不動産売却をすると健康保険料が上がるという話を聞いたことはありますか?不動産と健康保険がどう関係するのか疑問に思う人は多いでしょう。実は不動産を売却して出た利益は所得として考えられるので、加入している保険の種類によっては保険料が値上がりする可能性があります。
しかし、値上げ対象になる保険の種類と対策を知っておくことで、不動産売却後の保険料支払い損失を防ぐことは可能です。この記事では健康保険料の仕組みや種類、また保険証値上がりを未然に防ぐための3つのステップを解説します。記事内容を参考に不動産売却時の思わぬリスクを回避しましょう。
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健康保険の種類と特徴
公的医療保険は、病気や怪我をしたときに医療費の一部が負担軽減される制度です。日本では、この公的医療保険にすべての国民が加入することとなっていて、これを国民皆保険制度といいます。公的医療保険には、加入対象者ごとに以下のような種類があります。
保険の種類 | 対象者 |
健康保険 | 民間企業に勤める会社員が対象で正社員以外も加入対象者となる。正社員の1ヶ月間の勤務時間と比較して、その4分の3以上働いているアルバイト、パート、嘱託社員、契約社員についても健康保険に加入することが可能 |
国民健康保険 | 健康保険や共済保険などの対象にならないすべての人が加入する保険。個人事業主、自営業の人が対象。無職の人も対象 |
共済保険 | 公務員や教員、私立学校の教員が対象者 |
船員保険 | 日本の船舶で働いている船長、海員、予備船員などが対象者 |
退職者医療保険 | 2015年3月に廃止された制度。それ以前に加入している人は、引き続き加入した状態が継続になる。退職者医療保険は、65歳未満で国民健康保険に加入していて、かつ老齢年金を受給している人が対象者 |
後期高齢者医療保険 | 75歳以上の方が対象となる医療保険制度。75歳以上になると、国民健康保険から後期高齢者医療保険制度に移行する |
これらの保険はそれぞれ支払う保険料率や、保険が適用される条件が違うという特徴もあります。また加入者が扶養している人に対しての条件や保険料に差があることもあります。
不動産売却と健康保険料への影響
健康保険はさまざまな種類によって違いがあり、不動産売却時に影響があるかどうかも種類によって変わってきます。各種類の特徴からどのような影響があるのかを見ていきましょう。
企業勤めの健康保険の場合
企業勤めの場合、大手企業は健康保険組合、中小企業は協会けんぽとも呼ばれる全国健康保険協会が健康保険を提供しています。企業が提供する健康保険加入の場合、不動産売却で得た利益が保険料に反映される仕組みではないために加入者本人の保険料が上がることはありません。
企業の健康保険料は給料をベースにした標準報酬月額よって計算され、毎月の給料から国に保険料を納めています。そのため、不動産の売却益は算定対象にはならないのです。
保険組合の規定によって対応に差はありますが、健康保険の被扶養者が所有する不動産を売却し、被扶養者の年収が130万円を超える場合は扶養から外れる可能性があります。しかし、不動産を売却して得た収入は継続する収入ではないために一時的な収入であると認められれば、扶養から外れなくてもよい場合があります。被扶養者が不動産を売却する場合は、必ず健康保険組合に確認しましょう。
公務員で共済保険の場合
共済保険は公務員が加入する医療保険で、保険料は先に挙げた企業勤めの場合と同様、毎月の給料をベースにとした標準報酬月額で計算されます。それで、不動産売却で得た利益が保険料に影響することはありません。
また被扶養者が所有する不動産を売却する場合も企業の健康保険と同じ扱いがなされます。被扶養者の年収が130万円を超える場合は扶養から外れたり、一時的に高額所得者となり被扶養者の条件から外れてしまう可能性もあります。保険組合へ事前に確認する必要があるでしょう。
自営業で国民健康保険の場合
自営業や無職の人が加入している国民健康保険は、不動産売却によって健康保険料が上がる可能性があります。国民健康保険の場合は給料の標準報酬月額で決定する保険料ではないので、世帯ごとの総収入をベースとした所得を保険料の算定基準にしています。
そのような仕組み上の違いから、国民健康保険の加入者が不動産売却するなら最も影響を受けやすいと言えるでしょう。国民健康保険の保険料は前年度の所得に応じて決定されるので、不動産を売却して出た利益は一時的か継続的かに関係なく所得として換算され、その金額によっては翌年の国民健康保険料の値上げにつながります。
