親の家を売る6つの方法を解説!税金や売れないときの対策もしよう

不動産売却

親が亡くなったり介護施設に入ったりすると、購入していた家は空き家になってしまいます。誰も住んでいないにも関わらず、維持費は年間で10万円を超えることもあり、今後も利用する予定がないならそのままにしておくのはもったいないですね。

しかし、売ることを決断しても親の家の場合は、通常の手続きに加えて相続や委任状の作成など、状況に合わせて追加の手続きが必要です。特に初めて家を売る人にとっては、慣れない作業ばかりで不安になってしまいます。

そこでこの記事では、親の家を売るための各種準備から、不動産売却の基礎知識、売れない場合の対策まで詳しく紹介していきます。ぜひ参考にしていただき、トラブルのないスムーズな売却を目指しましょう。

家がいくらで売れるか分かる!おすすめ不動産一括査定サービスTOP3

「まずは親の家がいくらで売れるのか知りたい」という方は不動産一括査定サービスを利用してみましょう。

こちらは、サービス利用者にアンケートを取って作った「おすすめの不動産一括査定サービスTOP3」です。実際の利用者の声と編集部の知見が合わさったできたランキングですので、是非参考にしてください!【クラウドワークス、クロスマーケティング調べ(2021/4/9~2021/4/13実施 回答数380人)】

なお、不動産一括査定サービスは、それぞれ対応するエリアや提携する不動産会社が異なるため、1つだけでなく複数のサービスを利用することをおすすめします。

次の記事ではより多くのサービスを含めたランキングや「査定結果の満足度TOP3」「親族・友達におすすめしたいTOP3」などカテゴリ別にもランキングを作っております。さらに詳しく知りたい方は読んでみてください。

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【親が亡くなっている場合】相続手続きをしてから売る

兄弟姉妹がいないなど相続人が1人の場合は、自動的に相続されるので問題ありませんが、相続人が複数いる場合は、遺言書を確認し家やその他の財産の相続について指定があれば、その内容に従って相続人が決定します。遺言書がない場合は、家を誰が相続するのか遺産分割協議で決めます。

相続する人が決まったあとは、相続登記という手続きを行います。相続登記は、いつまでにしなくてはいけないという期限はありませんが、登記をしないと売ることができません。売る意志が決まったのなら、早めに登記を済ませましょう。

相続登記の必要書類

相続登記は、売る家がある地域を管轄する法務局でしなければいけません。直接現地の法務局に行かなくても、次の書類をそろえて郵送したりオンライン申請したりすることはできます。

  • 親の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 親の住民票除票、または死亡の記載がある戸籍附票
  • 遺産分割協議書(遺産分割が行われた場合)
  • 相続人全員の住民票、戸籍謄本、印鑑証明書
  • 家の固定資産評価額証明書
  • 家の登記簿謄本
  • 相続登記申請書(法務局のHPでひな形のダウンロードが可能)

さらに登録免許税として、固定資産税評価額の0.4%の収入印紙が必要になります。評価額は1,000未満、登録免許税は100円未満を切り捨てて計算してください。

相続登記の流れ

  1. 必要書類を法務局に提出
  2. 法務局が相続登記書類の精査を行う
  3. 権利証の交付

提出をしてから権利証が交付されるまで、7~10日程度かかります。提出書類にしようした印鑑や身分証明書を持って、法務局へ受け取りにいきましょう。遠方の家で相続登記をしている人は、郵送受け取りにしておくと現地に行く必要がなくなります。

空き家の場合は放置するとマイナス

親が亡くなってから空き家のまま放置していると、毎年次の費用がかかり総額で10万円を超えることもあります。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 光熱費・水道代の基本料金
  • 火災や地震の保険料
  • 管理費・修繕積立金(マンションの場合)

さらに戸建ての場合は、メンテナンスされていないと雑草は生い茂り壁や屋根が老朽化で崩れていきます。荒れた家では放火が起こりやすく、老朽化による被害は近隣とのトラブルの元です。空き家対策特別措置法により、問題のある家は自治体から対処を求められます。無視していると税金の軽減措置はなくなり、最後は家を解体されます。

もし兄弟姉妹や親が売ることに反対している場合は、マイナス要素を伝えて空き家のまま残さないよう交渉してみましょう。築年数が古くなりすぎると、売ること自体も難しくなってしまいます。

