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【インタビュー】クラウド化は、業務要件を松竹梅に分け検討すべき - ガートナー亦賀氏

[2016/03/30 08:00]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

「松竹梅」の稼働率で、クラウドを使い倒せ!

こうした状況に対し、亦賀氏が提唱するのは、モード1のシステムについて要件を「松竹梅」に分けるというアプローチだ。例えば、SLAの稼働率を「松竹梅」に分け、それぞれに合った基盤を採用することで、クラウド化もよりスムーズに考えることができるようになる。

ガートナー バイスプレジデント兼最上級アナリスト 亦賀忠明氏

松竹梅の「松」には、稼働率99.999%以上が要求されるシステムが該当する。非常に高い可用性が求められる、ミッション・クリティカルなシステムだ。停止時間で言えば、年間約5分程度のものである。

「こうしたシステムはほぼ確実にクラウドに適さないので検討から外します。そもそも本物のクラウドはベースのSLAが99.95%程度で、サービスによってはSLAが示されていないものもあります。”重い”システムをあえてクラウド化する必要はありませんし、それはリスクとなります。よく、業務システムを指して『基幹系』という言葉が使われますが、しかし、この『基幹系』という言葉には注意が必要です。実際、『基幹系』と呼ばれる業務であっても、99.999%の稼働率を求めているケースは、それほど多くありません。すなわち、このことは、基幹系と呼ばれるものであっても、実際は、竹か梅の可能性もあるということです。『基幹系』だからどうのこうのというフレーズでクラウド化の議論を続けることは早急に止めたほうがよいです」(同氏)

「竹」には稼働率99.99%、停止時間で言えば年間約1時間の高可用性システム、「梅」には稼働率99.9%で済むシステムが当てはまる。このように松竹梅に分け、低リスクで構築にコストがかからないシステムからクラウドに移行していけばよい。

「多くのクラウドが採用している99.95%というSLAは、竹と梅のちょうど中間くらいのシステムになります。ある程度の障害を許容できる梅ならば、それらをグループ化して移行すれば良いでしょう。竹ならば、クラウド上で冗長構成をとるといった工夫をすれば良い。本当に止まってはいけないものは、社内でしっかり管理すれば良いのです」(亦賀氏)

ここで注意が必要なのは、クラウドは本来、アウトソーシングのように丸投げを目的としたサービスではないということだ。原則として、ユーザーと事業者がそれぞれの責任範囲で管理することが明確化されており、特にデータについては、たとえ消失したとしても事業者に責任はなく、保証されることもない。リスクとコストを見計らい、自分の責任で利用するサービスにすぎないということだ。

TPPがクラウドに与えるインパクト

デジタルビジネスに取り組むためには、モード1/モード2でクラウドを適切に活用していくことが求められる。IoT、機械学習、マシン・ラーニング、人工知能、FinTechなど、新しいキーワードとともにビジネス・チャンスを探る動きも活発化している。クラウドの議論のように10年かけて同じ議論を続けるのではなく、クラウドを活用しながら、積極的に挑戦していくことが大切だろう。

「クラウドに関して、今後特に日本で最も注意すべきトレンドの1つとなる可能性があるのは、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の動向だ」と亦賀氏は指摘する。TPPについては、すでに著作権の延長や非親告罪化などか話題になっているのでご存じの方も多いだろう。企業システムにとって大きな懸念材料となりえるのは、TPPの域内での自由なデータ交換が可能になったときの対応だ。

米国では、さまざまな業界でセンサやモバイルから収集した大量のデータを分析する取り組みが先行している。なかには、ユーザーの十分な同意がないまま利用されるケースもある。クラウドに保存したデータが自由に交換されるようになったとき、企業はどう対処すればよいのか検討する必要が出てくる。

また、そもそもビジネスの障壁を取り除こうとするTPPにおいては、データの保存や移動についても自由な交換が求められる。今後の取り決め次第だが、例えば、業界団体や関係省庁などでクラウドのリスクを強調すれば、外資系企業から注意される可能性もある。これは、すでに起こり始めていることである。

「TPPになると、例えば関係省庁などは『クラウド利用のガイドライン』といったものに『日本にデータセンターがあること』のような項目を盛り込めなくなる可能性が高くなります。その場合、クラウドのセキュリティ・リスクについてどう考えればよいのかが大きな議論になるでしょう。サービス事業者が安心安全を訴えたとしても、最終的には自己責任で選択することになります。自己責任が風土として根付いていない日本においてはやっかいかもしれません」(亦賀氏)

現時点でTPPによる企業システムへのインパクトは未知なところが多い。だが、亦賀氏が強調するように、クラウドはビジネス論のなかでとらえるべきだという本質は変わらない。ビジネス同様、今後も俊敏さを持った対応が求められる。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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