これまで住んでいた家を売りたいと思った時に、多くの人はまず「どれぐらい高く売れるのか?」を考えるのではないでしょうか。しかし、たとえ想定以上の価格で戸建ての不動産が売却できたとしても、売却金額がそのまま手元に残るわけではありません。
仲介してもらう不動産会社に支払う仲介手数料をはじめ、譲渡所得税や印紙税など、戸建てやマンションの売却には様々な費用がかかってきます。不動産を売るために必要な支払いとともに、費用を抑えるための方法を知っておかなければ、予想外の出費に悩まされるかもしれません。
そこで本記事では、戸建てをはじめとした不動産の売却にかかる費用のうち、特に重要な仲介手数料や税金について詳しく解説するとともに、できるだけ費用を抑えるためのポイントを紹介します。特に、戸建ての売却を考えている方は参考にしてください。
戸建ての売却にかかる費用
ここでは、戸建ての売却にかかる主な費用について解説していきます。
不動産会社に支払う仲介手数料
まず、必要となるのが、家を売るときに仲介を担当してくれる不動産会社に支払う仲介手数料です。これは宅地建物取引業法という法律で定められている不動産会社の正式な報酬で、基本的に契約が成約した際に支払います。
通常、戸建てやマンションの売買は、不動産会社が仲介し、売主に代わって物件を宣伝して買主を見つけます。具体的には、インターネット上の物件情報サイトに当該物件を掲載する、チラシのポスティング、購入を検討している人のための物件見学会を開くなどの営業活動です。
仲介手数料は成功報酬となるので、買主が見つかって不動産売買契約が結ばれるまで、仲介手数料を支払う必要はありません。多くの不動産会社では、売買契約が締結された時点で仲介手数料の半分、不動産の引き渡しが完了した時点でもう半分を支払うことになっているようです。
ただし、仲介手数料には、特別な物件宣伝費や出張費などは含まれていないので注意しましょう。通常の業務範囲を超える出張などを売主から依頼した場合は、別途費用を請求されるケースもあります。
たとえば、売主の要望で遠くの購入検討者のもとに説明に行った場合などは、手数料とは別に出張費が請求されることが多いです。また、不動産業者が日常的に行っている宣伝以外の方法を依頼した場合も別途料金が発生する場合があります。
仲介手数料は、仲介する不動産会社によって異なる場合があります。理想に見合った不動産会社を選ぶには、一括査定サイトを利用しましょう
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売買契約書にかかる印紙税
不動産の売買契約書にかかる印紙税も、売却時に負担しなければならない費用となります。印紙税は 売買契約書に収入印紙を貼って納める税金であり、契約書に記載されている取引金額に応じた額の収入印紙を購入しなければなりません。現在、印紙税額は、不動産の売買価格によって次のように定められています(2022年(令和4年)3月31日までの軽減税率措置による税額)。
売買金額 | 印紙税額 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
このように、不動産の売却価格が高くなるほど、必要な収入印紙代も高くなります。一般的に、収入印紙は売買契約を結んだときに貼付することになりますが、仲介業者である不動産会社が契約書を作成するために立て替えて、仲介手数料などの決済時にまとめて支払うことも多いです。
なお、売買契約書は売主と買主の双方が保管するために2通必要となるので、印紙税も2通分用意しなければなりません。売主・買主がそれぞれ1通分ずつ平等に負担するのが一般的です。
抵当権を抹消する場合の登記費用
不動産を売却する場合、所有権の移転登記も必要になりますが、所有権移転登記の費用に関しては、一般的に買主が負担します。
ただし、当該不動産に抵当権がある場合には、売主側が抵抗権の抹消手続きの費用を負担しなければなりません。たとえば、住宅ローンを組んで購入した不動産の場合、売主は売却前にローンを完済して抵当権抹消登記をする必要があります。
抵当権の抹消にかかる費用とは、登記の抹消手続きを依頼する司法書士への報酬と抵当権抹消登記の登録免許税です。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。また、司法書士への報酬金額は物件や状況によって変わってきますが、通常は1~2万円程度を見込んでおけば問題ありません。
測量にかかる費用
売却した住宅が古い場合や、購入当初とは周囲の状況がかなり変わっている場合、登記簿に記載されている情報と実際の物件との間に乖離が起きている可能性があります。
そのまま売却してしまうと問題に発展するケースがあるので、売却前に測量をやり直す必要があります。特に隣の土地との境界があいまいな場合は注意しましょう。
土地の測量や隣接する土地との境界の確認は土地家屋調査士に依頼する必要があり、だいたい35~45万円ほどの手数料を支払わなければなりません。土地の状況や調査の内容によって費用は変動するので、あくまでも目安として覚えておいてください。
