Clouderaは11月8日、「Cloudera World Tokyo 2016」を東京都内にて開催した。同イベントでは、ビッグデータ基盤「Apache Hadoop」を取り巻く企業やパートナー、エンドユーザーを対象に、クラウド・IoTのベストプラクティスから急増するデータの分析・活用・管理のノウハウ、システム基盤の運用・構築に至るまで、さまざまな切り口のセッションが繰り広げられた。

その基調講演で最後に登壇したのは、インテック プリンシパルで大阪大学 招聘准教授、Tクラウド研究会 発起人・幹事を務める中川郁夫氏だ。本稿では、「IoTとビッグデータをビジネスインパクトにつなげた国内外の事例」と題して行われた講演の模様をレポートする。

業界構造を「破壊」したUberのビジネスモデル

中川氏は、コスト削減や効率化とは違う次元で生まれつつある大変革「デジタルイノベーション」について、3つの企業の事例を基に解説することで、ビッグデータ・IoTに取り組む上でのヒントを示した。

インテック プリンシパル/大阪大学 招聘准教授/Tクラウド研究会 発起人・幹事 中川郁夫氏

まず1つ目の事例が、ライドシェア(相乗り)サービス「Uber」だ。「IoTを応用した配車サービス」という意味では、既存のタクシー事業者も同じような仕組みを作っていた。しかし、それらは業務改善型の発想から成るもので、既存事業の枠のなかで開発されたアプリケーションにすぎなかった。

一方、Uberのビジネスモデルは「個人の利用者とドライバーを直接つなぐ」というもので、そこにタクシー会社は不要だ。

「Uberの戦略は、既存のタクシー事業者には決して選択できなかったものです。これこそ業界構造破壊型のイノベーションだと言えるでしょう。そして、実際に今、世界中のタクシービジネスを変えつつあることに注目していただきたいと思います」(中川氏)

現在、Uberは世界60の国・地域、300以上の都市で展開するまでに成長し、2015年の評価額は約5.1兆円にも及ぶという。

「根本的に事業構造を見直し、IoTやビッグデータなどを的確に活用したらどれだけのインパクトのあるサービスが可能になるのか、投資家はよくわかっているのでしょう」(中川氏)