3月6日、東京都江東区の東京国際展示場にて、小売業界向けの展示会「リテールテックJapan」が開幕した。
デジタルトランスフォーメーションの旗印の下、この数年で特に大きな進化を遂げている小売業界。同展示会でも、AI/IoTや決済関連、オムニチャネルなど、顧客の利便性を高めるものから、店舗スタッフの業務をサポートするものまで、さまざまな技術が披露されている。
本稿では、店舗業務を支援するソリューションを中心に、同展示会の様子を簡単にご紹介する。AIによる文字/画像認識、自動運転など、最新技術がどのように現場で活かされるのか、ご確認いただきたい。
撮り貯めた63万点の商品画像が実現した棚割確認ソリューション
POSや来店客のデータ分析が進んでいる昨今、商品の”布陣”を決める棚割は、これまで以上に重要な業務になりつつある。
しかし、例え最適な棚割を決められたとしても、商品の陳列を担当者が間違えてしまえば元も子もない。データを重視するのなら、棚割どおりに陳列ができているかの確認は不可欠だ。
サイバーリンクスが提供する「棚SCAN-AI」は、この業務を支援するシステム。商品が陳列されている棚をスマートフォンやタブレットで撮影すると、AIが商品を認識し、棚割データと現実の陳列を瞬時に比較することができる。
これを実現しているのは、NTTドコモが提供するAI画像認識エンジン、そして同社が保持する63万件におよぶ商品画像データだ。
同社は以前から、食品、飲料、生活雑貨、医薬品など、5000以上のメーカーから年間2万点もの商品を受け取り、「Mdb(Multimedia Data Base)センタ」と呼ぶ施設にて商品画像を撮影。商品名称やJANコードと関連付けて、データベースに保存している。
これらのデータを使ってAIに学習させた結果、棚全体を撮影するだけで、そこに写り込む商品がどのメーカーの何という名称で、どのサイズのものなのかを判別できるようになった。
棚SCAN-AIでは、撮影した棚における各メーカーの割合を商品点数や陳列面積の軸で解析することが可能。PTS(Planogram Transporting Specification : 共通棚割情報)と連携させれば、棚割との違いを一目でわかるように表示することができるという。
画像の内容を認識可能にしたディープラーニングの上手な活用例と言えるだろう。
自律ロボット3台の連携、店員は棚の前で待つだけ
売上を最大化するためには、陳列棚における欠品を減らし、機会損失を防ぐことも大切になる。このテーマに関しては、NECや富士通らが、ロボットやセンサーを使ったソリューションを提案している。
NECのブースにおいては、米Fetch Roboticsや米Fellow Robotsの提供するロボットを使ったデモが展示された。
Fellow Robotsのロボットが店頭にて陳列棚を撮影。バックエンドのシステムへデータを通知する。
バックエンドでは、画像の内容を判別して欠品を調査。欠品があれば、バックヤードに控えるFetch Roboticsのアームロボットに通知し、商品のピックアップを開始する。アームロボットは、商品を店頭へ運ぶロボットに受け渡し、陳列棚の前で待つ店員まで自動で運ぶ。
移動するロボットはいずれも足元や上部にセンサーやカメラが搭載されており、障害物や来店客などを回避することができる。ロボットが通るスペースなどを確保する必要があるが、店舗の構造を大きく変えることなく省人化できるのは大きな利点だ。