アイ・ティ・アールは10月19日、『国内IT投資動向調査2017』の調査結果概要を発表した。同調査は、アイ・ティ・アールが国内企業を対象に毎年実施しているもの。今回で16回目となる。設問は、IT予算の増減傾向や、重視するIT戦略など、110項目で構成されている。有効回答は2685件。

アイ・ティ・アール シニア・アナリスト 館野 真人氏

今回の調査では、IoT・AIといった新テクノロジーへの投資意欲が明確に伸びていること、セキュリティ対策予算が過去最高を更新していること、グローバルITガバナンスの主導権を海外に移す傾向にあることなどが、見て取れたという。

IT投資増加が28.5%! 3年ぶりの高水準

調査によると、IT予算の増減に関して28.5%の企業が増額と回答。アベノミクスという言葉が生まれた2013年以来、3年ぶりの高水準となった。

企業規模別で見ると、「増額は、売上高500億円以上の企業が多く、中堅中小企業は引き続きIT投資の面では厳しい状況にある」(アイ・ティ・アール シニア・アナリスト 館野 真人氏)という。

また、投資増減指数を業種別に見ると、上から「石油製品製造業」「娯楽・レジャー業」「パルプ・製紙造業・印刷業」と続く。また2017年度の見込みとしては、「精密機器製造業」「化学工業製造業」「運輸業」という並びになっている。

IT投資増加割合 上位業種

IT予算の対売上高(総収入)比率では、「金融・保険業」が6.1%でトップ。続いて、「情報通信業」が3.8%、「公共」が2.9%という結果。全体の平均は2.6%だった。

セキュリティ対策費は増加の一途

投資の内訳について、新規システム構築や大規模リプレースなどの「新規投資」と、既存システムの維持や若干の機能拡張などの「定常費用」とで分けて聞いたところ、新規投資が過去最低の30.6%という結果になった。新規投資の比率は一環して減少する傾向にあり、その背景には、クラウド利用が増加していることなどが影響していると見られるという。

また、新規投資の内容に目を向けると、ビジネス成長(新規ビジネスの創出、既存ビジネスの拡張など)が32.3%、業務効率化(プロセス改善、自動化、就労環境の改善など)が37.1%、業務継続(コンプライアンス、セキュリティ、災害対策など)が30.6%。前年同様、概ね3分の1ずつという結果だが、ビジネス成長は0.7%の微増状況にあるという。

新規投資は、ビジネス成長、業効率化、業務継続が同程度ずつ

一方、リスク対策に関しては、IT総予算に対する、情報セキュリティ対策費、災害対策費、IT内部統制費の割合がいずれも過去最高を記録。増加するサイバー攻撃を前に対策費も増加しており、「企業によっては、IT予算としてではなく、企業全体のリスク対策費として別途計上するケースもある」(館野氏)と言い、経営層の認識にも変化が表れている。

リスク対策費はすべての分野で増加傾向

その他、最重要視するIT戦略上のテーマという設問に関しては以下のとおり。

IT戦略上、重視しているテーマ

加えて、IoT、ビッグデータ、アジャイル・ソフトウェア開発に関しては、実施済みまたは実施予定という回答が大きく増えているほか、IT支出に対するIT部門の決定権が、年々減少傾向にあったものの、2016年度は前年度比で若干増加した。

ここ数年、IT支出の決定権はIT部門以外に移譲される傾向が加速していたが、今年はわずかに減少した

IoT、ビッグデータ、アジャイルはさらに増加