「マンションを購入したいけれど、予算をどう決めればいいのだろう」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか?上手く返済計画を立てなければ、将来的にギリギリの生活を送る必要が出てくるかもしれません。不動産の購入は無理の生じるローン計画を立てないように気をつける必要があります。
一般的にマンションや戸建ての購入は年収の5倍以内にするのがよいといわれていますが、人によって収入の資産の状況が違うため、さまざまなリスクを考慮しつつ慎重に計画しなければいけません。
そこで本記事では、初めてマンションの購入を検討している方向けに、具体的な予算の決め方を紹介するとともに、実際の予算シミュレーションの方法を紹介します。
※株式会社リンクアンドパートナーズによる調査。アンケートモニター提供元:GMOリサーチ株式会社
マンションの予算や価格の最新データ
まず、多くの人がマンションの購入にあたってどの程度の予算を考えているのかを知る必要があります。
国土交通省の提供する最新データからさっそくみていきましょう。
年収倍率5.6倍で分譲マンションを購入
国土交通省ホームページの報道資料によると、令和元年の調査において、分譲マンションの購入価格は新築・中古ともに平成27年度の調査時点と比較して約10~20%上昇しており、住宅の立地環境の良さが購入の決め手となっているようです。
マンションの購入予算をみると、分譲マンションでは年収倍率で約5.6倍、中古マンションならば約4倍となっており、前回の調査よりも増加傾向となっています。
マンション価格の推移
次に日本のマンション価格推移をみると、1970年代から不動産バブルが起こった1990年代序盤まで価格が右肩上がりになり、バブルの崩壊によって価格が急落、その後は緩やかに下降しています。
そして2005年あたりをさかいに不動産ミニバブルと呼ばれる価格上昇が発生し、2008年のリーマンショックを経て価格が再び下降気味になっていきました。しかし、2018年からは金融緩和やオリンピック開催決定の影響でマンション価格が上昇傾向となり現在に至っています。
今後どうなるかは未知数ですが、いま現在マンションの購入を検討している方は、さらに価格が上昇する前に購入するという判断も必要かもしれません。
マンションの予算を決める4つのポイント
では、マンションの購入予算を決めるための具体的なポイントをいくつか紹介します。
- ライフプランから返済完了までの収入と支出を把握する
- マンションの購入にかかる諸費用も確認する
- マンションの購入後の維持費を忘れない
- 何歳までにローンを完済したいのか明確にする
以下でそれぞれ解説していきます。
ライフプランから返済完了までの収入と支出を把握する
マンションの購入予算を決めるにあたっては、まず次の流れで考えをまとめていきましょう。
- 自分のライフプランを明確にする
- 返済完了までの収入を計算する
- 返済完了までの支出を把握する
- 返済期間を決定する
毎月の生活費や子供の養育費、老後の貯金などを考えると、収入のすべてをローンの返済に充てることはできません。世帯収入や働く年数、人によっては退職金なども含め、収入と支出をしっかりと把握しておきましょう。
また、購入の時点で用意できる頭金の額によって月々のローンの支払額が変わってきます。マンション購入にかかる諸費用も含めて、購入価格全体のうち20~30%程度の頭金を用意するのが理想とされています。
マンションの購入にかかる諸費用も確認する
マンションを購入するにはマンション自体の代金に加えて、不動産会社に支払う仲介手数料や登記費用など、さまざまな費用がかかります。
具体的には、次の費用を考える必要があります。
項目 | 内容 | 大まかな費用 |
印紙税(印紙代) | 売買契約書に貼付することで納税 | 不動産の購入費用によって変わる。5,000万円以下の物件で1~2万円程度 |
仲介手数料 | 不動産会社に売却を依頼する際にかかる費用 | 仲介手数料=売却価格の3%+6万円+消費税(※売買価格が400万円超の場合) |
登記費用 | 不動産の移転登記にかかる費用 | ・3~6万円程度(所有権移転登記) ・2~7万円(抵当権設定登記) |
各種保険料 | 火災保険や地震保険に加入する際の支払い | 年2~3万円程度 |
固定資産税等精算金 | 不動産の売主が負担した未経過固定資産税の精算金 | 不動産の評価額や売主との負担按分によって変わる |
不動産取得税 | 不動産の買主が都道府県に支払う税金 | 固定資産税評価額×3% |
住宅ローンの借り入れ費用 | 事務手数料や保証料など | 借り入れる金融機関によって変わるが、およそ物件価格の6~10%程度とされる |
上記以外にも、引っ越し費用や新居で使う家電・家具などの購入費用も考えておかなくてはいけません。項目ごとに大体いくらぐらいかかるのかを書き出して、自分なりに整理することをおすすめします。
なお、固定資産税等精算金とは、不動産の買主が売主に支払う固定資産税の精算金です。
固定資産税は毎年1月1日時点の不動産所有者に課されますが、売買によって所有権が移転すると売主はすでに所有していない物件の税金を支払うことになるため、引き渡し後の負担分を買主が精算という形式で支払います。
