親が認知症でも不動産売却って可能?対策を知って手続きを始めよう!

社会問題・用語解説

「認知症になった親の不動産を売りたいけれども、売却できるのかどうかわからない」と困っていませんか。

基本的に不動産の売却には所有者の意思確認が必要ですが、この記事では認知症の症状がひどくて、本人が売却できそうにないという場合の対策方法や、売却の仕方などを詳しく解説します。

また、親が認知症になる前にできる対策や、認知症の親の不動産売却でよくあるトラブルなども紹介していきます。

不動産売却には所有者の意思確認が必要

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不動産所有者の意思確認ができない場合、売買契約は成立しません。また、認知症の意思能力の有無は、医師によって判断されます。意思確認できない場合にどのような問題が起きるのか、医師はどんな基準で判断しているのかを見ていきましょう。

所有者の意思確認ができない売買契約は無効

所有している不動産の名義が親の場合、本人の意思確認が求められます。そして、自分の行為によりどんな法律的な結果が生じるのか判断できない場合、売買契約を結べません。不動産の売却で同席した司法書士は、名義人の行動・発言などから「意思確認できない」と判断した際、決済を止められます。しかし、認知症の症状が軽度で意思能力があれば、所有者本人によって売却可能です。書類準備や手続きなどは、親を代行しても問題ありません。

意思能力の有無を判断するのは医師

認知症なのか、もし、認知症であるならばどの程度の症状で、本人に意思能力があるのかなどの判断は、医師の診察が必要です。「会話の受け答えが自然」「自分の名前を筆記できる」といった人でも、認知症になっているケースはあります。また、診察を受けた際は、診断書をもらっておくことを忘れないようにしましょう。医師が認知症の進行を診断する際は、以下のポイントが参考になります。

  • これまでにかかった病気
  • 症状は進行しているのか
  • 日常生活に支障をきたすレベルのもの忘れなのか
  • 最初の異変はいつごろ出てきたのか

あわせて、意思能力があると判断された事例と、ないと判断された事例を以下の表でまとめておきますので、参考にしてください。

意思能力があると判断された事例 意思能力がないと判断された事例
  • 他者とのコミュニケーション能力に問題ない
  • 公証役場に赴いたり、 遺言公正証書を作成したりできる
  • 仲介業者へ依頼し、媒介契約を締結している など
  • 簡単な質問でも、まれに会話が成立する状態
  • 自身の名前や生年月日を答えられない
  • 不動産の売却代金が非常に不利な内容であっても、締結した など

すでに認知症なら成年後見制度で不動産売却

親が認知症でも、成年後見制度(せいねんこうけんせいど)によって不動産の売却は可能です。ここでは、成年後見制度の内容や申請に必要な書類などをまとめました。

成年後見制度とはどんな制度か

成年後見制度とは、認知症などを患って判断能力を失った人をサポートできるものです。成年後見制度によって、以下のようなことが行えます。

  • 不動産・貯金などの財産管理
  • 遺産分割の協議
  • 介護施設・サービスに関する契約の締結 など

こうしたサポートをすることによって、不利な契約を結んでしまったり、悪徳商法にひっかかったりするリスクはなくなるでしょう。

成年後見制度には種類がある

認知症の親を保護する成年後見制度には、「法定後見制度」(ほうていこうけんせいど)と「任意後見制度」(にんいこうけんせいど)の2種類あります。「任意後見制度」については、後の章で詳しく紹介します。「法定後見制度」は、認知症の親の代わりに、法律行為などを進める制度ですが、後見、保佐、補助という3種類があり、それぞれ特徴が異なることを認識しておきましょう。

成年後見人の種類 後見 保佐 補助
対象者 常に判断能力が欠けている人 著しく不十分な判断能力の人 不十分な判断能力の人
与えられる代理権 財産関連の法律行為 特定の法律行為 特定の法律行為
取り消しできる行為 日常生活に関連の行為以外 借金や訴訟行為、相続の承認・放棄 など 借金や訴訟行為、相続の承認・放棄 など

成年後見制度を申請するための書類一覧

成年後見制度の手続きには、さまざまな書類が必要です。申請するための書類一覧は以下の通りです。

書類の名称 必要な理由 取得できる場所
戸籍謄本 身分事項を証明するため 役場
住民票 住所や世帯を証明するため 同上
診断書 認知症を証明するため 病院
後見登記されていないことの証明書 成年後見制度を利用していないことを証明するため 法務局

また、次の申立書類も必要です。

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 後見人候補者事情説明書
  • 親族の同意書

これらは、家庭裁判所で取得可能です。

法定後見人になる手順

法定後見人になるための手順は、次の通りです。

  1. 申し立てができる人、および家庭裁判所の場所をチェック
  2. 医師による診断書を取得
  3. 必要書類を集める
  4. 申立書類の作成
  5. 家庭裁判所での面接予約
  6. 家庭裁判所へ申立書類一式を提出
  7. 家庭裁判所で審理がスタート
  8. 提出資料・調査結果に基づき判断が決定される
  9. 後見登記

