「個人事業主は住宅ローンが組めないので、マンションが買えない」などと思いこんでいませんか?安定した月収がある会社員や公務員などと比べて、個人事業主の場合は収入が不安定とみなされ、住宅ローンが組みにくいのは事実です。しかし絶対に住宅ローンが組めないということはありません。
本記事では個人事業主がマンションを購入するメリット・デメリットをはじめ、マンション購入の流れやスムーズに購入するコツを紹介します。これを読めば個人事業主でもマンション購入が不可能ではないことが分かるでしょう。ぜひ参考にしてください。
※株式会社リンクアンドパートナーズによる調査。アンケートモニター提供元:GMOリサーチ株式会社
個人事業主がマンションを購入するメリット
個人事業主がマンションを購入するためにはメリットを知っておくことで、購入したほうが良いと判断しやすくなります。
- マンションを自宅兼事務所にできる
- 自宅兼事務所でかかる費用の事業分が経費になる
- 住宅ローン控除で節税できる
自宅と事務所をそれぞれ別の場所にしている場合よりも、マンションを購入して自宅と事務所を一緒にしたほうがメリットがあります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
マンションを自宅兼事務所にできる
購入したマンションを自宅兼事務所にすることができます。
自宅と事務所を別々に借りていた場合は、マンションを自宅兼事務所にすれば、マンションのローン返済だけで済むので、これまで支払ってきた2ヶ所分の家賃分の費用が浮きます。また、通勤時間が不要になるので時間に余裕ができます。満員電車や道路の渋滞などの通勤ストレスからも開放され、できた時間を仕事や家族のため、あるいは余暇に使えます。
ただし、マンションによっては管理規約で住居専用(事務所利用不可)と決めている場合もあるので、事前によく確認しましょう。
自宅兼事務所でかかる費用の事業分が経費になる
個人事業主は確定申告のときに事業費を経費として計上ができます。購入したマンションを自宅兼事務所とした場合でも、同じように事業費の計上ができるので、購入したマンションのローンの支払いも事業費として計上できます。他にも次のような費目が事業費の対象になります。
- 水道光熱費
- 固定資産税
- 火災保険料
- 修繕費など
ただし、全額が事業費として認められるというわけではなく、合理的な考え方に基づいて、事業費分と生活費分を一定の基準で分ける必要があります(家事按分)。
住宅ローン控除で節税できる
住宅ローンを利用してマンションを購入すると、住宅ローン控除が受けられ、所得税と場合によっては住民税が安くなります。住宅ローン控除は、正式には住宅借入金等特別控除といい、一般には住宅ローン減税とも呼ばれます。
住宅ローンを利用してマイホームの取得等をした場合に、年末のローン残高の1%、もしくは40万円のどちらか少ない方が、最大10年間(2019年10月1日から2020年12月31日までの入居の場合は最大13年)控除されるという制度です。
この制度が利用できる条件は次の通りです。これらのすべてを満たす必要があります。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下
- 控除を受ける人は引き渡しから6ヶ月以内に入居
- 対象の住居の床面積は登記簿上で50平米以上
- 床面積の1/2は自己居住用
- 居住した年と前後2年ずつに他の税制上の特例を受けていないこと
マンションの購入金額は大きな金額なので、節税効果は非常に大きいです。住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要なので、忘れないように申告をしましょう。
住宅ローン控除について詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめですのでご覧になってください。

個人事業主がマンションを購入するデメリット
一方、個人事業主がマンションを購入するデメリットはどのようなことがあるのでしょうか。
- ローンの審査が厳しい
- 戸建てよりも維持費がかかる
- 住み替えは気軽にできない
個人事業主として購入することや、戸建てとマンションを比べたときにデメリットを感じます。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
不安定な収入でローンの審査が厳しい
個人事業主が住宅ローンを利用する場合、公務員や会社員などの給与所得者と比べて、審査が厳しい傾向にあります。
住宅ローンの審査において、金融機関が重視するのがその人に返済能力があるかどうかであり、具体的には安定した収入があるかをチェックします。給与所得者は毎月給与という形で安定した収入を得ているので、審査が通りやすい傾向がありますが、個人事業主は給与所得者よりも収入が不安定なため、審査は厳しく行われることが多いです。
