JBグループは5月20日、年次イベント「JB Group IT Forum 2016」をザ・プリンスパークタワー東京にて開催した。今回のテーマは「つながる! IoT×現場×Ecoシステム」。あらゆるモノのつながりを実現するIT活用のあり方について、さまざまな展示やセッションが繰り広げられた。本レポートでは、日本マイクロソフト エバンジェリスト 業務執行役員 西脇 資哲氏によるセッション「私たちの社会を変えるIoTの全貌」をピックアップし、その内容をお届けする。

技術革新で仕事は「なくなる」のではなく「変わる」

日本マイクロソフト エバンジェリスト 業務執行役員 西脇 資哲氏

日本マイクロソフト エバンジェリスト 業務執行役員 西脇 資哲氏

「最近、AIマシンラーニングやロボティクスによって、人間の仕事がなくなるのではないかと言われています。まずはその辺りについてお話しましょう」 ――西脇氏はセッションの冒頭こう語り、今から約100年前、1905年のNYの町並みの写真を見せた。ガス灯が灯り、馬車が走る。続けて表示された20年後の写真では、町並みが整備されて馬車は消え、自動車が走っていた。西脇氏は、「馬に関わる仕事をしていた人たちは、どこに行ったのでしょうか? 今度は駐車場やガソリンスタンド、修理工場などで働くことになったのです。ガス灯が電灯に変わることで、ガス灯に燃料を入れる仕事をしていた人たちは今度は電球の交換や、送電・発電にかかわる仕事などに携わることになります」と説明する。

「私たちはいくつもの産業革命を乗り越えてきましたが、それで仕事がなくなることはありません。なくなるのではなく、変わるのです。1900年代初頭のわずか20年でこれだけの変化がありました。2000年代の今は、もっと速い速度で変わっていきます。そして、IoTがそれを加速させるのは間違いありません」(西脇氏)

では、どんな変化が起こりうるのだろうか。氏は、その一例としてドイツの企業「SM!GHT」が提供するスマートライトの事例を紹介した。SM!GHTが提供する街灯は、Wi-Fiのホットスポットとして機能するだけでなく、設置されたセンサによって気圧や大気汚染、照度、湿度、騒音などを計測する。集めたデータは、観光や工事などに使われるほか、自治体にも提供されるという。

「今までは電灯を供給していた企業が、まったく違うビジネスを実現した成功例です。アイデアさえあれば、今のインフラで十分仕事を変えることができます」(西脇氏)

この例で言えば、たとえばサイネージと連携し、街灯に順番にサインが出るような仕組みを作ったり、騒音が少ない静かな場所の明かりはより明るくして治安を向上させたりといったアイデアが考えられる。西脇氏は「このように、仕事がなくなるのではなく、技術革新が起きているのだということを理解してほしい」と強調した。

IoT活用で”瞬間のデータ”が必要なケース

スマートライトの事例のような技術革新は、「モバイルデバイス」とそれを支える「クラウド」の両輪がないと成り立たない。 スマートライトの例で言えば、街灯がLEDを搭載し、さまざまなセンサが組み込まれたデバイスに相当する。そのデータは、マイクロソフトのクラウドが収集し、データセンターに保管しているのだという。

一般にデータセンターは、相応の敷地を必要とするため、地価が安い地域で構築されることが多い。だが、マイクロソフトでは地価にかかわらず、欧米の人口集中地域やオーストラリア、ブラジル、インドなどにそれぞれ設けられており、日本では東京と大阪にあるのだという。それはなぜか。

「たとえば、日本から米国まで海底ケーブルでデータを送受信するには、200~300msecかかります。しかし、IoTの場合、車両や設備機器、ビルのメンテナンスにかかわる情報など”その瞬間”のデータを必要とするケースがあります。だから、データセンターは利用する場所から近いところにあるほうが良いのです」(西脇氏)

また、個人の身体にまつわる情報や決済関連の情報などのいわゆる”センシティブデータ”が、海を越えた場所に保管されることに抵抗を覚える人もいる。こうした「データセンターは自国内にあってほしい」というニーズにも応えるため、マイクロソフトのデータセンターは配置されているのだという。

西脇氏はクラウドと連動するロボットの例を挙げ、「ロボットは高機能にはなっていますが、高知能にはなっていません。知能は全部クラウド上に存在しています。つまり、デバイスで処理しないことは、すべてクラウドで処理しましょうということです。そのために、われわれはクラウドへのチャレンジを続けています」と説明した。

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