使いたいアプリケーションを迅速に展開・利用できます。
今回、そのAzure Marketplaceのアプリケーションのなかで「Azure Stackでも利用可能にする」というオプトインが「有効」になっているものは、スムーズにAzure Stackに取り込めるようになりました。
まだまだ数は限られていますが、管理者はAzure Stackの「Marketplace Management」という管理画面から必要なアプリケーションをワンクリックでダウンロードし、Azure Stackの利用者に公開することができるようになっています。これはまさに、Azure Stack利用者が、Azureの「エコシステム」を感じる瞬間でもあります。
Azure Stack上での利用を想定した各種テンプレート
Azure Stackはクラウド基盤でしかないので、「その上で何を動かすか」がとても重要です。今回、Azure Stackに組み込まれたIaaSやPaaS、先ほどのMarketplace以外にも、企業ユーザーにとって重要な役割を果たす可能性のある以下のソリューションがテンプレートの形式で提供されることが発表されました。
- Cloud Foundry
- Mesos
- Blockchain
「Azure & Azure Stack上にCloud FoundryベースのPaaSを構築してハイブリッドで利用する」――といったシナリオが現実味を帯びてきています。
Azure Stackでもサーバレス!
とうとう、「Azure Functions」がAzure Stackでも使えるようになります。Azure Functionsは、サーバレスアーキテクチャの話と共に語られる「今後期待されている機能」であり、つい先日Azureでも正式リリース(GA:General Availability)されたものです。
サーバや仮想マシンを意識せず、処理したいコードを処理したいタイミングで実行できるので、これまでインフラの管理に割いていた多くの手間を排除できるようになる可能性があります。
基本的な機能や使い方はこちらの記事「Azure Functionsの概要」をご参照ください。
マイクロサービスを活用せよ! - Azure Service Fabric
昨今のトレンドとして、アプリケーション設計時に従来型の3階層ではなくマイクロサービスベースのアーキテクチャを採用する動きがあります。ここでの詳細な解説は割愛しますが、マイクロソフトは、このマイクロサービスアーキテクチャに最適化された実行基盤として「Service Fabric」を開発しました。
Service Fabricは、スケーラブルで信頼性が高く、サービスの更新なども含めた管理がしやすい基盤です。マイクロソフトが提供するいくつかのサービス(Azure SQL DatabaseやMicrosoft Intuneなど)でも数年にわたって利用され、実績を積んでいます。こちらも先日Azureの正式なサービスとなり、Azure Stackでも利用できるようになりました。
基本的な機能や使い方はこちらの記事「Azure Service Fabricの概要」をご参照ください。
実は、変化・進化し続けるプライベートクラウド基盤であるAzure Stackのコンポーネントの一部も、マイクロサービスで開発されています。そして、このマイクロサービスたちは、Service Fabricをベースに高可用性と信頼性、今後出てくるであろう更新時の安定性などを担保していくことになります。
* * *
さて今回は、Azure Stack TP3のタイミングで発表になった機能について説明しました。次回はTP3の画面や操作性などを紹介する予定です。お楽しみに。
著者紹介
日本マイクロソフト株式会社高添 修
Windows 10やVDIの世界にいるかと思えばSDNやDevOpsのエンジニアと普通に会話をし、Azure IaaS登場時にはクラウドの先頭にいたかと思えばオンプレミスデータセンターのハードウェアの進化を語るセミナーを開くなど、幅広く活動するマイクロソフト社歴15年のベテラン。最近は主にAzure Stackをテーマにしたハイブリッドクラウドの普及活動に力を入れている。
※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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