個人事業主の場合は、過去3年のなかで1番低い年の所得を収入とみなし、次の2点を重視して審査をするといわれています。
- 事業を複数年継続しているか
- 過去3年の所得が平均して黒字であるか
住宅ローンの審査のポイントについて詳しく解説したこちらの記事も、おすすめですのでご覧になってください。

長期的に戸建ての購入より維持費の負担が重い
長期的な視点で見ると、維持費は戸建てよりもマンションのほうがかかります。マンションと戸建ての維持費を比較してみましょう。
費用項目 | マンション | 戸建て |
固定資産税・都市計画税 | 必要 | 必要 |
管理費(管理組合費) | 必要 | ー |
修繕積立金 | 必要 | 個人的な積み立ては必要 |
駐車場代 | 場合によっては必要 | 場合によっては必要 |
火災保険料・地震保険料 | 必要 | 必要 |
このようにほとんどの費目については、マンションも戸建ても変わりませんが、戸建ては管理費や修繕積立金がかからないため、それを必要とするマンションのほうが20年、30年という長いスパンで考えると、維持費が高くなる傾向があります。
気軽に住み替えができなくなる
持ち家を購入してしまうと、気軽に住み替えができなくなります。
借家の場合は、契約期間が終わるか、3ヶ月前に貸主に解約を通告すれば、新居を見つけて住み替えができます。
しかし、マンションを購入してしまうと、売却益がローン残高を上回らなければ、手持ちの資金でローンを返済しなければいけません。売却するまでに3~6ヶ月はかかり、手間も費用もかかります。賃貸のように気軽に新居を見つけて引っ越し、というわけにはいきません。
また、在宅で働ける人は自由に住む場所を決められますが、働く場所が限定される職種の人は、住む場所にも制約があるため、それだけ選択の幅が狭くなります。
住み替えにかかる税金について詳しく解説したこちらの記事もおすすめですので、ご覧になってください。

個人事業主がローンでマンションを購入する流れ
次に実際に住宅ローンを利用して、マンションを購入する流れについて説明していきます。
- 購入するマンションの条件を決める
- ネットや不動産会社で物件を探す
- 希望のマンションの購入申し込み
- 金融機関でローンの事前審査を受ける
- 重要事項の説明に納得できたら売買契約を結ぶ
- スケジュール調整をして引き渡し
- マンションを購入した次の年に確定申告をする
あらかじめ流れを知っておくと、スムーズに購入をすすめることができます。ひとつずつ見てきましょう。
STEP1:購入するマンションの条件を決める
まずは購入するマンションの条件について決めましょう。
住むエリアや購入するマンションの予算、マンションの広さはどの程度必要であるかその他にも、必要な設備やマンションの規模など様々な条件があげられます。将来の理想の暮らし・仕事環境を確認し、その理想を叶えられるような条件の整理が必要です。
譲れない条件とそうでない条件は人によってそれぞれ違いますので、条件を整理しどのようなマンションを購入したいのかを決めていきましょう。
STEP2:ネットや不動産会社で物件を探す
条件を決めた後は物件探しを始めましょう。
探し方にはいくつか方法がありますが、本記事でおすすめするのが不動産のポータルサイトでの物件探しです。不動産ポータルサイトは情報量や物件数が豊富で、希望の条件をチェックするだけで物件を絞り込むことができます。
不動産会社にはネット上で公開されていない、いわゆる未公開物件という物件を抱えていることもあります。未公開物件は売主や不動産会社の事情で公開されていません。不動産会社に直接足を運ぶことで、新たな物件に出会えることもあります。
新築マンションの物件を探している場合はモデルルームの見学をしてみてください。販売前や販売中の物件の多くはモデルルームを用意していますので、実際の室内や設備を見てみましょう。
STEP3:希望のマンションの購入申し込み
条件の合うマンションが見つかったら購入申し込みをします。
申し込み時には証拠金を支払いますが、新築物件の場合は販売会社へ、中古物件の場合は仲介する不動産会社へ支払います。証拠金は購入の意志があるということを示すためのもので、数万から10万円程度を支払い、他の人に買われてしまうのを防ぐ性質のお金です。
STEP4:金融機関でローンの事前審査を受ける
住宅ローンの融資を受ける場合は金融機関で審査を受けます。