築年数が進んだ家の賢い売却術に関してはこちらの記事もご参考ください。

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【親が生きている場合】親の家を売る5つの方法

親がまだ生きていても、体の衰えや認知症などで本人が売る手続きができない場合があります。しかし、家は例え子供であっても勝手に売ることはできません。そこで親の家を売るためには、次の5つの方法が考えられます。

  • 親に委任状を作成してもらう
  • 家を生前贈与してもらい名義変更をする
  • 任意後見制度を利用する
  • 家族信託を結んでおく
  • 親が認知症の場合は成年後見制度を使う

状況によってどの方法をとればよいのかや、手続きの流れ、必要な書類などを詳しくみていきましょう。

親に委任状を作成してもらう

親が家を売りたいと思っていても、本人による手続きが難しい場合は、子供が代理人となって家を売ることができます。その場合は、「家の売却を子供に委任する」という内容の委任状が必要となります。委任状は法的に決まった形式はなく、以下の内容が記載されていれば大丈夫です。また、不動産業者で用意してある場合もあるため、相談してみるとよいでしょう。

委任状に記載する内容

  • 委任する内容の範囲(売買契約の締結に関する権限、売買代金の受領に関する権限など)
  • 売却する不動産の所在地、面積、構造など
  • 希望する売却価格や手付金の額など(取引の条件を親が詳細に指定したい場合)
  • 代理人(子供)の住所、氏名
  • 委任する人(親)の住所、署名、実印の押印

必要書類

  • 親の本人確認書類(免許証など)
  • 親の住民票
  • 親の印鑑証明書
  • 子供の本人確認書類

委任状の作り方について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

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家を生前贈与してもらい名義変更をする

生前贈与は、親が生きているうちに子供に財産を移転して相続財産を減らすことができ、節税対策としても効果があります。生前贈与のメリットは、生前に確実に財産を引き継げる、相続時の税金を減らせる可能性があるなどです。

しかし贈与税や登記関係の税金や費用がかかったり、生前贈与分が特別受益とみなされ相続分が減ってしまったりすることがあります。不安な方は専門家に相談してから行うようにしましょう。

登記申請で必要な書類

  • 登記申請書
  • 登記識別情報または登記済証(権利書)
  • 贈与する土地の固定資産評価証明書
  • 登記原因証明情報(贈与契約書など)
  • 贈与者の印鑑証明書
  • 受贈者の住民票
  • 司法書士に委任する場合は委任状

生前贈与の手続きの流れ

  1. 贈与する内容の話し合い
  2. 贈与契約書の作成
  3. 法務局で名義変更の登記

生前贈与でかかる費用

  • 不動産所得税…固定資産税評価額の3%
  • 贈与税…110万円を超える部分に、10~55%の税率
  • 登録免許税…固定資産税評価額の2%
  • 司法書士への報酬(依頼した場合)…5万円程度

任意後見制度を利用する

任意後見制度は、不動産売却などの判断ができなくなる場合を見越して、事前に後見人を決める制度です。判断能力が不十分になった時点で、その契約内容に基づき本人が委託した内容を実現できます。任意後見制度は、家族以外の人もなれるのが特徴です。

任意後見人の手続きの流れ

  1. 親が任意後見受任者を決める
  2. 支援内容を決める
  3. 任意後見契約書を公正証書で作成
  4. 判断能力が低下したら、任意後見監督人選任の申し立てを行う
  5. 任意後見開始

公正証書は、法律の専門家である公証人が作成する公文書です。裁判でも有効な証拠能力があり、各都道府県の公証役場で作成できます。

任意後見契約書(公正証書)作成にかかる費用

  • 公正証書作成の基本手数料…11,000円
  • 登記嘱託手数料…1,400円
  • 登記所に納付する印紙代…2,600円
  • その他…本人らに交付する正本等の証書代、登記嘱託書郵送用の切手代など

家族信託を結んでおく

家族信託とは、本人が不動産売却などの判断ができなくなった場合や、自分の財産管理ができなくなった時に備えて、事前に、家族に自分の財産の管理や処分をできる権限を与えておく方法です。委託者(親)は信託財産の管理、処分権利を受託者(子供)に渡し、受託者は運用、処分、管理などによる利益を委託者に渡します。

