フリービット YourNet事業部 副事業部長 井口幸一氏

フリービット YourNet事業部 副事業部長 井口幸一氏

レッドハットは5月17日、フリービットが同社の社内システムの新基盤として「Red Hat OpenStack Platform」を採用したと発表した。フリービットは、インターネット接続事業者へのインフラ提供や、ユビキタスネットワーク提供などを行う通信事業者。説明会には、フリービット YourNet事業部 副事業部長 井口幸一氏が登壇した。

もともとフリービットの社内システムでは、さまざまなバージョンのWebサーバやデータベースが稼働しており、運用に苦労していたのだという。創業17年目を迎え、サーバの老朽化を契機にリニューアルを検討するにあたっては、「”標準化”と”機敏性”の実現をゴールに設定しました」(井口氏)と語る。

その選定・導入プロセスでは、まず机上選定により、2製品にまで絞りこまれた。その後、実機検証で「サポート」、「信頼性」、「互換性」を中心に総合的に評価した結果、Red Hat OpenStack Platformの導入を決めたのだという。

井口氏は、「わが社でOpenStack製品を採用するのは初めてということ、また、今回は社内システムの基盤としての採用でしたが、将来的には顧客向けサービスの基盤にも活用したいと考えていることもあり、問題発生時のサポート力と信頼性を重視しました」と説明する。

通常、こうした製品のサポートでは冗長なやり取りが発生するケースが多い。しかし、レッドハットのプロフェッショナルサービスでは、専属のエンジニアが担当し、質問内容が仕様上不可能なことであった場合でも、「そのやり方ではできないが、代わりにこうすればよい」という代替案を提示するなど「こちらの気持ちを汲んだ回答をしてくれた」(井口氏)のだという。

初めてのOpenStack製品、その導入結果は?

フリービットでは、システムの信頼性を確保するために、OpenStack製品自身が自律的にフェールオーバ・フェールバックする基盤であることが必須だと考えていた。さらに、社内システムはマルチベンダー環境なため、必然的にハードウェアを限定せずに動作することも要件となる。いずれの条件も、Red Hat OpenStack Platformは満たしていた。

OpenStack構成

実際の導入に際しては、Nova/Neutronの標準APIでインフラ開発の75%をカバーできたほか、ストレージをCinderのAPIで制御できるようになり、ハードウェアの抽象化が実現された。

「どこの製品を使っていようと、Cinderのコマンドを打てば操作できます。まさに、ハードウェアに依存しない標準化を実現できたと感じています」(井口氏)

また、Glanceを活用したテンプレートを利用することで、属人性の排除にも成功した。もちろん、最初にテンプレートを作成する際は人手が必要となるが、作成者の不在を理由にメンテナンスや再作成ができなくなることはない。

一方、機敏性に関しては、性能試験においてインスタンス46台を8分26秒で構築できたという。基盤の可用性に関する設計工数として3.3日かかっているが、井口氏は「設計と言っても、基盤上で動作する主要プロセスの設定をしただけで、フェールオーバ・フェールバックの仕組みに関する設計や作り込みなどは一切行っていません」と説明する。

「運用設計の設計にかかる時間を削減できるのは、OpenStack Platformがもたらす大きな恩恵の1つです。『導入は非常に効果があった』というのが総合的な評価ですが、われわれの要件を満たしてくれたサポート力や技術力こそ、OpenStack Platformの正体なのではないかと考えています」(井口氏)