審査には事前審査と本審査があります。事前審査は住宅ローンを申し込む人が返済能力があるのか、申し込む人のクレジットカード・借入状況などの信用情報を短期間で審査するものです。この事前審査は本審査を行う前に行うもので、審査は即日か遅くとも1週間後に結果はわかります。事前審査に問題がなければ売買契約を結び、住宅ローン契約時に本審査を行います。
事前審査を行わずに売買契約を結んだ場合、万一本審査が通らないと、売買自体がキャンセルになってしまいます。事前審査を行うことにより買主・売主の双方が安心して売買ができるのです。
STEP5:重要事項の説明に納得できたら売買契約を結ぶ
次に不動産会社が買主へ重要事項について説明をし、それに納得できたら、売買契約を結びます。
重要事項説明とは宅地建物取引業法で定められていて、契約前に宅地建物取引士(宅建士)が必ず行わなければいけません。その説明は不動産取引において知識や経験が不足しがちな、買主を保護するために行うものです。
説明の際には土地や建物に関する内容や取引条件など、契約前に知っておかなければならないことについて記載された重要事項説明書を交付してもらいます。
説明に納得したあとは売買契約の締結を行います。締結時には購入価格の5%から10%程度の手付金を支払います。手付金は購入代金の一部として、現金で支払うのが一般的です。
STEP6:スケジュール調整をして引き渡し
売買契約を締結した後は、住宅ローンの正式申し込み、登記手続きの準備を進めます。
住宅ローンの本審査は、結果が出るまでには最大1ヶ月程度かかります。審査にパスしたら金融会社と金銭消費貸借契約(住宅ローン契約)を締結します。
それから売主と代金の決済・引き渡しのスケジュール調整をします。引き渡し当日は、金融機関の窓口で一同が会し、住宅ローンの融資実行と残代金の支払いをほぼ同時に行います。
それが終わったら登記の手続きをします。住宅ローンを利用する場合は、所有権の保存または移転登記と抵当権設定登記をあわせて、金融機関が指定する司法書士に依頼するのが一般的です。
STEP7:マンションを購入した次の年に確定申告をする
個人事業主の人は毎年必ず事業所得について確定申告をしていると思います。マンションを購入した場合は、購入の翌年から確定申告の方法がすこし変わります。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)が受けられる場合は、控除が受けられる間は毎回、これまで提出していた書類とあわせて、次の書類を提出する必要があります。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローンの年末残高証明書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)(初回のみ)
- 不動産売買契約書の写し(初回のみ)
- 住民票の写し(初回のみ)
また購入したマンションを自宅兼事務所とした場合は、前にも述べたように光熱水費などを自宅分と事業分に分けて事業分を計上しましょう。マンション購入費についても、建物購入費の事業分は減価償却費として計上できます。不明な点は早めに所轄の税務署や税理士に相談しましょう。
確定申告に必要な登記事項証明書について、詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。

個人事業主がスムーズにマンションを購入するコツ
個人事業主に限らず、誰でもマンション購入するときはスムーズに行いたいと思うものです。コツを知っておくことで、つまずくことなく購入することができるでしょう。
- 不動産会社は営業担当者の対応まで見て選ぶ
- ローンの審査に不安があるならフラット35を利用する
- 必要書類を早めに用意する
ひとつずつ見ていきましょう。
不動産会社は営業担当者の対応も見て選ぶ
最初に抑えておきたいコツは、不動産会社の選び方です。金額や条件はもちろんですが、営業担当者の対応や相性も大切です。
担当者が不安や疑問をしっかりと聞いてくれ、誠実に答えてくれるか観察しましょう。会社の都合を押し付けたりせず、不都合なことも教えてくれる人であれば、信頼できる営業担当者であるといえます。
マンション購入後にトラブルが起こることもあります。そういった場合でもきちんとサポートをしてくれる営業担当者のいる不動産会社を選びましょう。
ローンの審査に不安があるならフラット35を利用
ローン審査で落ちるのが不安であれば、フラット35の利用も検討してみましょう。
フラット35とは、政府系金融機関の住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している、住宅購入のための住宅ローン商品です。最大35年まで借入可能で、全期間固定金利型のみを取り扱っています。
