7月6日~7日、OpenStack Days Tokyo 2016 実行委員会が主催する年次カンファレンス「OpenStack Days Tokyo 2016」が東京都内で開催された。4回目の開催となる今回は「10年先のプラットフォームへ」をテーマに掲げ、OpenStackの最新動向はもちろん、導入事例の紹介や活用のコツなど、さまざまなセッションが繰り広げられた。

本稿では、2日目のキーノート講演「エンタープライズに聞くOpenStack活用の心得。なぜOpenStackの導入を決めたか」の模様をダイジェストでお届けする。

JFEスチールがOpenStackを採用した理由

ベンダーやサービスプロバイダーでの取り組みが先行したOpenStackの導入だが、この1~2年の間にエンタープライズ環境への導入も急速に進んでいる。OpenStack Foundationのユーザー調査によると、2014年4月にはOpenStackユーザーのうち従業員1,000人以上の企業の割合は全体の34%だったが、2016年4月には全体の54%と過半数を超えたという。キーノートでは、国内での成功事例として、JFEスチール、NTTドコモ、富士通のOpenStack導入担当者が登壇し、それぞれ自社の導入事例を紹介した。

JFEスチール IT改革推進部の渡邉健太郎氏

JFEスチール IT改革推進部の渡邉健太郎氏

まず最初に登壇したのは、JFEスチール IT改革推進部の渡邉健太郎氏だ。JFEスチールは、ITビジョンとして「迅速に変化に対応できるグローバルレベルのIT活用先進企業」を掲げ、IT計画を進めている。だが、これまで社内のITインフラは個別に構築・最適化されていたため、手がつけられないほどに複雑化していた。

そこでJFEスチールでは、次世代向けITインフラ「J-OSCloud」の構築を決定し、そこにOpenStackを採用したのである。

渡邉氏は、今後を見据えたJ-OSCloudへの要求事項として、「従来のサービス品質を維持すること」「資源・運用面でコストパフォーマンスが高いこと」「運用効率の向上」の3点があったと説明する。

「ネットワーク仮想化技術によって、東西に分散したデータセンターを1つに統合できること、標準化・自動化に対応できることが決め手となり、OpenStackの採用を決めました」(渡邉氏)。

J-OSCloudでは、ITサービス管理基盤とクラウド提供基盤がWeb APIで連携する構成になっている。ユーザーがサービスポータルを通じてリソースの払い出しを要求すると、Web API経由でクラウド提供基盤側に伝わって自動的にプロビジョニングが実行される仕組みだ。

J-OSCloudのアーキテクチャ

ITサービスやクラウド基盤の管理には、IBMの管理製品を利用している。当初はBPM製品からリソースを管理するOpenStack非依存型で進めていたが、最終的にはBPM製品でOpenStackを管理し、OpenStackのAPIで全てのリソースを管理するアーキテクチャとした。その理由について、渡邉氏は「ベンダーに依存せず、迅速かつ柔軟に変更に対応可能なアーキテクチャにする必要があったからです」と説明した。

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