不動産を売却するとその収入額に応じて税金が課せられます。今住んでいる家を売って新しい家に移り住むようなときには、新しい家を購入する資金を用意する必要があり、売却にかかる費用が特に気になるのではないでしょうか?できる限り税金などの出費を減らせたらうれしいですよね。
家を売って新しい家を購入するような場合、買い替え特例という制度を利用することで節税が実現することがあります。買い替え特例という言葉は聞いたことがあっても、実際にどのような仕組みなのか、その条件など詳しくわからないという方も多いでしょう。
本記事では、買い替え特例についてわかりやすく、基礎から丁寧に解説しています。メリットやデメリットを正しく理解して、他の制度とも比較しながら利用を検討しましょう。
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買い替え特例の基本をわかりやすく解説
家を買い替える際に利用できる買い替え特例、特定居住用財産の買い替え特例についてその基礎を詳しく解説します。どういった特例なのか、どういう条件下で利用できるのかなど、基本的な情報をまとめました。
税金の支払いを先送りする制度
通常の不動産売却では、売却額からその不動産の取得費利益が出た場合にその額に応じて譲渡所得税を納めなければなりません。その額は数百万円にもなり、大きな負担になります。買い替え特例を利用すると、このような譲渡所得税の支払いを次の売却に先延ばしにすることができます。
譲渡所得税の計算方法は以下の通りです。
このときの税率は、不動産の所有期間によって異なるため注意しましょう。所有期間は、売却する年の1月1日時点でのものとするとされています。
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
5年以下の短期所有 | 30% | 9% |
5年を超える長期所有 | 15% | 5% |
参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
買い替え特例の適用条件
買い替え特例制度が利用できるかどうかは、売却する家と住み替える家にそれぞれ条件が課せられます。自分の家と照らし合わせて利用できるかどうか検討しましょう。
売却する家の条件
- 自分が住んでいる家屋であること
- 済まなくなった日から3年以内に売却すること
- 他の特例制度を受けていないこと
- 日本国内にあること
- 売却代金が1億円以下であること
- 居住期間が10年以上であること
- 建物の床面積が50㎡以上、土地が500㎡以下であること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
買い替える家の条件
- 建物の床面積が50㎡以上、土地が500㎡以下であること
- 売却した都市の前年から翌年までの3年間で買い替えること
- 日本国内にあること
- 取得日の25年以内に建築されたもの、新耐震基準をみたすものであること
買い替え特例を使った不動産売却の例
不動産売却で買い替え特例を使った場合の具体的な例を見てみましょう。例えば下記のようなマイホームから新しいマイホームに引っ越すとします。以下は説明を簡潔にするため、譲渡費用や減価償却を省いたものです。
家を購入した時の金額 | 売却金額 | 住み替え先の金額 |
1,000万円 | 5,000万円 | 7,000万円 |
このような場合、通常のように売却すると、売却金額の5,000万円から取得費の1,000万円を差し引いた4,000万円が譲渡所得となり、ここに税率をかけて税額を算出します。
対して買い替え特例制度を利用した場合には、売却した時の譲渡益はその年の課税対象にはならず、新しく買った住宅を将来譲渡したときまでその課税を繰り延べすることができます。つまり、次の売却の際には、その時の売却益に加えて4,000万円を含めた金額が課税対象とされます。このとき、繰り延べした税金を更に繰り延べすることはできません。
買い替え特例制度の流れを改めてまとめます。
- マイホーム(A)を売却してマイホーム(B)に移り住む
- Aの売却で得た売却益が繰り延べされる
- Bを売却する
- Bの売却で得た売却益とAの売却益を合わせて課税される
買い替え特例のメリットデメリットとは
続いて買い替え特例を利用することで得られるメリットと、注意しておきたいデメリットについて見ていきましょう。
買い替え特例のメリット
買い替え特例の一番のメリットは、買い替えた家を売却しない限り課税されないという点です。新しい家を売却しないで住み続けるつもりでいるなら非常にありがたい制度だと言えます。
また、国民健康保険に加入している場合には、マイホームの収入が計算に含まれるため保険料が上がってしまうことがありますが、買い替え特例を利用するとそのような影響がなく安心です。
買い替え特例のデメリット
買い替え特例を使う際に気を付けたいのは、繰り延べた税金は非課税になったのではないということです。非課税になったのだと考えて次の売却時に思ったより大きな税額に困ってしまうようなことがないようにしましょう。
また、買い替え特例制度はほかの制度と併用して使うことができません。そのため、買い替え特例の制度を利用するか、ほかの制度を利用するかを慎重に判断する必要があります。特に3,000万円の特別控除についてはよく比較して検討しましょう。
3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除は、自分の住居を売却したときにその所有期間に関係なく、その譲渡所得から3,000万円までを差し引いて計上することができる制度です。つまり、売却益が3,000万円を上回らなければ非課税扱いになります。
