これまで比較的優先度が低いと見なされ、システム化が見送られてきた手作業のプロセスを自動化する技術として、RPA(Robotic Process Automation)への期待が高まっている。本稿では、8月31日に開催された「ガートナー ITソーシング、プロキュアメント&アセット・マネジメント サミット 2018」でガートナー バイス プレジデント キャシー・トーンボーム氏が行った講演「RPAの大規模展開を成功させるには」の内容から、局所的な導入に満足することなく、大きな成果につなげるための指針を解説する。

大規模展開を前提としたRPAの「仕組み」

現在、RPAはブロックチェーンの次に問い合わせの多いテーマなのだという。トーンボーム氏はRPAの仕組みから説明を始めた。

ガートナー バイス プレジデント キャシー・トーンボーム氏

RPAには、サーバ型とデスクトップ型の2種類がある。大規模に展開するエンタープライズ向けは前者のサーバ型であり、ボットとプロセスが分離しているのが特徴だ。ボットはデータセンターの仮想マシン上に、メタデータあるいは作業内容を記述した「スクリプト」はプロセスライブラリ内に格納されている。

エンタープライズ向けのサーバ型RPAの仕組み/出典:ガートナー(2018年8月)

この仕組みは、自動化の対象となる業務が増えてきた場合の拡張性を担保することに優れる。デジタルワーカーは仮想マシンが提供する環境で仕事をしており、自動化のトリガーとなるイベントが発生したら、中央にあるコントローラーダッシュボードがどの作業にどのボットを割り当てるかを判断し、処理を実行する。

気になるセキュリティについては、コントローラーダッシュボードは作業の実行単位でパスワードがオンデマンドで発行されるため、24時間休みなしでの活用も可能だ。

「サーバ型RPAとデスクトップ型RPAは、それぞれ『ロボット主導型』と『人間主導型』と言い換えることもできる」とトーンボーム氏は語る。単純作業の置き換えに絶大な効果を発揮するRPAだが、個人のPCに閉じている限り、どんなに管理が簡単でもデスクトップ型の業務横断型のプロセスへの適用には限界がある。

「日本ではロボット主導型と人間主導型が混在するケースが多い」とトーンボーム氏は指摘すると共に、企業全体の自動化ロードマップを作成し、それに合わせてロボット主導型と人間主導型の”使い分け”を考えてほしいと訴えた。