家族信託の手続きの流れ

  1. 信託の対象となる財産、受託者を決める
  2. 信託契約書を公正証書で作成
  3. 法務局にて信託登記

親の家以外にお金の管理もする場合は、普段使いしている口座とは別で新しいものを開設します。分けておかないと、どこまでが親のお金なのかの把握が難しくなってしまうでしょう。

家族信託でかかる費用

  • 印紙代…200円(契約書1通につき)
  • 不動産の登録免許税…固定資産税評価額の0.4%
  • 公正証書の作成代行費用:10万円
  • 公正証書の作成手数料…3~10万円(対象の財産の価額によって異なる)

親が認知症の場合は成年後見制度を使う

成年後見制度は、認知症などにより重要な判断ができなくなった人を法的に保護するため、支援してくれる人(成年後見人)をつける制度です。法定後見の場合は、申し立ての準備から成年後見人として行動できるようになるまで、3〜6ヶ月程度かかります。

成年後見制度では、不動産の売却には裁判所の許可が必要になります。また、受益者に損失を与える可能性がある買い換えなどはできないです。

法定後見人になるために必要な書類

  • 戸籍謄本
  • 住民票
  • 認知症などの診断書
  • 成年後見人制度の未使用の証明書
  • 親族との関係図
  • 親の財産の目録
  • 親の収支状況の報告書
  • 申し立てや後見人候補者の事情説明書
  • 他の親族の同意書

法定後見人になるまでの手順

  1. 医師による診断書を取得
  2. 必要書類を集める
  3. 申立書類の作成
  4. 家庭裁判所での面接予約
  5. 家庭裁判所へ申立書類一式を提出
  6. 家庭裁判所にて審理の開始
  7. 提出資料・調査結果に基づき判断が決定される
  8. 後見登記

法定後見人になるためにかかる費用

  • 切手代…数百円
  • 家庭裁判所に申し立てするときの手数料…数千円
  • 戸籍謄本などを取得するための費用…数百円

もし法定後見人を弁護士や司法書士にやってもらう場合は、別途月額で数万円の費用がかかります。長期になると高額の出費になるため、可能なら自分が法定後見人になったほうがよいです。

成年後見人制度について、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

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親の家を売る基本の流れ

ここからは、親の家だけでなく自分の家の場合でも共通の、基本的な売却の流れを紹介していきます。準備から確定申告をするまで、次のようになっています。

  1. 売りたい家の見積もりをとり相場を調べる
  2. 不動産業者と媒介契約をする
  3. 売却活動をして買主を探す
  4. 家の引き渡し
  5. 家を売った次の年に確定申告

1つずつ、詳しく見ていきましょう。

①売りたい家の見積もりをとり相場を調べる

家がいくらで売れるのかというところは、一番気になることだと思います。それを知るためにも、まずは家の価格の相場を調べることが大切です。また、相場を知っておくことで、不動産業者に騙されて安く売ってしまったというトラブルも回避できます。

自分で調べる場合は、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」で実際に取引されている価格を調べることができます。2005年から直近までのデータがあり、価格がどのように推移しているのかも調べることが可能です。

売りたい家の具体的な金額を知りたい場合は、不動産業者の一括見積もりを利用して家の査定をしてもらいましょう。家に定価はないため、不動産業者によって査定結果に差が出ます。納得のいく価格で売却を成功させるためにも、まずは信頼できる不動産業者を選ぶことが重要です。

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②不動産業者と媒介契約をする

不動産業者に正式に売買の仲介をお願いする際には、「媒介契約」というものを結ぶ必要があります。媒介契約とは、売主が不動産業者に依頼する業務の内容やサービスと、仲介手数料などを契約で明確にしておくことで、仲介によるトラブルを未然に防げます。

媒介契約はその後の売却活動を行うのに重要な工程のため、内容をきちんと理解した上で、信頼できる不動産業者と自分にあった媒介契約を結ぶことが大切です。

契約方法 他社への仲介依頼 自分で探した買手と直接契約 レインズへの登録義務 業務状況の報告義務 契約の有効期間
一般媒介契約 任意 法令上の義務はない 法令上の制限なし
専任媒介契約 × 契約の翌日から7営業日以内 2週間に1回以上 3ヶ月以内
専属専任媒介契約 × × 契約の翌日から5営業日以内 1週間に1回以上 3ヶ月以内