しかし国民健康保険でも保険料が上がらないケースもあります。不動産売却によって譲渡益が出ない場合、保険料は増額されません。
75歳以上の後期高齢者医療制度の場合
国民健康保険の次に影響を受けやすいのは後期高齢者医療制度です。この制度は原則75歳以上の高齢者が加入する医療保険制度で、国民健康保険と同様に総所得額が保険料のベースとなります。
通常、雑所得として扱われる年金は控除扱いになりますが、不動産売却して得た利益は課税対象になるため、収入ありと判断されます。そのため翌年の保険料額に影響が出る可能性があるのです。
不動産売却で国民健康保険料がいくら上がるかを知る
不動産売却時に影響を受けやすい国民健康保険料。
総所得から料金が割り出されることを知ることができましたが、いったいどのような計算方法で具体的な金額が決められているのでしょうか?その点を知っておくと、どれほどの値上げがなされるのか目安を知る助けになります。
不動産売却に関わる国民健康保険料要素とは
国民健康保険料は、医療分、後期高齢者支援金分、介護保険分の3つを足して計算します。
この3つのうち、不動産の売却で譲渡所得があった場合に関係してくるのは医療分です。医療分は、以下の要素を組み合わせて計算されます。
医療分内訳 | 概要 |
所得割 | 含まれるのは不動産売却益も含めた総所得 |
均等割 | 世帯の加入人数による |
資産割 | 固定資産より算出される ※自治体によって廃止している場合あり |
平等割 | 自治体によって決められた一律制 |
資産割や平等割は各市区町村によって扱っているか、またかけられる率はどれほどかに差があるため、地域によって金額が変動します。
この4つの要素のうち、不動産売却で出た収益が加算されるのが所得割です。所得割は令和2年に税制改正があり、令和3年度分以後の国民健康保険税に適用されます。この改正により基礎控除額が33万円から43万円に引き上げられます。改正後の計算式は以下のとおりです。
保険料率は各自治体で異なる
国民健康保険料は、市区町村単位で決められています。国民健康保険料の所得割率や均等割額は自治体によって異なります。国民健康保険の財政は都道府県単位で運営されているものです。正確に保険率を知りたい場合は各自治体へ問い合わせてみましょう。
国民健康保険料が判明する時期
保険料の所得割額は、前年度の所得額を基に算定します。自治体にもよりますが、一般的に保険料の確定は住民税額確定後の6月から7月です。自治体によって明確な時期は異なるのでこの点も直接確認しましょう。
また、それまでに保険料の支払いをしてきた領収書から大まかな判明時期を割り出すこともおすすめです。領収書には不動産売却前の通常保険料額も明記されているので、試算する際にはその金額を手掛かりにすることもできます。
不動産売却で国民健康保険料を押さえる3つのステップ
不動産売却で国民健康保険料が上がるのは、売却益があると認められたときです。不動産売却の経費を把握することで保険料が上がるのを回避できる可能性があるので、以下の3つのステップを確認しましょう。
ステップ1 不動産売却の経費をしっかり計上する
土地や建物を売却して得た純粋な利益金額を計算するには、その不動産の購入代金や購入にかかった経費、さらに売却にかかった経費を差引く必要があります。これらの金額を正確に割り出すなら、保険料に響いてくる譲渡所得額を少なく計上することも可能です。また、割り出した譲渡所得額は特別控除を受ける際にも役立ちます。
譲渡所得額は以下の計算式で求められます。
費用種類 | 概要 |
収入金額 | 物件を売却した総額 |
取得費 | 物件購入時の金額と、仲介手数料 |
譲渡費用 | 物件売却に要した費用 |
物件売却にかかる譲渡費用ですが、なんでも売却経費として挙げられるわけではありません。どのような費用が含まれるのかを知っておくと試算する時に混乱するのを避けられます。以下は譲渡費用に含まれる主なものです。
- 不動産会社に支払う仲介手数料
- 売買契約書に貼付する印紙代
- ローンの抵当権抹消登記費用、司法書士への報酬
- 引越し費用
これらの経費に関連する書類は保険料割り出しの際にも重要な書類です。大切に保管しておきましょう。
売却費用についてさらに知るにはこちらの記事もおすすめ

ステップ2 売却不動産の取得費を正確に算出
取得費を計上するためには、購入時の領収書や請求書、通帳のコピーなど実際の出費を説明できるものが必要です。
しかし、昔に買った土地であれば、価格はいくらだったのか、土地購入でどのような出費があったのかわからない場合があるでしょう。不動産の取得費が不明な場合は、売却した金額の5%を取得費として計算できます。その際には資料や明細を用意できないものは、取得費に含めないようにします。
