IDC Japanは9月5日、年次イベント「IDC AI and IoT Vision Japan 2018」を東京コンファレンスセンター・品川にて開催した。

「デジタルネイティブ企業のデータエコシステムを考える」をテーマに掲げた同イベントで、「IoT競争の焦点は『データエコシステム/Data as a Service』になる~データマネタイズに関わるエコシステムの現状と展望」と題する講演を行ったのは、IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏だ。

世界中で生成される膨大なデータの活用を促進し、企業のビジネス創出をサポートする「データエコシステム」への関心の高まりを受け、講演では、データエコシステムを通じたデジタルトランスフォーメーション(DX)の成功に向けて、企業の取り組むべき方向性について提言が行われた。

IoT時代の課題をいかに解決するか?

IDC Japanが行った調査「2017年国内IoT市場 ユーザー利用動向分析」によると、IoTを利用する企業の割合は年々増加傾向にあり、Webアンケートに対して回答があった3,941社のうち、IoT利用企業は235社、利用率は6%と前年より0.6ポイント上昇している。

業界別に見ると、特に多いのが製造/資源の企業であり、続いて流通/サービス、公共/インフラが並ぶ。「今のところは社内用途のみでIoTを活用している企業が多いのですが、今後はDX用途も増えていくでしょう」と鳥巣氏は予測する。”IoT競争”は既に始まっているのだ。

IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏

また、IoT担当者および企業リーダーを対象としたアンケートの結果では、IoT担当者が考える最大の課題として「IoT活用を主導する人材の不足」が挙げられたほか、予算準備が不十分であることや収益性が見通せないことなどが挙がった。一方で、企業リーダーが考えるDXの阻害要因もやはり人材不足や投資対効果などとなっている。

「これらの課題のほとんどは、明確なマネタイズモデルが確立できれば解決可能だ」と鳥巣氏は強調する。

2025年には820億台ものIoTデバイスがネットにつながると予測されており、IoTデータと企業組織活動が生成するデータ、それに個人消費者の活動から生成される非IoTデータなどが溢れるようになる。

「海外の有力プレイヤーは、マネタイズにつながるデータを誰よりも多く持っています。IoTに関わるプレイヤーは163兆GBのデータをターゲットにデータエコシステムの形成を早急に進めるべきだと言えるでしょう。その際にはIoTデータだけでは不十分であり、非IoTデータを上手く組み合わせて考えないといけません。そうして新たなビジネスモデルを創出するのが、データエコシステムなのです」(鳥巣氏)