人手不足に悩む企業にとって喫緊の課題が、業務効率の改善だ。しかし、レガシーな日本企業には効率化を阻むいくつもの”壁”がある。その解決策として現在、注目されているのが定型業務を自動化できるRPA(Robotic Process Automation)だ。

RPAとは何か。導入することで何が起きるのか。NTTコミュニケーションズが10月4日、5日に開催した年次カンファレンス「NTT Communications Forum 2018」では、NTTアドバンステクノロジ 代表取締役社長 木村丈治氏が登壇。「AI・ロボティクスによるITシステムの変革」と題し、同社が提供するRPAツール「WinActor」を紹介すると共に、業務改善のポイントについて語った。

グループ内の課題から生まれたRPAツール

NTTアドバンステクノロジはNTTグループ傘下にあり、NTTの持ち株比率100%子会社だ。NTTグループには、ほかにNTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTTデータなどが名を連ねている。

電気通信事業や移動体通信事業に加えて不動産や金融、建設など数多くの事業を展開するNTTグループ。NTTアドバンステクノロジはそのなかでも先端技術開発に従事しており、技術イノベーションを実用化することがミッションとなる。

NTTアドバンステクノロジ 代表取締役社長 木村丈治氏

NTTアドバンステクノロジが技術パートナー企業と協力して開発した技術やプロダクトは直接、もしくはNTTグループ企業を通じてリリースされる。そうした技術の1つが、RPAツールのWinActorだ。NTTアクセスサービスシステム研究所が開発した「UMS(Unified Management Support System)」という技術をベースとして商品化されたプロダクトである。

WinActor誕生の背景にあるのは、NTTアクセス網におけるオペレーションコストの増大だ。

NTTグループでは従来、システム間の連携をオペレーターの操作で実施していたため、冗長かつ単調な操作が増えており、オペレーションコストの増大が問題視されていた。この単純作業を自動化できないかというところから生まれたのが、RPAツール・WinActorというわけだ。

RPAとは、一度操作した内容をロボットが記憶し、繰り返し自動実行してくれるというもの。2010年の導入以降、NTTグループでは従来530分かかっていた作業が40分まで短縮。処理時間が削減されたことで、担当者は単純作業から解放され、より高度な業務へシフトすることができたという。

NTTグループにおける導入事例

こうした実績を踏まえ、2014年、NTTアドバンステクノロジは満を持してWinActorを市場へ投入する。

しかし、木村氏によると販売当初は苦戦が続いたという。

「2010年にNTTグループに導入したときもそうでしたが、当時は今ほど労働人口不足が話題になっていませんでした。むしろ従業員を簡単に解雇するわけにもいかないので、単純作業だろうと何か仕事をしてもらっていたほうがいい、という企業が多かったのです」