3つの媒介契約が、それぞれどのような人に向いているのか以下にまとめましたので参考にしてください。

  • 一般媒介契約:複数の業者と並行したやり取りをこなす自身がある人
  • 専任媒介契約:自分でも売る先を探したい人
  • 専属専任媒介契約:業務状況を細かく知りたい人
レインズとは、不動産業者だけが使える不動産ポータルサイトのようなものです。登録されている物件は、全国の不動産業者と情報の共有ができ、早く売れる可能性が高くなります。

媒介契約について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

一般媒介契約とは何?他契約と比べたメリットとデメリットを徹底解説
不動産の売却時、不動産仲介業者に依頼しようと決めたは良いものの、そこで取り交わす媒介契約の内容に迷ってしまうケースが多いようです。不動産は高く売りたいけれど、このような取引が初めての場合や、不動産知識に自信がない人ほど悩んでしまうのではない...

③売却活動をして買主を探す

売却の仲介をお願いする不動産業者と媒介契約を結んだら、次は売却活動が始まります。不動産業者と相談して売却価格を設定し、内覧や価格交渉などを経て買主を決め、売買契約を結びます。

内覧は買い手にとって購入を決める重要な機会なため、なるべく家の中を綺麗に掃除したり、家や立地の売りを伝えるようにしたりしましょう。また、なかなか売れない場合は、不動産業者と相談して、価格を下げることも含めた売却活動の見直しも必要になってきます。

④家の引き渡し

買主が決まり、売買契約を結んだあとは家の引き渡しを行います。売買契約時に約束した状態で買主に引き渡さないといけないため、公共料金の精算や、まだ住んでいる状態ならば引っ越しも済ませておく必要があります。電気ガス水道などの切り替えや、住宅ローンの残債がある場合は、物件の引き渡しの前までに抵当権を抹消する手続きの準備もしておかないといけません。

せっかく売買契約まで終わったのに、引き渡しで揉めて契約が白紙になったという事態を避けるためにも、引き渡しの準備は余裕を持って行うようにしましょう。

⑤家を売った次の年に確定申告

家を売って利益がでた場合は、確定申告が必要になります。不動産売却で得た利益は譲渡所得として計上されるため、会社勤めの方も、給与所得とは別に自分で計算し確定申告をしなくてはなりません。譲渡所得税の計算式は次のようになっています。

譲渡所得税=【売却価格-(取得費+譲渡費用+特別控除)】✕税率

取得費は家を購入する時にかかった費用で、譲渡費用は売る時にかかる費用です。税率は所有していた期間で変わり、5年以下で39.63%、5年超えで20.315%となっています。

確定申告は不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日に行います。また、不動産売却には特別控除などの特例があり、利益が出ていても納税が不要な場合もあります。しかし特例を使うにも確定申告が必要となってくるため、家を売って利益が出なくても確定申告の手続きはするようにしましょう。

不動産売却にかかる税金と節税方法について知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

【徹底解説】不動産売却で支払う税金はいくら?対策をしてお金を残そう
不動産売却では、さまざまなシーンで税金がかかります。実際の利益は税金を差し引いたものになるため、税金がいくらかかるかを知っておくことが大切です。また、節税対策の方法も知り、賢く対策してお得に不動産売却を成功させましょう。

親の家を売るときに使える税金の特例

家を売った場合に受けられる税金の優遇制度というものが複数あり、節税することが可能です。相続した家を売却した場合の所得費の特例などもあるので、自分が利用できそうな優遇制度を確認しておきましょう。なお、優遇制度を利用するには確定申告が必要になりますので留意しておきましょう。

以下に、主な特例を5つ紹介します。

  • 親が生きている場合に使える最大3,000万円の特別控除
  • 相続した空き家を売る時に使える3,000万円の特別控除
  • 相続した家を売るときの取得費の特例
  • 相続税を減額できる小規模宅地の特例
  • 家を売って損失が出たら損益通算

一つ一つ詳しく見ていきましょう。

親が生きている場合に使える最大3,000万円の特別控除

「マイホームを売ったときの特例」と呼ばれるもので、適用条件を満たすと、最大で3,000万円の特別控除が使えます。売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた額が3,000万円までなら、特別控除で利益は0円となり、譲渡所得税は課税されない仕組みになります。

適用条件や申請に必要な書類などを具体的に説明します。

主な適用条件

  • 現在住んでいるか、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売る
  • 売り手と買い手が、親子や夫婦など特別な関係でない
  • 売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていない
  • 売却価格が1億円以下である
  • 2023年12月31日までに売る