通常、取得費に含められるのは以下の費用です。
- 土地・建物の購入代金や建築代金
- 購入時の税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税など)
- 仲介手数料
- 測量費、整地費、建物解体費など
- 設備費、改良費
- 一定の借入金利子
取得費を計算しておくと控除に関係する譲渡所得額算出にも役立つので、必ず正確に割り出すようにしましょう。
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ステップ3 特別控除を使い利益を減額させる
不動産売却で特例として特別控除が受けられる場合があります。特別控除を特別控除の種類と控除額や条件を表にまとめました。
特別控除の種類 | 控除額 | 条件 |
5,000万円の特別控除特例 | 売却利益の最高5,000万円分を非課税 | 公共事業などのために土地建物を売った場合 |
3,000万円の特別控除の特例 | 売却利益の最高3,000万円分を非課税 | マイホーム(居住用財産)を売った場合 |
2,000万円の特別控除の特例 | 売却利益の最高2,000万円分を非課税 | 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合 |
1,500万円の特別控除の特例 | 売却利益の最高1,500万円分を非課税 | 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合 |
1,000万円の特別控除の特例 | 売却利益の最高1,000万円分を非課税 | 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合 |
800万円の特別控除の特例 | 売却利益の最高800万円分を非課税 | 農地保有の合理化などのために土地を売った場合 |
100万円の特別控除の特例 | 売却利益の最高100万円分を非課税 | 低未利用土地等を売った場合 |
この特例を利用すると所得額を少なく計上できます。保険料を計算する時にはこの特例適用後の金額に合わせて算出されるため、賢く保険料を節約したいなら活用することをおすすめします。
特別控除についてさらに詳しく知りたいならこの記事をチェック

相続した不動産の売却なら取得費加算を使う
相続した不動産売却による譲渡益から相続税分を控除してくれる特例があります。この制度を利用すると、一定期間内に譲渡することを条件に相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算することができます。ただしこの特例は譲渡所得のみに適用されるので、不動産が株式であったり事業経営による所得、または雑所得扱いのものについては適用外になります。
以下は適用を受けるための主な条件です。
- 売却するのは相続した物件であること
- 相続開始から3年10ヶ月以内に相続財産を引き渡している
- 財産取得者に相続税が課せられている
注意したいのは、これらの要件に当てはまっていれば誰でも受けられるわけではないという点です。次の部分ではこれまでに紹介した特例を受けるために必要な確定申告について解説します。
健康保険料が上がらなくても確定申告がお得
保険料が値上がりするかどうかに関係なく、控除を受けることで得られるメリットは多くあります。不動産売却時に確定申告をするとどんな良いことがあるのでしょうか?国が設ける制度をもとに解説していきます。
損益通算で年間の所得額を減らす
不動産売却が結果的にマイナスになった場合は譲渡損失として扱われます。この譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その損失を売却した年の給与所得や事業所得など他の所得から控除することができます。これを損益通算といいます。
譲渡損失が出た時には条件によって、2つの控除パターンから選ぶことができます。
譲渡損失後に家を買い換える場合
自宅を買い替えるときに利用できるのはマイホームの買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例です。
以下に特例を受けるためにクリアすべき条件を挙げました。
- 自分が住んでいる住宅を売却すること。
- 以前に住んでいた家の場合は、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること
