自社ビジネスの方向性を「技術フォーカス」から「ビジネスフォーカス」にトランスフォームしているテラデータ。「フルマネージドサービスでビジネス成果の獲得にフォーカス」というスローガンを掲げ、顧客の環境変化に対応したビッグデータ分析とコンサルティングサービスに注力する。

さらに2018年4月にはセンサデータ分析を強化する「4D Analytics(4次元分析)」も発表した。デジタルトランスフォーメーションによる「データ駆動型ビジネス」への移行が叫ばれるなか、テラデータは顧客にどのような価値を提供していくのか。

5月23日に開催された「Teradata Universe Tokyo 2018」に合わせて来日した、米テラデータでCOO(最高執行責任者)を務めるオリバー・ラッゼスバーガー氏に話を聞いた。

米テラデータでCOO(最高執行責任者)を務めるオリバー・ラッゼスバーガー氏

テラデータが挑む「変革」

――「技術フォーカスからビジネスフォーカスへ」という転換について、顧客はどのような反応でしょうか。

ラッゼスバーガー氏:過去1年を振り返ると、(分析データベースをどこでも利用できる)「Teradata Everywhere」は多くの企業で採用されています。その理由は、「どこにデプロイするのか」「どのようなライセンスモデルを採用し、どの環境でデータ分析をするか」といった、顧客視点での選択肢があることです。

実際、サブスクリプションライセンスを選択するお客様は増加しています。2016年におけるサブスクリプションライセンスの購入比率は、全体の5%でした。しかし、2017年度には同比率が33%に急増しています。直近の2018年第1四半期では、同比率は65%に達しています。

また、2017年に発表した、Teradata Everywhereを包含する形式で提供する「Teradata Analytics Platform」では、ビジネスの成果を生み出すさまざまな機能を”as a service”として追加していく計画です。今回、AWS東京リージョンで提供開始すると発表した「IntelliCloud」は、(そうした計画を)具現化した1つです。つまり、顧客の環境やニーズの変化に合わせ、Teradata Analytics Platformも(機能追加という意味で)変化するのです。

――社内組織も変化をしているのでしょうか。

ラッゼスバーガー氏:はい。会社組織のトランスフォーメーションは本格的に進んでいます。例えば過去6カ月で、CRO(最高売上責任者)、CFO(最高財務責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)が新たに就任しました。グローバルレベルでは、クラウドやサブスクリプションモデルのビジネスに精通した優秀な人材を積極的に採用しています。2017年9月に日本法人の社長に就任した高橋倫二さんもその一人です(関連記事『日本テラデータ、新社長の高橋氏が2018年の経営方針を説明』)。ちなみに、われわれの研究開発担当エンジニアは、その55%が過去2年以内に採用した人材です。

さらに、会社内の雰囲気や仕事の進め方、社内文化も大きく変わっています。カリフォルニアにある本社も、家具を変えてモダン&オープンな雰囲気に一新しました。

こうした変化は1年前では考えられなかったことで、全世界の社員が会社のトランスフォーメーションに懐疑的でした。30年にわたり技術開発を中心としていた会社ですから、無理もありません。しかし、今は新たなリーダーの戦略の下、トランスフォーメーションのなかで新たなビジネスモデルを実行していることを実感していると思います。

テラデータが示すフルマネージドサービス/図版提供:テラデータ

――「as a service」モデルでテラデータが利用できることが、顧客にさまざまなメリットをもたらすことは理解しました。反面、Teradata Analytics Platformに移行するには、コストなどの課題もあるのではないでしょうか。

ラッゼスバーガー氏:確かに分析プラットフォームを一気に変更するのは難しいでしょう。しかし、今は「現状維持をすること」が「リスク」になる時代です。例えば、米国の大手銀行のシステムは、不正行為を引き起こす800のリスクがあるという話を聞きました。同行は、不正検知ツールの運用維持に年間10億ドルのコストをかけているそうです。

大規模企業では、既存環境の運用自体がコスト超過であったり、ビジネスの変化や新たな脅威に対応できなかったりといった課題を抱えています。もちろん、一夜にして(全ての分析環境を)Teradata Analytics Platformに移行することはできませんが、多くの企業は「トランスフォーメーションするしかない」という危機感を持っています。

――日本でもデジタルトランスフォーメーションの必要性が指摘されています。その場合、いちばんのネックになるのが、経営層に対するROI(投資収益率)の証明です。

ラッゼスバーガー氏:ROIはいくつかの側面で図ることができます。例えばシステムの運用管理コストで多くを占めているのは人件費です。先の銀行で考えれば、800のリスクを(システムをトランスフォーメーションして)10に削減できれば、人件費も削減できます。さらに、リスクを放置して不正アクセスによる情報流出などを引き起こせば、ビジネスの根幹を揺るがしかねない損失を出してしまいます。

企業にとって本当のリスクは、新機能の投入や新アルゴリズムの採用に時間がかかる俊敏性のないシステムを使い続け、ビジネス変化に対応できないことでしょう。多くの企業は、トランスフォーメーションの重要性に気付き始めています。