このように、買い替え特例を利用し、繰り越して後に課税されるよりも、状況によっては3,000万円の控除特例を利用したほうが得になるケースもあります。買い替え特例を選ぶなら、売却益が3,000万円を超えるときや、今後売却する予定がない場合に限定して考えると良いでしょう。
その他特別控除についても合わせて知りたいならこちらの記事もチェックしてみてください。

買い替え特例は事業用の資産でも使える
買い替え特例の大きな特徴として、居住用財産(マイホーム)だけでなく、事業用の資産にも利用が可能だということが挙げられます。事業用資産における買い替え特例について詳しく見ていきましょう。
特定居住用財産と課税対象の違い
マイホームを買い替えた際の特例は特定居住用財産の買い替え特例と言いましたが、事業用不動産を買い替えた場合の特例は事業用資産の買い替え特例と呼ばれます。賃貸経営しているアパートやマンション、駐車場、テナントビルなどの不動産の売却などがそれに含まれます。
事業用資産の買い替え制度は、事業用不動産を売却してから、ある一定の期間内に他の事業用の不動産を購入した場合にその譲渡所得にかかる税金を次回の売却に繰り延べることができる制度で、居住用財産の買い替え特例とも大枠の仕組みは同様です。ただし、条件や繰り延べの割合などが異なるため注意が必要です。
事業用資産の買い替え特例では、売却により生じた譲渡所得の20%がその場で課税され、残りの80%を繰り越すことができます。ただし、東京都特別区に所在する事業用資産は30%、集中地域は25%と課税割合が異なる場合もあります。
また、売却額よりも新たな不動産(買換資産)の金額の方が小さい場合と大きい場合とで計算式が異なります。それぞれ以下のように計算して求めましょう。
収入金額=譲渡資産価格×課税割合
必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×課税割合
譲渡所得税=(収入金額-必要経費)×税率
収入金額=譲渡資産価格-買換資産の取得費×(100%-課税割合)
必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷譲渡資産価格)
譲渡所得税=(収入金額-必要経費)×税率
このように、事業用資産の買い替え特例は安く手に入れた不動産が高額で売却できたときや、所得が大きくプラスになった場合に利用するのが良いでしょう。
譲渡する資産の条件
譲渡する資産には以下の条件があります。自分が売却する不動産はこの条件に合っているか確かめてみましょう。
- 事業用のものであること
- 買い替えの組み合わせを満たしていること
- 所有期間が5年を超えていること(令和5年3月31日までの譲渡であれば制限なし)
- 収容等・贈与・交換・出資によるもの、代物弁済としての譲渡でないこと
買い替える資産の条件
先ほど挙げた売却する不動産の条件以外に、買い替える資産にも条件があります。
- 事業用のものであること
- 買い替えの組み合わせを満たしていること
- 譲渡した土地面積の5倍以内であること
- 譲渡した年か、前年中か、翌年中に取得すること
- 取得から1年以内に事業に利用すること
- 他の特例を受けていないこと
買い替えの組み合わせ
譲渡資産と買換資産の組み合わせも条件のひとつです。複数ある組み合わせのなかでも代表的な2つを取り上げて説明します。
譲渡資産の条件 | 買換資産の条件 | |
パターン1 |
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パターン2 |
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参考:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」
買い替え特例を使うためには確定申告
不動産を売却した際には確定申告が必要になります。確定申告は買い替え特例制度を利用するためにも必要となる大切な申請なので、忘れずにしっかりと申告しましょう。
買い替えで申告をするタイミング
確定申告は売却があった翌年に手続きします。確定申告がおこなわれるのは、毎年2月16日から3月15日までの期間です。曜日によって前後する可能性もあるため、詳しくは税務署のホームページを参照してください。
申告ミスがあっても5年以内であれば遡って訂正することができますが、延滞費を取られてしまうこともあります。申告に不安がある場合など、各税務署が2月上旬ごろから無料相談会を開催していることも多いので相談しながら間違えがないよう慎重に手続きをおこないましょう。
買い替え特例を確定申告するための必要書類
確定申告をスムーズに間違いなくおこなうために、あらかじめ必要な書類を把握しておくと安心です。マイホームの買い替えと事業用の買い替えとでは必要書類が異なるため気を付けましょう。
特定居住用財産での買い替え特例の場合
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売却した不動産が条件を満たしていることがわかる資料
- 売却した不動産の登記事項証明書・売買契約書
- 買い替えた資産の登記事項証明書・売買契約書の写し
- 耐震基準適合証明書
事業用の資産での買い替え特例の場合
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 買換資産の登記事項証明書
- 譲渡資産・買換資産が条件を満たしていることを証明する書類
