Sansanは8月7日、同社が提供する法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」の事業戦略説明会を開催した。

社名表記、企業ロゴを変更するほか、大手企業、地方企業、東南アジア向けビジネスに力を入れていくことを発表。過去の名刺データ/アポイントメントデータを解析し、次に会うべきキーパーソンを提案するような新機能を開発していることも明かした。

旧ロゴを前に施策を発表する、Sansan 取締役 共同創業者 Sansan事業部長の富岡 圭氏

導入企業6000社、2年後に1万社に

Sansanは、「名刺を企業の資産に変える」を標榜する同社の法人向けサービス。多くのビジネスマンが個人で管理している名刺リストを組織で一括管理することで、誰と誰が会ったことがあるのかが可視化され、求めているキーパーソンへの連絡経路も見えてくる。TVCMでお馴染みの「(あの人と知り合いなら)早く言ってよ」という状況を減らせるのが特長だ。

2007年の創業以来、今年でサービス提供11年目を迎える。現在の契約社数は約6000社で、2年後に1万社という目標が明かされた。

現在の導入社数と今後の目標。2年後に1万社を目指している

なかでも注力分野として挙げたのが、大手企業、地方企業、東南アジア。特に部門間で情報共有が断絶されがちな大手企業に対してアプローチを強化しているという。

「TVCMなどの効果もあり、お問合せは多数いただいている状況。ただし、大企業は、すでに多くのソリューションが導入済みであり、こちらから説明に伺わないと検討していただくのが難しい。営業部門ではそちらを強化しています」(Sansan 取締役 共同創業者 Sansan事業部長の富岡 圭氏)

東南アジアに関しては、2015年に現地法人を設立したシンガポールを拠点に各国への展開を進めていく方針。本格的な営業を開始してから約1年で100社という状況にあるが、2年後には500社という目標を掲げている。

併せて、同社は総額42億円の資金調達を実施したことも発表。個人向け名刺管理アプリ「Eight」をアジアNo.1のビジネスプラットフォームにするという目標の下、主にEightのマーケティング活動費に当てていくという。

なお、競合サービスについては、「Sansanについて言えば、国外を見渡しても見当たらない」と言い、Eightに関しては「名刺管理用のスマートフォンアプリを提供している会社はあるが、将来的な展望を踏まえると、LinkedInのようなビジネスSNSが近しいものになる」とし、そちらの動向に注視していることを明かした。

sansanに情熱の赤ライン

説明会では、社名表記、企業ロゴを8月8日より変更することも発表。「Sansan」と先頭を大文字表記していた社名をすべて小文字に変更したうえで、以下のブランドロゴを使用する。

sansanの新ブランドロゴ

変更の理由については、次のように説明されている。

今回の社名及びロゴデザインの変更は、創業当初から掲げる「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」というミッションのもと、「世界を変える出会い」を生み出そうとする当社の想いを改めて表現し、"sansan"ブランドのさらなるプレゼンス向上を図るものです。

"san"(~さん)は、英語の"Mr."や"Ms."にあたる「人」を象徴する言葉です。sansanは、人と人、そして出会いを表します。"世界を変える出会い"を生み出したい。赤いラインには、そんな想いがこめられています。

今回の変更を機に"sansan"ブランドのさらなる認知拡大を目指し、顧客価値向上に努めて参ります。

さらにTVCMの第5弾を制作することも発表。来年3月に同社主催の年次カンファレンス「Sansan Innovation Project 2018」を開催することも明かした。

次に会うべきキーパーソンを提示するAIを開発中

Sansan デジタルトランスフォーメーション室長 芳賀 諭史氏

さらに説明会では、同社が抱える「Data Strategy & Operation Center」部門のR&Dチームにおいて、AIおよびデータサイエンティストによる人脈データベースの解析を進めていることをも紹介。誰と誰が出会い、どんなビジネスが生まれたのかなどの解析を進めており、その結果を元に将来を予測したり、次に会うべきキーパーソンを紹介したりするようなサービスを開発していくという。

また、説明会には、同社でデジタルトランスフォーメーション室長を務める芳賀 諭史氏も登壇。芳賀氏は、名刺について「顧客情報であり、個人が持つ人脈の証でもある」と説明した。

芳賀氏は、紙の名刺をデジタル化することはデジタルトランスフォーメーション第一歩としたうえで、その効果として、営業のチャンスを拡げる以外に、「社員の生産性を上げる」「組織のコミュニケーションを進化させる」という2点が挙げられると続ける。

「各従業員がどの業界、どの分野の人たちと会っているのかが可視化されると、その人の得意分野がわかる。社内の問合せ先を効率的に探せるのはもちろん、ポートフォリオを踏まえたコミュニケーションが発生しはじめる」(芳賀氏)

なお、デジタルトランスフォーメーション室では、顧客のデジタルトランスフォーメーションを推進する業務を担うが、最初の実践の場としてSansanを挙げている。今回の検証結果を元に新サービスなども提供予定で、「今年度内にリリースできれば」という意向を持っている。