自身で書類を集めたり、審判を待ったりする時間もあるため、早めに手続きを進めることで、スムーズに法定後見人になれるでしょう。

法定後見人にかかる費用

法定後見人にかかる申請段階で必要な費用は、以下の通りです。

  • 切手代
  • 家庭裁判所に申し立てするときの手数料
  • 戸籍謄本などを取得するための費用

これらを合計すると、10,000円程度です。また、弁護士・司法書士などの専門家を後見人にした場合、家庭裁判所が決めた一定の報酬を支払うことを基本としています。後見人の報酬の詳細については、助成している市区町村もあるため、市区町村に問い合わせてみることをおすすめします。

認知症になる前なら3つの方法で不動産売却の準備

親が認知症になる前であれば、以下の方法で不動産売却の準備をしておきましょう。

  • 生前贈与で不動産の名義を変更する
  • 不動産を家族信託しておく
  • 任意後見制度を利用する

それぞれのメリット・デメリット、手続きについて解説します。

生前贈与で不動産の名義を変更する

親が所有している不動産を亡くなる前に譲り受ける生前贈与は、相続税を抑えるメリットがあります。110万円までは基礎控除となる「暦年課税」が採用されており、110万円以下の贈与であれば、相続対策になるでしょう。また、取り決めた相手から受け取る財産に対して2,500万円まで贈与税が発生しない「相続時精算課税制度」や、夫婦間の場合は2,000万円まで非課税になる「贈与税の配偶者控除の特例」という制度もあります。

さらに、相続と比較した場合、指定した人に不動産を渡せるため、相続後のトラブルも回避できます。遺言で相続を行った場合、遺言の解釈の違いなどによってトラブルが発生する可能性もあるため、生前贈与によって未然にトラブルを防げるでしょう。

こうしたメリット多数の生前贈与であっても、3年以内に贈与者が死亡したケースでは、贈与財産は相続税の課税対象になったり、相続時精算課税制度を利用した際は110万円まで基礎控除となる「暦年課税」が適用されなかったりするデメリットもあります。そんな生前贈与する際の手順は、以下の通りです。

  1. 贈与契約書を作成
  2. 法務局で登記申請

贈与契約書のひな形は、法務局のホームページからダウンロード可能です。弁護士・司法書士などの専門家に相談することで、スムーズに生前贈与を行えます。

不動産を家族信託しておく

家族に財産の管理・処分を行える権限を与えられる「家族信託」も、おすすめの方法です。親が認知症であっても、本人に対して意思確認手続きが行われず、不動産を売却できるメリットがあります。さらに、前の章で紹介した成年後見制度よりも、柔軟に財産管理できるため、相続税対策も行えるでしょう。しかし家族信託は、受託者を決める際にもめるリスクがあったり、節税効果が薄かったりするデメリットもあります。

そんな家族信託を利用する際に必要な手続きは、以下の通りです。

  1. 信託契約
  2. 法務局で登記申請

信託契約では、対象となる不動産や当事者、信託する目的などを契約書に記載します。また、遺言によって家族信託も行え、その手続きは通常の遺言と同じです。さらに弁護士や司法書士などの専門家に依頼して、手続きしてもらうこともできます。

任意後見制度を利用する

任意後見制度は、将来的に判断能力が不十分になったときのために、後見する人と後見事務の内容を、事前の契約によって決めておくものです。後見する人のことを、任意後見人と呼びます。任意後見制度のメリットは、親が自由に任意後見人を選出できたり、任意後見監督人による任意後見人のチェックがあり、仕事ぶりを確認できたりすることです。一方でデメリットは、法定後見制度と同様の取消権がなかったり、任意後見人・任意後見監督人に報酬が必要であったりすることです。

任意後見制度の手続きは、次の通りです。

  1. 任意後見契約を締結
  2. 法務局に登記

認知症の症状がみられるようになった後は、家庭裁判所に申し立てを行い、任意後見監督人が選任されます。

認知症の後見人になった後の不動産売却の手順

認知症の後見人になり、不動産を売却することになったら、以下の手順で進めましょう。

  • 不動産売却を依頼する業者は一括査定で探す
  • 厳選した業者と媒介契約を結ぶ
  • 売却活動をして不動産の引き渡し
  • 不動産売却の翌年に確定申告をする

不動産売却を依頼する業者は一括査定で探す

不動産を売る前に、業者に査定依頼することが一般的です。その際、複数の不動産会社へ一括で依頼できるサイトを利用することをおすすめします。不動産一括査定サイトを利用するメリットは、以下の通りです。

  • 1社ずつ問い合わせする必要がなく、手間がかからない
  • どれぐらいの価格になるのか相場をチェックできる
  • 業者の信頼度や対応も比べられる

サイトに登録している不動産会社が利用料を支払っているため、ユーザーはサービスを無料で利用できることも特徴です。

不動産一括査定について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめします。

不動産一括査定を使い損にしない!メリット・デメリットや活用法を解説
不動産一括査定サイトがおすすめと聞いたけれど、本当にメリットがあるのか気になる方のために、使うメリット・デメリットを解説します。使い損をしないためにも、不動産一括査定サイトの正しい選び方と、メリットを活かす使い方を知っておきましょう。