- 売却した年の前年と前々年にその他特例控除を受けていないこと
- 所有期間が5年超であること
- 合計所得金額が3,000万円以内
この特例を受けるには上記の条件を満たすだけでなく確定申告をしておく必要があります。
譲渡損失後に家を買い換えない場合
買い替えない場合は特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を申請します。この特例を受ける時には次の条件を満たしているか確認しましょう。
- 売却の前日に売却住宅に返済期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 売却価格が住宅ローン残高を下回っていること
- 売却した翌年に確定申告すること
この特例利用時にも確定申告は必須です。申告する時には売却した翌年と繰越控除を受ける年に、損失申告用の書類を用意し申告するようにしましょう。また確定申告書には居住用財産の譲渡損失金額の明細書や、控除対象金額の計算書を添付する必要があります。事前にこれらの書類も用意しておくと、スムーズに申告申請を終えられます。
損益が大きいなら繰越控除で節税を継続する
損益通算をしても、控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰越控除することができます。トータル3年間分は所得にかけられる税金が軽減されるので、ダメージを受けた売主にとって親切な制度といえるでしょう。また国民健康保険に加入しているなら、所得控除額が増えるということは保険料減額のチャンスにも直結しています。総所得額をもとに換算される国民健康保険だからこそ効いてくる制度なので、最大限有効活用しましょう。
不動産売却の確定申告についてさらに詳しく知るにはこちらの記事もおすすめ

不動産売却の健康保険料でよくある疑問
不動産売却時に影響のある保険について詳しくみてきましたが、基本的な知識に加えて取り入れておきたいのはよくある質問から見るパターン別の対処法です。保険料の疑問を相談できる場所から、扶養が外れてしまった時の対処法まで見ていきましょう。
健康保険料の疑問はどこに相談をしたらよい?
通常の健康保険料についての疑問は各自治体に相談できますが、自治体の担当者は不動産売却に絡む健康保険料についてまで把握しているわけではありません。そのような時には次の専門家を頼ることができます。
- 不動産業者
- 税理士
上記のうち、税理士は税金から派生する国の制度についての知識を多く持っている専門家なのでとても頼りになります。もし自分で税理士を見つけるのが難しいと感じるなら、最寄りの自治体に相談してみましょう。自治体によっては税理士の無料相談日が設けられているところもあります。そういった無料サービスもうまく活用しながら、健康保険を賢く節約しましょう。
健康保険の扶養が外れたらどうする?
扶養を外れる場合は、国民健康保険への加入が必要になります。もともと加入していた保険から外れると、自動的に厚生年金も抜ける仕組みになっているところもあります。まずは自身の加入していた保険に厚生年金が含まれていたのかを確認しておきましょう。その後、以下の書類をもって各自治体で加入手続きをすることができます。
- 社会保険資格損失証明書
- 申請者の番号確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
- 本人以外が手続きする場合には委任状
もし扶養から外れてしまっても、被扶養者の条件が整えば被扶養者に戻ることができます。国民健康保険加入後に一定期間が経過した後、所得額が一定して扶養範囲内であると認められるようになったらもう一度扶養加入申請をしてみましょう。
まとめ
不動産を売却することが初めての場合、健康保険料に影響する場合がある事はあまり知られていません。特に国民健康保険に加入している人は保険料が上がる可能性があるので注意が必要です。確定申告をあらかじめしておき、この記事内容で取り上げた各種控除を利用して少しでも保険料増額を抑えられるように対策を講じましょう。
また被扶養者であった場合には、自身の加入している保険に影響があるか事前に確認しておくことが大切です。もし扶養から外れる恐れがある場合には、国民健康保険の加入も検討してみましょう。
これらの対策をとっておくことで得られるメリットは数多くあります。ぜひ記事内容を参考にして保険料に関わるリスクを回避しつつ、利益の多い不動産売却へとつなげましょう。
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