"成功する"企業アプリの開発プロセス

【連載】

エンタープライズモバイル活用指南

【第7回】"成功する"企業アプリの開発プロセス

[2016/06/08 08:00]早津俊秀 ブックマーク ブックマーク

業務アプリケーション

これまで筆者は、企業が提供する従業員向けのアプリやコンシューマー向けのアプリを開発する上で、その開発プロセスに関してさまざまな工夫を行ってきました。今回は、それらについて紹介していきたいと思います。

エンタープライズモバイル開発の特徴

まず初めに、エンタープライズモバイル向けアプリの開発が業務システムの開発と異なるポイントについて見てみましょう。

対応すべきOSや画面サイズなどが多様である

モバイル向けのアプリ開発では、さまざまなOSや画面サイズに対応しなければなりません。ただし、前回も説明したように「どこまでが仕様で、どこからが不具合なのか?」を明確にしておかないと、開発もテストも大きくブレてしまいます。業務システム開発で言えば、「Internet Explorerのバージョンはどこまで対応とするか」といったことを決めておくのに近いイメージです。

仕様を設計書では表現しきれない部分がある

例えば、操作中にネットワーク環境が悪くなった場合の挙動やエラーメッセージの定義、入力エリアにキーボードが表示される際は画面が上部にスライドするのか、そのままなのか? など、細かい仕様まで仕様書や設計書にもれなく記載するのは困難です。そのため、以下のポイントを理解した上で、個別に対策を行う必要があります。

●デザインに対しての工数やテストがかかる:通常の業務システムとは違い、UIデザインに対しての要望や修正希望が非常に多く発生します

●ストアへの申請・却下といったスケジュールの不確定要素がある:ストアへの申請にかかる期間や、却下された場合のスケジュールなどを考慮する必要があります

ただし、これらの不安要素は開発プロセスによって解消できるケースもあります。次節では、その具体的な進め方について説明しましょう。

繰り返し型開発プロセスの採用

上述したようなアプリ開発における不安要素をカバーするのに有効なのが、繰り返し型の開発プロセスです。筆者らも、ほとんどのプロジェクトで採用しています。「アジャイル開発」などと表現しても良いのかもしれませんが、言葉の定義についてはここでは触れません。とりあえず「繰り返し型」としておきます。具体的には、次のようなプロセスで進めています。

2週間を1つの開発単位とする

まず、開発するすべての機能を2週間の単位に割り振って計画を立てます。例えば、「『会員登録・変更機能』と『購買履歴表示機能』、『メモ共有機能』の3つの機能を最初の2週間で開発する」「『メッセージ送信・確認機能』と『SNS連携機能』を次の2週間で開発する」といった具合です。

次に、サーバ側の開発チームとクライアント(画面)側の開発チームの2週間を1回分スライドさせます。つまり、常にサーバ側の計画を画面側の2週間前に実行するわけです。

2週間を1つの開発単位とし、サーバ側の計画を1回分前にスライドさせる

これにより、クライアント側の開発を行う時にはすでに必要なサーバ側のAPIが完成していることになるので、クライアント側はスタブやダミーなどを使う必要がありません。そして、クライアント側の開発が終わった時点で機能は完成した状態になります。

進捗会議を確認の場に変える

2週間に1回、進捗会議を行います。従来型の進捗会議のように「現時点で60%進捗しており、スケジュールどおりです」といった無意味な(?)報告は必要ありません。なぜなら、2週間終わった時点で予定の機能は100%完成しており、実際に動くものを見ながら確認することができるからです。「何%進捗」などという、中途半端かつ机上の報告は意味を持ちません。「できているか、何らかの理由でできていないか」だけを判断すればよいのです。例えば、iOSとAndroidの両OSに対応したアプリを開発している場合は、プロジェクターを2台用意し、1台はiOS、もう1台はAndroidの画面をスクリーンに移し、機能を動かしながら同時に確認を行っていきます。これがユーザーレビューとなります。

ユーザーレビューでは、不具合が発見されたり、細かい仕様の違いが明確になったりして仕様変更依頼が生じることがあります。対応には新たな工数が発生するので、「次の2週間でリカバリするのか?」「最後に2週間追加して、そこで対応するのか? その場合、コストはどうするのか?」といったことを話し合って決めていきます。

したがって、このユーザーレビューの場には、実際に手を動かしている開発者やデザイナーも出席することが望ましいです。その場で議論し、迅速に決断していくことがポイントになります。

* * *

筆者は、さまざまなプロジェクトに取り組んできた経験から、現時点では今回紹介したような繰り返し型の開発プロセスが最も良さそうだという結論に至っています。ポイントを一言で言うと、「可視化」です。進捗会議を確認の場にすることで、ブラックボックスになりがちなITプロジェクトの進め方が可視化され、成果物も2週に1度は可視化されることになります。また、この手法では、2週間で完了するプロジェクトを何度も繰り返すようなものなので、プロジェクト後半にリスクが高まるということはありません。

次回は、エンタープライズモバイルの開発体制について説明したいと思います。

早津 俊秀
企業のUX・モバイル活用の専門企業であるNCデザイン&コンサルティング株式会社を2011年に起業。 ITアーキテクチャの専門家とビジネススクールや国立大学法人等、非IT分野の講師経験をミックスして、ビジネス戦略からITによる実現までをトータルに支援できることを強みとする。

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https://news.mynavi.jp/itsearch/2016/06/07/EM07_001.jpg
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