売主が支払っている未経過固定資産税の取り扱い方を解説した記事はこちら

マンション購入後の維持費を忘れない
物件の購入代金と諸費用については、購入前にしっかりとシミュレーションする人が多いですが、マンション購入後の維持費についても計算に入れておく必要があります。購入後の維持費として、主に次の3つを考慮しなければなりません。
維持費用一覧 | 費用内容と相場 |
管理費 | マンションを良好な環境で維持するための費用。 主に管理組合や管理会社に支払う。15,000~20,000円程度が相場。 |
修繕積立金 | 将来の物件修繕に備えて一定額を積み立てておくもの。 5,000~8,000円程度が相場。 |
固定資産税 | 毎年、土地や建物などの不動産にかかる税金。 都内マンションの場合、約10~15万円ぐらいが相場。 |
購入した年の固定資産税については売主が負担するため、購入の際に精算金を支払うことになりますが、翌年以降は買主が納付することになります。毎年4月~6月ぐらいに納付書が送られてくるので、指示にしたがって期日までに納付しましょう。
何歳までにローンを完済したいのか明確にする
マンション購入前にできるだけ明確なローン返済計画を立てる必要があります。具体的に何歳までに完済したいのかを明らかにしましょう。さまざまな金融機関が住宅ローンを提供していますが、もっとも最長のものは35年が多いです。
住宅ローンは完済時の年齢に制限があるケースがほとんどで、高齢になればなるほど利用できる返済期間が短くなってしまうので注意してください。
たとえばローン借入時に30歳だった場合、最長返済期間が35年のローンを利用できることが多いです。一方、借入時に60代の人の場合、完成時の年齢が80歳未満と決められている商品が多いため、最長でも20年未満のローンしか組めないことになります。自分の年齢や収入状況を鑑みて、確実に返済できる住宅ローンを利用しましょう。
マンションの予算をシミュレーション
マンション購入費用を計画する際に考えておくことができるヒントをご紹介していきましたが、具体的な試算方法を知っておくことも大切です。続いて、マンション購入予算をシミュレーションする際に見ておきたい目安を紹介します。
年収別の借入額の目安
まず、自分の年収をもとにローン借入額の目安をチェックしましょう。年収(税込み)と借入額の目安として、次の表を参考にしてください。
年収(税込み) | ローン借入額の目安 |
300万円 | 2,529万円 |
400万円 | 3,372万円 |
500万円 | 4,215万円 |
600万円 | 5,059万円 |
700万円 | 5,902万円 |
800万円 | 6,745万円 |
上の表は年間のローン返済額が年収に占める割合(返済比率)を30%、住宅ローンの金利を1.3%として、最長の35年での返済を仮定して計算したシミュレーションです。元利は均等でボーナス時の加算なしで計算しています。自分の年収に照らし合わせてみましょう。
毎月の返済額別の借入額の目安
毎月の返済額を前提に借入額を決める方法もあります。具体的に毎月返済できる額をもとに計算するので、より確実な返済シミュレーションが可能です。
毎月の返済額 | ローン借入額の目安 |
5万円 | 1,686万円 |
6万円 | 2,023万円 |
7万円 | 2,361万円 |
8万円 | 2,698万円 |
9万円 | 3,035万円 |
10万円 | 3,372万円 |
上記同様に住宅ローンの金利を1.3%として、最長の35年での返済を仮定して計算しています。毎月の返済可能額から購入するマンションを決める人は参考にしてください。
頭金の有無による返済額の違い
住宅ローンを利用する際には頭金を用意するのが一般的ですが、実際の借入額は住宅の売買価格から頭金を引いた金額となります。頭金なしでローンの利用できる場合もありますが、できるだけ頭金を支払っておくことで借入額を安く抑えることが可能です。
たとえば4,000万円の住宅を購入して35年のローンを利用する場合、頭金を800万円用意できれば借入額は3,200万円となります。金利が1%とすると、毎月の支払額は約9万円です。一方頭金なしの場合には4,000万円の借入となり、毎月の支払額は11万円程度と月々2万円ほどの差が出ることになります。利息額も減るため、できるだけ頭金を用意することをおすすめします。
予算オーバーのマンションを購入するリスク
マンション購入するうえで年収や資産状況に合った予算を設定することが基本ですが、人によっては自分のキャパシティをオーバーした価格のマンションを購入してしまうことがあります。予算オーバーのマンションを購入してしまうと、将来的に住宅ローンの支払いが滞ってしまうことがあり、さまざまな問題が起こってしまうので注意しましょう。
具体的には次のようなリスクがあります。
- ローンが払えないと最後は強制立ち退きになる
- 親族や友人の人間関係が崩壊する
- 日々の生活でストレスを感じる
ローンが払えないと最後は強制立ち退きになる
住宅ローンが支払えない場合、まず債権者である金融機関から督促状や催告書が届きます。そのまま3ヶ月以上の滞納が続くと個人信用情報機関に金融事故情報が記録され、ローンの一括支払いを請求されることになるので、分割支払いが可能なうちに支払うことが重要です。