買い替え特例の確定申告の提出方法
確定申告の提出方法は窓口提出、郵送提出、e-tax提出の3種類あります。それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
提出方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
窓口 | 税務署の窓口に行って提出 |
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郵送 | 郵便の窓口やポストから送付して提出 |
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e-tax | インターネットで提出 |
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年末調整時の確定申告についても知りたいならこちら記事もおすすめです。

買い替えでお金を残すポイント
確かに買い替え特例を正しく利用すると節税になりますが、非課税になるわけではなく繰り延べされる制度であるため、状況を見極めなければ損をしてしまうこともあるでしょう。このように、不動産の買い替えをおこなう際には、状況や状態などさまざまな角度から検討して売却・購入を進める必要があります。
不動産の買い替えでお金を少しでも多く残すためのポイントをいくつかご紹介します。
一括査定で相場を把握して売却
何よりも、不動産の売却額を少しでも高くすることが手元にお金を残す一番の近道です。そのためには、事前に相場を把握して不動産を売却することが大切です。相場を把握しないで売却に臨んでしまうと、本来の評価よりも低い価格で査定金額を提示されても気づくことができず、買い叩かれてしまう恐れもあります。
売却する不動産の相場を知る簡単な方法として、不動産の一括査定サービスを利用することをおすすめします。一括査定サービスは、インターネットでいつでもおこなうことができ、1度の入力で複数の不動産会社に査定を依頼することができます。そのため、複数の査定額からだいたいの相場を推定することが可能です。
また、ここでいくつかの不動産業者を比較することで、より信頼のおける不動産業者と媒介契約を結ぶことにもつながります。不動産業者の力量が高ければ高いほど、短い売却期間で高い金額での成約が見込まれます。
一括査定サービス利用者が選んだおすすめサービスTOP3
※クラウドワークス、クロスマーケティング調べ(2021/4/9~2021/4/13実施 回答数380人)
こちらは、サービス利用者のアンケート結果による「おすすめの不動産一括査定サービスTOP3」です。実際の利用者の声と編集部の知見が合わさったできたランキングですので、ぜひ参考にしてください。
なお、不動産一括査定サービスは、それぞれ対応するエリアや提携する不動産会社が異なるため、1つだけでなく複数のサービスを利用することをおすすめします。
次の記事ではより多くのサービスを含めたランキングや「査定結果の満足度TOP3」や「親族・友達におすすめしたいTOP3」などカテゴリ別にもランキングを紹介しています。さらに詳しく知りたい方は読んでみてください。

売却を依頼する不動産業者を厳選する
実際に売却活動をおこなうのは不動産業者です。そのため、不動産業者選びを誤ってしまうと、高額売却が期待できません。優良な不動産業者を選択するためには、一括査定サービスなどで出た査定額の高さだけを基準にすることは避けたほうが良いでしょう。売却実績が優れているか、情報がしっかり開示されているか、担当者の対応はどうかなど、総合的に見て判断しましょう。
不動産業者を見極めるポイントをもっと知りたいならこちらの記事もおすすめです。

買い替え特例を使うかは専門家に相談をしてから
不動産売却にかかわる特例制度はいくつか存在します。買い替え特例は大きな節税も期待できるお得な制度ですが、状況によっては他の特例制度を利用したほうが利益にかなう可能性もあります。もう買い替える予定がないからと、買い替え特例を利用することを自分で選択してしまうのではなく、不動産業者の担当者と相談したり、税理士や税務署窓口などの専門家と相談しながら慎重に判断しましょう。
ライフプランを考えて買い替えを進める
不動産を売却して買い替える場合、また新たにローンを組みなおすという方が多いかと思います。売却する不動産のローンを組む時よりも審査が厳しい場合や、月々の支払が高額になってしまうこともあるでしょう。住み替える家をいずれ相続することや、定年後の収入が下がることを見越して老後の資金などを考えて慎重に買い替えを進めましょう。
まとめ
売却した際の収入が想定よりも多くなった場合には、不動産の買い替え特例制度は非常に有益な制度だと言えます。しかし、近い将来また売却する予定があったり、あまり高額な収益が出なかった場合など、状況によっては他の特例制度を利用するほうが得になることもあるでしょう。
買い替え特例制度は他の特例制度と併用することができません。一度選択してしまうと、次の売却の際に大きな税金を課せられる恐れもあります。買い替え特例を利用するのだと決めつけてしまう前に、専門家や不動産業者の担当者などとよく相談をしながらじっくりと考えて選択することは大切です。買い替え時にハプニングが起こるリスクを避けて、お得に住み替えを行いましょう。
そして、不動産の売却ならまずは一括査定サービスを活用しましょう!以下に人気な査定サービスのランキングをまとめましたのでぜひ参考にしてください。
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