IoTによってデータを収集し、AIによって分析することでさまざまな課題を解決していこうという流れが生まれている。なかでも注目されているのが「スマートシティ」構想と、「スポーツアナリティクス」である。

IoTとAIが世の中をどう変えるのか。5月18日に都内にて開催された「SAS Forum Japan 2018」では、SAS Institute Japan ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT & Advanced Analyticsグループ マネージャの高田俊介氏から、すでに始まっている世界各国の取り組みが紹介された。

スマートシティの”フレームワーク”

スマートシティとは、テクノロジーによってさらなる発展を目指す先進都市のことである。例えば、ITなどの先端技術を駆使してインフラやエネルギー管理を行うのもその活動の1つだ。

スマートシティ化で影響を受ける範囲は非常に広いと考えられており、公共事業やライフライン、警察、消防、公園、行政サービス、交通、学校など都市を構成するあらゆる要素がスマートシティ化の対象となる。

こうした要素にテクノロジーを取り入れることで、より良い行政サービスを提供したり、治安の向上や犯罪現象、経済成長などにつなげていったりすることがスマートシティ構想の基本的な考え方なのだ。

では、具体的にどのようにテクノロジーを活用していくのか。

高田氏によると、まず必要なのは大量の「データ」である。町を走る自動車はすでにネットワークに接続されており(コネクテッドカー)、防犯カメラなどにもさまざまなデータが蓄積されている。また、その都市に住む人たちのSNSの書き込みも立派なデータだと言える。

これらのデータをIoT技術を駆使して収集し、分析することでスマートシティを実現していくわけだ。

SAS Institute Japan ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT & Advanced Analyticsグループ マネージャ 高田俊介氏

また、重要なのはそうした分析結果をしっかり「マネタイズにつなげていくこと」と、流出しないよう「セキュリティで守る」ことだという。

これが高田氏が考えるスマートシティの”フレームワーク”である。

ただし、現在の日本でこのスマートシティ構想を推進しようとしても、なかなかうまくいかない現実がある。

その理由は「すでに日本はインフラが整っているから」(高田氏)だ。逆説的な話ではあるが、日本はインフラが整備されているがゆえに、スマートシティ化のような大きな変革が難しいのだ。

米国で進む「スマートウォーター」

ではここで、スマートシティ構想の例を1つ見ていこう。

高田氏が挙げるのは「スマートウォーター」、すなわち都市における水処理の課題をテクノロジーで解決するプランである。

都市で使用される水は通常、貯水池のものを浄水した上で町の至るところに届けられる。そして下水となった水を処理し、再利用するという流れである。

こうしたプロセスのなかで、水質の保ち方やポンプなどのコストを抑える方法などが課題として挙がってくる。これにテクノロジーで対応しようというのがスマートウォーターだ。

都市における水処理の課題

スマートウォーターでは浄水処理施設や下水処理施設から送られてくる需給バランスや水質情報、そして配水先のセンサーやメーターで計測した水漏れなどのデータを分析。これにより、上下水の保全や、より効率的な計画・運用が可能になるという。

「米国では、すでにノースカロライナ州で似た例に取り組んでいる」と高田氏は説明する。

「ノースカロライナ州では水道管やスプリンクラーヘッドから水漏れし、水道代が大変なことになっていました。そこで『SAS Analytics』を使ってデータを収集・監視することで、水漏れの早期発見や各家庭への水の使いすぎ指導が実現し、水のロスが減ったのです。さらにデータが取れるようになったことで月次検針が廃止され、結果的に1,000万ドル以上の運用コストの削減につながりました」

また、ウィスコンシン州ミルウォーキーでは排水が源泉に与える影響をモニタリングしており、汚染物質の測定に機械学習を用いている。機械学習を導入することにより、これまで人手では難しかったリアルタイムでの汚染物質予測が可能になったという。