米Microsoft クラウド+エンタープライズ マーケティング 担当バイスプレジデント 沼本 健氏

米Microsoftの本社でクラウド+エンタープライズ マーケティングの担当VPである沼本 健氏が来日し、記者向けのラウンドテーブルでクラウド戦略について語った。沼本氏は本社で唯一の日本人VPで、日本には「1年に1度帰るくらい」と語るほどの多忙ぶり。ラウンドテーブル冒頭には「日本は食事が本当に美味しい」と、アメリカでのちょっとした悩みもこぼしていた。

Intelligent Cloudは3つのコンポーネントの組み合わせ

マイクロソフトのクラウド戦略は、Windows as a Service(WaaS)戦略の発表以降、稼ぎ頭として特に注目を集めている。Windows OSは9インチ以下のデバイスでOS無償化となっているほか、今後のWindowsはアップデートが無料(Windows 7などから10へのアップグレード時限付き無償化とは別)など、OSが”稼げる”部門ではなくなる一方、IoT時代ですべてのデバイスがインターネットに繋がり、サーバーとのやり取りが増える中で、Azureを始めとする製品群は今後もさらなる拡大が見込める。

GoogleもAndroid OSとGoogle Cloud Platformという同様のアセットを持ち合わせているが、エンタープライズ領域における信頼感でいえば比較するまでもないだろう。そうした環境を背景に、「OSなくともクラウドがある」で「マイクロソフトはさらなる成長が見込める」という道筋を「クラウドファースト」という言葉とともに、積極的にアピールしている。

競合他社と比較して最大の強みは「ビジネスSaaSソリューション」と「クラウド インフラストラクチャー」「アドバンス ドワークロード」の3つのコンポーネントを1社で抱え込んでいる点だ。

3つのコンポーネントを抱えるからこそ、顧客に大きなメリットをもたらすと沼本氏

「SalesforceはビジネスSaaS分野で強みを持つが、クラウド インフラストラクチャーは持ち合わせていない。AWSはクラウドインフラは強いけど、包括的な技術は持っていない。私たちは裾野の広い技術ポートフォリオを持っている。三位一体で持っているから、他社とは立ち位置が違うと考えている」(沼本氏)

改めて説明する必要はないだろうが、同社のビジネスSaaSは、「Office365」をベースに、CRMの「Microsoft Dynamics」、ExcelベースのBIツール「Power BI」、昨年末に発表されたクラウドベースの開発ツール「PowerApps」などがある。これに、デバイスマネジメントとセキュリティマネジメントを組み合わせた「Enterprise Mobility Suite(EMS)」が加わる。

一方のクラウド インフラストラクチャーでは、パブリッククラウドの「Azure」と、プライベートクラウド向けのクラウド基盤「Azure Stack」、パブリッククラウドとプライベートクラウドを統合管理するための「Operations Management Suite」が用意されている。また、最後のアドバンス ドワークロードでは、ROIを向上させる「+α」の価値を提供するAzureの付加価値機能である「Azure IoT Suite」などを提供している。

これらの製品群のうちの最低1つは、Fortune500に並ぶ企業の85%が利用しているが、「それ以上に重要なポイントは、7割の企業がサービスを2つ以上利用しているということ。ビジネス部門単位などの導入もあるが、1つのサービスでメリットを感じていただいてほかのサービスも利用するという波及効果がある。深い形で利用していただいている表れ」(沼本氏)。

SaaSのOffice365からインフラ基板のAzureまで幅広いラインナップを持つ

Fortune500の85%がMicrosoft Cloudを利用

大企業にかぎらず、Azureの伸長は目覚ましい物がある。Azure顧客の月間サブスクリプション数は12万を超え、クラウド開発ツール「Visual Studio Team Services」への開発者登録数も400万人に達した。こうしたニーズに対応すべく、現在、日本の2リージョンを含む世界24拠点で稼働するAzureのデータセンターを、今後はカナダと韓国2カ所を含めて32拠点まで増やすとのことだ。

スタートアップなどにも裾野は広がりつつあるという

沼本氏はさまざまな数字を並べてクラウド事業の順調さをアピールしたが、これに加えて個別製品では、昨年から今年にかけて買収した企業の技術をベースにした新サービスについて解説。それが、「Microsoft Enterprise Mobility+Security」と「Xamarin」だ。

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