それでも支払えない場合は物件が競売にかけられることになります。競売での入札が開始されるまでは任意売却の機会も残されていますが、入札が開始されると競売での売却が決定するので、強制的に自宅から立ち退かなければいけなくなります。
競売になると市場の6~7割程度の価格でしか売却できないうえ、債務者の都合とは無関係に立ち退きせざるを得なくなってしまうため、最悪でも任意売却が可能なうちに手を打っておくことが大事です。
任意売却について詳しく解説した記事もおすすめ

親族や友人の人間関係が崩壊する
物件の競売によっても債務が残っている場合、支払えなかった分の請求が保証人である親族や友人にいく可能性があり、人間関係が悪くなってしまうリスクがあります。債務者の残りの資産はもちろん、保証人の資産すら返済に充てられてしまうため、これまで培ってきたきずなが破綻してしまうかもしれません。
日々の生活でストレスを感じる
債務の支払いによって生活のランクダウンをせざるを得なくなる人は少なくありません。特に子供がいる場合、習い事などの面で教育に支障が出るケースもあるでしょう。生活苦から離婚の決断をする人もおり、日常生活で大きなストレスを抱えることになります。
ローンの支払いが遅れれば遅れるほど状況が辛くなるので、マンションを購入する際は確実に返済できるローンを組むようにしましょう。楽観的な予測をもとにローンを組むのはリスクが高いです。
マンションの予算が足りないときの対策
予算オーバーのマンションはリスクが高いため、問題なくローンを返済できる範囲でマンションを購入する必要がありますが、それでは予算が足りないという人もいるでしょう。購入予算が不足している場合は次の対策が考えられます。
- 頭金を増やしてローンを組む
- 国や自治体の減税や補助金を使う
- 共有名義で住宅ローンを組む
それぞれ簡単に解説します。
頭金を増やしてローンを組む
上述のように、支払いの頭金を増やすことによって支払う金利が減るため、借入可能額が増えるケースがあります。トータルで確保できる予算が増えることで、よりグレードの高いマンションを購入できる可能性が高くなります。
頭金の額を増やすことで月々のローン返済額を減らせるので、予算が足りない人はしばらく貯金するなどして、頭金の増額を検討しましょう。
国や自治体の減税や補助金を使う
国や地方自治体の減税や補助金を利用できる場合があるので、積極的に検討してください。現在利用できる制度として、住宅ローン減税とすまい給付金があります。
住宅ローン減税
住宅ローン減税は新築・中古にかかわらず、10年以上の住宅ローンを組むことでローン残高の1%を控除できる制度です。適用を受けるには次の条件を満たしている必要があります。
- 所得金額が3,000万円以下
- 物件の床面積が50㎡以上
- ローンの返済期間が10年以上
他にも細かい条件がいくつかありますが、住宅ローンを利用する人の多くが当てはまるので積極的に利用しましょう。詳しくは国土交通省特設ページを確認してください。
すまい給付金
すまい給付金は、消費税の引き上げによる住宅購入者の負担の軽減のために新設された制度で、最大で30万円の給付が受けられます。具体的な給付額は住宅取得者の収入によって、次のように決定されます。
年収 | 給付額 |
450万円以下 | 50万円 |
450万円超525万円以下 | 40万円 |
525円超600万円以下 | 30万円 |
600万円超675万円以下 | 20万円 |
675万円超775万円 | 10万円 |
給付を受けるためには国土交通省専用ページから申請書をダウンロードするか、すまい給付金の専用窓口から申請してください。
共有名義で住宅ローンを組む
共有名義でマンションを購入することで、それぞれの収入に対して住宅ローン控除が受けられます。単独名義より減税額が多くなるので、夫婦名義でマンションを購入するのも税金の観点からいえば有効といえます。
たとえば、夫婦が各々で住宅ローンを組むか、一方がローンの連帯債務者となることで両者ともに控除を受けることが可能です。ただし、離婚した場合は物件の売却が難しくなるデメリットもあるので注意してください。
まとめ
マンションの購入予算の決め方のポイントとシミュレーション方法、予算が足りない場合の対策について解説しました。
住宅ローンを組む場合、まず自分のライフプランから返済完了までの収入・支出をしっかりと把握することが重要です。また、実際の購入にかかる費用や購入後の維持費についても考慮する必要があります。さまざまな観点から費用を検討し、問題なく支払える範囲で予算を組むようにしてください。
もし住宅ローンの返済が滞ってしまうと、最悪の場合は強制的に立ち退きを迫られる可能性が出てくるので、余裕をもって返済できる範囲でマンションを購入するようにしましょう。本記事を参考にして、自分に合った無理のない購入計画を立て、夢のマイホーム生活をスタートさせましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
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