申請に必要な書類

  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

参考:国税庁No.3302 マイホームを売ったときの特例

相続した空き家を売る時に使える3,000万円の特別控除

相続した空き家を売る時も、親が生きている時と同様に3,000万円の特別控除があります。適用条件はより厳しくなっていますが、少しでもお金を手元に残したい人は、使うようにしましょう。

法令の詳細や随時改定されるため、最新の情報を国税庁のHPで調べるようにしてください。手間をかけて申請しても条件が変わって適用できないと、得られるお金で想定していた使い方ができなくなります。

主な適用条件

  • 売る家は1981年5月31以前に建てられている
  • 2023年12月31日までに売る
  • 相続する前に亡くなった人以外に住んでいる人がいなかった
  • 相続した人が家を売っている
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の年末までに売る
  • 売る人と買う人が親子や夫婦など特別な関係でない
  • 売却価格が1億円以下

申請に必要な書類

  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • 売る家の登記事項証明書などで、相続した家なのかや建てられた日付がわかるもの
  • 家がある地域の自治体で発行する被相続人居住用家屋等確認書

参考:国税庁No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続した家を売るときの取得費の特例

この特例は、条件を満たして家を売ると譲渡所得税を計算するときに、支払った相続税の一定金額を取得費として認めてもらうことができます。計算は少し複雑ですが、家を売って利益が出そうなときは節税のため適用させましょう。

適用条件

  • 相続や遺贈によって財産を取得した人
  • 財産を取得した人に相続税が課税されている
  • 財産を相続発生の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年以内に売っている

取得費に加算される相続税の計算式

取得費に加算される相続税額=相続税額×譲渡した資産の相続税課税価格÷(相続税の課税価格+債務控除額)
債務控除額は葬儀費用や相続した借金の合計金額です。相続税課税価格は、相続する財産の中から、保険や退職金など非課税のものと債務控除額を引いた額となっています。

相続税を減額できる小規模宅地の特例

小規模宅地等の特例とは、条件を満たすと相続税の課税評価額を減額することができます。親が住んでいた家を相続する場合は、次の条件を満たすと、土地が330平米を限度に相続税の評価額が最大で80%減額となります。

  • 相続する家に亡くなった人が住んでいた
  • 亡くなった人と同じ生計
  • 家に住み続ける

親が亡くなった後に相続する家に引っ越しをしても、相続税の節税はできません。また、家に住み続けるのが条件となっているため、すぐに売るのは難しいです。減額される割合の計算や適用できる家の条件は複雑で、利用する時は税理士などの専門家に相談してみましょう。

不動産の相続にかかる税金について、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

不動産の相続には税金がかかる?税金額の計算方法から控除まで解説!
故人が不動産を所有したまま亡くなった場合には、その不動産に対して相続税がかかります。しかし、多くの方が不動産の相続税の計算方法がわからずに困っていることでしょう。この記事では、相続税が発生する場合と、どのように計算すればいいのか解説します。

家を売って損失が出たら損益通算

損益通算とは、一定期間内の利益と損失を相殺することです。不動産を売却した際に得た利益などは通常、税金がかかりますが、それゆえに売却したことで逆に損失が発生した場合は、その損失分を差し引くことができるので、その分だけ税金を減らすことができます。

繰越控除とは、上場株式等を譲渡して生まれた損失のうち、その年の譲渡益から控除しきれなかった損失金額を、毎年確定申告を行うことによって、最大3年間にわたり繰り越すことができる制度です。

不動産の売却損や相続した不動産売却でかかる費用について詳しく解説したこちらの記事もご覧ください。

不動産の売却損は確定申告で節税が可能!?節税対策を徹底解説【FP監修】
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親の家が売れないときの5つの対策

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相続した家が田舎にあったり、築年数がかなり経っていたりすると、売却活動を始めたはいいけどなかなか売れないという問題が出てくる場合もあると思います。

ここからは、売れない場合のための様々な対策を紹介していきますので、参考にしてみてください。

  • 古家付き土地として売りに出す
  • 家の見た目を整え内覧で丁寧な説明をする
  • 不動産業者に家を買い取ってもらう
  • 家を空き家バンクに登録して売る
  • 近所の人に購入してもらえないか相談する

