ヤフーが運営するECサイト「Yahoo! ショッピング」は、データドリブンでユーザー満足度の向上に取り組んでいる。満足度を上げるポイントは、データを活用した1 on 1マーケティングによるパーソナライズだ。しかし、それは口で言うほど簡単なことではない。

Yahoo! ショッピングではどのようにデータの利活用を行っているのか。6月14日、15日の2日間にわたって開催された「ガートナー データ&アナリティクス サミット 2018」では、ヤフーのショッピングカンパニー プロダクション2本部 データCRM技術部 部長兼データディレクター兼CDO-boardを務める宇治野達季氏が登壇。Yahoo! ショッピングのデータプラットフォーム整備から、データ活用のエコシステム構築まで、同社が押し進めた改革の一部始終を語った。

EDWを活用したデータフローの刷新

2017年における取扱高は前年四半期比で28%増、と急成長を遂げているYahoo! ショッピング。同サイトの役割の1つは、Yahoo! JAPANの大きな収益源であるプレミアム会員への登録にユーザーを誘導することであり、Yahoo!JAPANの全体戦略においても重要な位置づけを担う。

成長の礎となるのが、宇治野氏も所属するデータCRM部の存在だ。同部の役割はYahoo! ショッピングのビッグデータと他サービスのマルチビッグデータをかけ合わせ、統合的に分析し、クーポンやメール、ポイントといった各チャネルと連動させてユーザー満足度を向上させること。そのために目指すのはユーザーとの1 on 1マーケティングだ。

膨大なデータを処理するためのプラットフォームとしては、Hadoop、Teradata、S3互換ストレージなどを使用する。これは日本でもトップクラスの巨大プラットフォームなのだという。

なかでもショッピングのデータ分析など、コアとなるプラットフォームに位置づけられるのがエンタープライズデータウェアハウス(EDW)だ。もっとも、宇治野氏が入社する2015年以前はEDWはまだ導入されていなかった。

「2015年以前はレポートとMartの関係が1対1になっていました。入社してそれを知り愕然としました。バグが発生すると修正範囲が甚大ですし、煩雑なデータフローになるので拡張性が低く、これではビジネススピードについていけないと思いました」

ヤフーのショッピングカンパニー プロダクション2本部 データCRM技術部 部長兼データディレクター兼CDO-boardを務める宇治野達季氏

そこで宇治野氏はEDWを導入し、データフローの刷新に取り組んだ。

「データドリブンの世界をつくるために、3次元であることを意識して本当に必要なディメンションを大量につけていきました。例えば前回の注文からどれくらい経ってから新しい注文が入ったのか、新規顧客なのか既存顧客なのか、カートに入れてからどれくらい経つのか。こうしたデータは機械学習やディープラーニングにも使えます。ディメンションは、多くつけるほどメリットがあるのです」

その結果、データ分析のやり方はどう変わったのか。

KPIダッシュボードでは全社員がコンバージョンを確認することができる。グラフは青や黄色の色別で表示され、良しあしがひと目でわかる仕組みだ。こうしたわかりやすさが、経営層やマネジメント層にとっては重要なのだと言う。

さらにデータを活用するために必要となるのがアドホックレポートである。見たい軸を選べば即座にレポートが作成されるため、さまざまな観点からデータを分析することが可能だ。複雑な条件を組み合わせ、コホート分析などを行うこともある程度はできるという。「ビジネス課題は日々増え続けるため、セルフで分析できる環境を提供することが大事」だと宇治野氏は強調する。

また、「毎回軸を選択するのは面倒」と言うビジネスサイドのユーザーに向けて、定形レポートとして保存できるようにもしている。毎日決まった軸でデータをトラッキングすることができ、ビジネスのスピードにマッチした分析環境が構築された。