おすすめの一括査定サイトは「すまいステップ」

■すまいステップはこんな人におすすめ
  • 初めてで不安だから実績のあるエース級の担当者に出会いたい
  • 厳選された優良不動産会社のみに査定を依頼したい
  • 悪徳業者が徹底的に排除された査定サイトを使いたい

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不動産一括査定サイトおすすめ20選比較ランキング【2023年最新】口コミや選び方など解説◆専門家監修記事
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厳選した業者と媒介契約を結ぶ

売却依頼する業者を一括査定で探すだけではなく、担当者の信頼度も見極める必要があります。なぜなら、信頼できない担当者の場合、希望通り売却できない可能性があるからです。売主の要望を無視したり、売却プランを押し付けようとしたりする業者は避けるようにしましょう。しっかりと希望条件をヒアリングしてくれて、売却のサポートをしてくれたり、最大限叶えてくれるプランを提示したりする業者であれば、安心して売却を依頼できます。

業者に仲介を依頼する際は、媒介契約というものを結びます。媒介契約には3種類あり、それぞれ特徴が異なります。

媒介契約の種類 特徴
一般媒介契約
  • 複数の業者と契約を結べる
  • たくさんの人に不動産情報を届けられ、成約の可能性を高められる など
専任媒介契約
  • ひとつの業者としか契約できない
  • 販売状況の報告義務があったり、自分で買主を探せたりするメリットあり など
専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約と基本的な内容は同一
  • 販売状況の報告義務が7日に1回以上 など

どの媒介契約にもメリット・デメリットがありますので、しっかりと考えてから選択するようにしましょう。

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売却活動をして不動産の引き渡し

媒介契約を結んだ後、不動産の売り出し価格を決めます。売り出す価格は、相場や買主による値下げ交渉なども考慮して決定しましょう。購入希望者が価格交渉をおこなってくることも珍しくありません。「最低この価格なら売却しても良い」と思う下限価格を設定しておけば、価格交渉に応じる不動産業者も価格交渉しやすいです。

土地だけではなく家がある場合は、売却活動だけではなく、購入希望者への内覧対応なども行います。土日祝に内覧を希望することが多いため、週末の予定をあけておくとスムーズに売却できるでしょう。購入希望者との条件が折り合った場合、売買契約を結んで、最後に不動産の引き渡しです。

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不動産売却の翌年に確定申告をする

不動産を売って売却益が出た場合、確定申告します。確定申告が必要にもかかわらずしなかった場合、無申告課税がかかってしまいますので注意しましょう。また売却して利益が出なかった場合でも、確定申告することで損を軽減できる制度はあります。

  • 居住用財産を買い替えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

これらを利用すれば、損失した額をその年の給与所得などの所得税から控除できます。特例を受けるためには、適用要件がいくつかありますので、事前にチェックしておきましょう。

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認知症の親の不動産売却でよくあるトラブル

認知症の親の不動産売却でよくあるトラブルは、次の通りです。

  • 後見人になったことで相続で利益相反が起きる
  • 親族なのに後見人になれない
  • 認知症を伏せて不動産売却を進める

トラブルを未然に防止したい人は、参考にしてください。

後見人になったことで相続で利益相反が起きる

後見人になると、一方に利益があり、もう一方が不利益になる「利益相反」に悩むケースも考えられます。例えば、認知症になった母の成年後見人に就任しており、父の相続が発生した場合、母の成年後見人でありながら、共同で亡くなった父の相続人となります。共同相続人同士で誰がどの財産を取得するのか、話し合って合意する必要があり、成年後見人はどちらの利益も図るように行動しなければなりません。こうした利益相反を回避するためには、相続を放棄して、後見人に専念する必要があります。

親族なのに後見人になれない

家庭裁判所によって後見人が選出されますが、被後見人が多額の財産を所有していたり、親族の間で紛争があったりした場合、親族であっても後見人になれない可能性があります。家庭裁判所の判断によって、弁護士などの専門家が後見監督人として付くケースもあるでしょう。

認知症を伏せて不動産売却を進める

認知症であることを伏せて不動売却の手続きを進めてしまうと、裁判にまで発展する恐れがあります。認知症であっても意思能力が否定されるわけではありませんが、裁判所は、意思能力の有無について、医学上の評価や言動、契約の難易度などを総合的に考慮して判断します。意思能力の有無は自分では決められないため、認知症を伏せて不動産売却を進めることは避けましょう。

まとめ

不動産売却には所有者の意思確認が必要で、所有者の意思確認ができない売買契約は無効です。親が所有者で認知症の場合は、判断能力を失った人をサポートできる成年後見制度を利用しましょう。

親が認知症になる前であれば、生前贈与で不動産の名義を変更したり、家族信託しておいたり、任意後見制度を利用したりする方法もあります。親が認知症になったとしても、事前準備をしっかりと行うことでトラブルなく不動産を売却できます。

※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/
https://www.rosenka.nta.go.jp/
https://www.retpc.jp/chosa/reins/
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf


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