古家付き土地として売りに出す

家の価格を値引きしてもなかなか売れない場合や、家が古くて建物の価値をつけるのが難しい場合は、土地の価格だけにして「古家付き土地」として売り出す方法もあります。

古い家が立っているより、更地にした方が売れやすいと思うかもしれませんが、更地にするには解体費用がかかります。さらに建物があったときの特例措置が使えなくなり、固定資産税が高くなってしまう可能性もあるのです。空き家の味を生かせる店舗や格安の戸建てを探している人もいるため、更地にする前に「古家付き土地」として売り出すことをおすすめします。

家の見た目を整え内覧で丁寧な説明をする

物件情報で立地や間取りを気に入っていても、いざ内覧したら、建物も土地も汚くて購買意欲が失せることがあります。売る機会を逃さないため、家の中と外回りをきれいにしておくことはとても大切です。ただし、リフォームまでしてしまうと、リフォーム費用を回収できない恐れがあります。プロによるハウスクリーニングやDIYでの修理までにとどめておく方が、損をしにくいです。

また、内覧に来た人に丁寧に接することを心がけ、家の良いところを伝えましょう。聞かれたことにはできるだけ誠実に答え、気持ちのいい対応をすることで好印象を与えることが重要です。例えば、女性が内覧の応対をすることで、「家の中のことに精通している」「きめ細かい」「気さくで質問しやすい」などのイメージをつけることができます。また金額交渉を受けた場合でも、その場ですぐに決定しないで済むという場合があります。

内覧でチェックされるポイントを詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

中古物件の内覧でチェックされるポイントは?内覧後の注意点も解説!
中古物件の売却において、内覧は購入に影響する非常に重要なイベントです。この記事では、中古物件の内覧でチェックされるポイントについて詳しく解説します。内覧までの事前準備や内覧対応時、内覧後〜引き渡しまでの注意ポイントも取り上げます。

不動産業者に家を買い取ってもらう

家を売る方法としては、不動産業者に直接買い取ってもらうという方法もあります。買主を探す必要がなく、短期間で売却でき仲介手数料もかかりません。

しかし、買い取った家は不動産会社が再販売をするため、通常の売却価格より1割〜3割程度安くなってしまいます。値下げしてもなかなか売れない、安くてもよいので早く売りたいという方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

不動産買取についてはこちらの記事で取り上げていますのでご参照ください。

不動産買取なら高価格で売却できる?メリット&デメリットや流れを徹底解説
不動産を売却するときには、不動産会社に仲介をしてもらい買手を探す方法の他に、不動産買取という選択肢があります。不動産買取とは不動産会社に直接買い取りをしてもらうことですが、どのようなメリットが有るのでしょうか。この記事で詳しく解説します。

買取専門の一括査定サイトなら「買取博士」がおすすめ

買取博士がおすすめな理由
  • 不動産の買取会社一括で査定を依頼できる
  • 仲介手数料無料&その分買取金額に上乗せしてもらえる
  • 売却後に不具合や故障があっても責任は問われないので安心
  • 内覧のたびに部屋を片付ける手間がかからない
  • 汚れていてもリフォームや不用品処分は不要

家を空き家バンクに登録して売る

空き家バンクは、主に自治体や、自治体から委託を受けた団体によって運営されている空き家の所有者と、空き家を利用したい希望者のマッチングをする仕組みです。空き家バンクのサイトから全国の空き家物件を検索することができます。

通常の不動産の仲介と違うところは、自治体が運営していて、営利目的ではないため費用がかからずに利用できるという点です。また、基本的には業者を介さない個人間での取引になり、仲介手数料なども発生しません。

一見仲介よりお得に感じますが、交渉や契約書作成の難しさという欠点があります。仲介と違い交渉は当人が直接するため、感情的なやり取りになると妥協点が見つけられないです。契約書作成は、専門知識がないと引き渡しの条件設定などに穴が生まれ、トラブルが起こります。節約目的だけで利用するのは、避けた方がよいでしょう。

近所の人に購入してもらえないか相談する

なかなか買い手が見つからない場合は、近所の人に購入する意志がないか確認することも1つの手です。近所だと家や土地を有効活用しやすいですし、特に隣人の場合は合筆で土地をひとまとめに大きくすることもできます。これまで友好的な関係を築いているなら、親の家を売る意志が固まった時点で一度確認してみてはいかがでしょうか。