なぜ個人事業主におすすめするのかというと、フラット35は直近1年分の確定申告書で収入を判定しているためです。前述の通り3年分の収入が安定していることが必要な民間金融機関よりも、審査の基準が緩やかで、個人事業主でも借り入れしやすいのが特徴です。
必要書類は早めに用意する
スムーズに購入の手続きを踏むために、必要書類を早めに準備しておきましょう。購入手続きの流れに沿って下記の表にまとめたので参考にしてください。
書類が必要となるタイミング | 必要な書類 |
購入申し込み時 |
|
住宅ローンの事前審査 |
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売買契約締結時 |
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住宅ローンの申し込み時 |
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住宅ローンの契約時 |
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引き渡しと決済 |
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住民票の写しと印鑑登録証明書は、いま住んでいる市区町村の役所・役場で入手できます。その都度取りにいくのが面倒であれば、あらかじめ必要な枚数を入手すると効率的です。一般的には3ヶ月以内であれば有効とされています。
個人事業主がマンションを購入する注意点
最後に個人事業主がマンションを購入する時には注意したいポイントを3つ紹介します。
- ローンの返済が遅れそうなときは早めに相談する
- 確定申告は実情に合わせる
- 事業のための借入金も借金と判断される
個人事業主の場合は、給与所得者がマンションを購入するときよりも、注意しておかなければいけない点について知っておきましょう。
ローンの返済が遅れそうなときは早めに相談する
資金繰りが苦しくなり、毎月のローン返済が難しくなった場合は、早めに金融機関に相談しましょう。
収入の減少が一時的な場合は、返済期間の猶予をしてもらえたり、返済計画を見直して月々の返済額を減らしてもらえたりすることがあります(ただしその分返済期間は延びます)。せっかく購入したマンションを手放すことにならないように早めに手を打つことが大切です。
住宅ローンの返済を滞らせたままにすると、金融機関から督促状が届くようになります。それでも返済がされないと、マンションが競売にかけられたり、任意売却をせざるを得なくなり、仕事も家庭生活も崩壊してしまいます。そうなる前に誠意をもって相談しましょう。
確定申告は実情に合わせる
会社員や公務員などの給与所得者と異なり、個人事業主は事業にかかった経費を計上して、かかる税金の額を減らすことができます。この経費の計上の仕方が実情に合わないとみなされると、税務署の税務調査が入り、指摘を受ける恐れがあります。場合によっては、脱税とみなされ追徴課税などを受けることもあります。
特に購入したマンションを自宅兼事務所にしたときに、光熱水費などの維持費の事業分の割合が高いと、税務署から目をつけられる可能性が高くなります。家事按分は自宅スペースと事業スペースの広さや、使用時間で按分するなど、実情に合った計算方法で算出し、きちんと説明ができるようにしておきましょう。
事業のための借入金も借金と判断される
個人事業主の住宅ローンの審査を行うときには、事業での借入金も借金扱いになります。事業が順調であったとしても、借入金がある場合は、その金額に応じて住宅ローンの借入金額が減らされたり、審査が厳しい結果に終わることもあります。
住宅ローン審査を申し込む前に事業用借入金はできるだけ返済をし、借入金額を減らしてから申し込むのも一つの手です。またできるだけ自己資金を用意して、住宅ローンの借入申込額を減らすのも良いでしょう。
ただ、仕事が立ち行かなくならならないように、また生活が苦しくならないように、住まいとお金に詳しいファイナンシャル・プランナー(FP)に相談することをおすすめします。
まとめ
個人事業主でも安定した収入があることが確定申告により証明できれば、住宅ローンを利用してマンションの購入ができることがわかっていただけたと思います。
個人事業主がマンションを購入する場合、収入の不安定性から住宅ローン審査が厳しいなどのデメリットがある反面、購入するマンションを自宅兼事務所にでき、住宅ローン控除を受けられたり、事務所分のスペースは減価償却費として経費に計上できるなどの大きなメリットもあります。
本記事をぜひ参考にしていただき、マンション購入のデザインを描いて、購入検討の第一歩を踏み出してください。
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