また、売れない=価格がつかない不動産扱いとなってしまった場合に、空き家を無償譲渡するという方法もあります。しかし近所の方に無償譲渡を行う場合、譲渡される側としては所有資産が増えることになり、贈与税が課税される可能性があります。土地の評価額により課税有無が変わってくるため、近所と後々トラブルになってしまわないよう、事前に贈与税に詳しい不動産会社に相談してみてください。

親の家を売るときの3つの注意点

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親の家を売るには、自分が住んでいる家を売る時より注意が必要です。勢いで手続を進めていると、想定外の出費が発生したり、売った後のリスクが高くなったりします。知っておくべき次の3つの注意点について、詳しく解説をしていきます。

  • 売る家の境界は確定しておく
  • 把握していない不具合があると契約不適合責任が発生
  • 不明な点を残したまま売ると損をする

売る家の境界は確定しておく

売る親の家が一戸建ての場合、土地の境界がどうなっているか確認する必要があります。古い家では、塀が隣を土地に越していたり、どこまでが自分達の土地なのかはっきりしていなかったりすることがあります。現状のまま引き渡したのでは、新しく住む人は、隣家と境界が原因でトラブルを起こしてしまうでしょう。

境界をはっきりさせるため、専門家による確定測量を行います。費用は35~80万円かかり、土地が広かったり隣接する土地の所有者が多かったりすると高くなります。かけた費用は確定申告の取得費に計上することが可能です。節税のため、確定測量をする場合は領収書などを保管しておきましょう。

確定測量の必要性やかかる費用の詳細を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

確定測量をしてトラブルのない不動産売却!費用や期間まで解説!
土地を売却する際に多いのが、隣地との境界がはっきりせず持ち主と揉めてしまうトラブルです。確定測量をおこなうことでそういったいざこざを避けることができます。本記事では不動産売却に伴う確定測量についてその方法や費用・期間など詳しく解説します。

把握していない不具合があると契約不適合責任が発生

家を売ると購入した人に対して、契約不適合責任というものが発生します。売買契約書に記載した家の状態と現状が違うと、修理費用の負担を求められます。自分が把握していない部分も責任を負う必要があるため、普段住んでいない親の家を売る時は注意が必要です。

リスクを下げたいのなら、まずは売買契約書で責任を負う期間を限定してください。引き渡し後の設備の故障や1年を過ぎて発見された不具合は保証しない、といった条件を設けておくのです。また、契約不適合責任向けに既存住宅売買瑕疵保険というものもあります。数万円の保険料はかかりますが、不具合の修理費の負担はなくなります。

既存住宅売買瑕疵保険の詳細について具体的に取り上げたこちらの記事も併せてチェックしておきましょう。

既存住宅売買瑕疵保険を利用して売却!トラブルを避ける引き渡しとは
家の売却は引き渡しが済むと、不具合が見つかっても自分には責任はもうないと思っていませんか。実は何年も責任はつきまとい、修理費用を求められることもあります。既存住宅売買瑕疵保険はそのような負担を軽減してくれる、売却前に加入できる保険です。 ...

不明な点を残したまま売ると損をする

慣れない売却作業に相続や委任状作成などもある親の家では、やるべきことが多くて不明な点を全て自力で解消していくのは困難です。何がわかっていないのかもわからない状態かもしれず、問題なく全ての手続を終えたつもりでも損をしている可能性があります。

親の家を売って後悔しなくないなら、不明な点は躊躇せず専門家に相談をしましょう。事務所を構える専門家でも、初回の相談であれば無料になりやすいです。次にまとめた悩み別の相談先を参考に、気になる所から不安を解消してください。

親の家を売る時の悩み 相談先
家を売る全般について 不動産会社
相続や成年後見人などの家を売る準備について 弁護士、司法書士、不動産鑑定士
税金・確定申告について 税理士
家の境界について 土地家屋調査士、測量士

まとめ

「親の家を売る」と言っても、相続の種類から売却の仕方、節税対策の方法まで、選択肢も必要な手続きもたくさんあります。また、幼い頃から慣れ親しんできた思い出深い家ですので、後悔はしたくありません。納得のいく提案をしてくれる誠実な不動産会社を選ぶなど、一つ一つ慎重に判断することを心がけましょう。

そのためには、まずは家の特徴や今の状況を把握し、それに見合った売却・買取方法を見極めることが重要です。ぜひこの記事を参考に、かしこく取引を成功させてください。

※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/
https://www.rosenka.nta.go.jp/
https://www.retpc.jp/chosa/reins/
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf


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