なお、隣地との境界を定める場合、隣家の住人など利害関係者の立ち合いが必要となるので注意しましょう。後々トラブルにならないように、しっかり話を通しておく必要があります。
売却益にかかる譲渡所得税
戸建てやマンションなどの建物や土地を売却して得た利益は譲渡所得となり、その額に応じて譲渡所得税(住民税と所得税)を納税しなければなりません。譲渡所得は不動産の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算されます。
- 取得費用:不動産(建物・土地)の取得にかかった費用であり、購入代金や設備費・改良費などの合計金額です。建物については、購入額から減価償却相当額を差し引いたものになります。
- 譲渡費用:不動産を売却するためにかかった費用で、仲介手数料や印紙代、登記費用などが含まれます。
これらの項目を売却金額から差し引いて課税額が決定されますが、当然、譲渡所得がゼロ(あるいはマイナス)になってしまう場合は課税されません。
戸建ての売却費用を計算する方法
次に、売却費用の計算方法を具体的にみていきましょう。
仲介手数料の計算方法
不動産会社に支払う仲介手数料は、物件の売却金額によって変わってきます。具体的な金額については、各々の不動産会社によって若干の違いはありますが、法律では次のように仲介手数料の上限額が定められているので、不動産会社はそれ以上の金額を請求することはできません。
売買金額 | 手数料(上限) |
売却金額が200万円以下の部分 | 売却価格×5%+消費税 |
売却金額が200万円超400万円以下の部分 | 売却価格×4%+消費税 |
売却金額が400万円超の部分 | 売却価格×3%+消費税 |
たとえば、自宅を900万円で売却した場合の仲介手数料は
となります。売却金額が400万円以上の場合は次の速算式が利用できます。
上記例に当てはめてみると
となり、より簡単に計算が可能です。
抵当権抹消登記の登録免許税の計算方法
抵当権の抹消登記にかかる登録免許税は不動産1つにつき1,000円です。戸建てを売却により抵当権を抹消する場合は、建物と土地のどちらにも課税されることになるため、2,000円かかることになります。
ちなみに、マンションの場合も建物部分と敷地となっている土地部分の両方に課税されることになります。登記上、敷地部分の土地が複数の土地に分かれている場合は、その個数分登録免許税が増えるので注意しましょう。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得の計算式は次のようになります。
譲渡所得に所有期間に応じた税率をかけると譲渡所得税が算出できます。税率は、物件の所有期間に応じて次のように変わってくるので注意してください。
- ・物件(土地・建物)の所有期間が5年以下の場合:短期譲渡所得として39.63%(※所属税(復興特別所得税を含む):30.63%、住民税:9%)
- 物件(土地・建物)の所有期間が5年超の場合:長期譲渡所得として20.315%(※所得税(復興特別所得税を含む):15.315%、住民税:5%)
戸建ての売却にかかる費用を抑えるには?
このように、戸建ての売却には諸々の費用がかかりますが、工夫次第で負担を軽減することが可能です。次に、戸建て売却の際にかかる費用を抑えるためのポイントを説明します。
仲介手数料の値引きを交渉する
不動産会社に支払う仲介手数料は、上限は法律で決まっているものの、特に下限は定められていません。つまり、上限を超えない限り、不動産会社は自らの裁量によって自由に仲介手数料を決められるわけです。
よって、不動産会社に仲介手数料の値引き交渉をすることで費用を安く抑えられる可能性があります。たとえば、1社にしか仲介を依頼しない「専属専任媒介契約」を提示するなど、不動産会社が値引きをしてもよいと思えるような条件を提示しながら交渉するとよいでしょう。
ただし、闇雲に値引き交渉をしてしまうと、不動産会社は利益にならないと考えて販売に力を入れなくなる可能性もあります。一方的にこちらの要望を告げるのではなく、相手方が落としどころを決めやすい条件を提示することが重要です。
たとえば、現在住んでいるマイホームを売却して新しい家を購入したいと考えている場合、新しい物件の購入を同じ不動産会社に依頼することを条件に、売却仲介手数料の値引きを交渉するといった方法があります。
控除や特例を利用して税金を安くする
不動産を売却すると譲渡所得税がかかりますが、一定の条件を満たすことで税金負担を軽減できる特別控除や特例があります。上手く利用すれば支払う税金を安く抑えることが可能です。
3,000万円特別控除
すでに説明したように、売却する物件を所有していた期間によって譲渡所得の課税率は変わってきますが、マイホームを売却した場合には特別な控除措置があり、所有期間に関係なく譲渡所得から1人につき3,000万円を差し引くことができます。
つまり、自宅の売却益から取得費と譲渡費用を差し引いた額が3,000万円以下だった場合は、課税されないということです。マイホームの売却で3,000万円以上の所得を得られるケースは稀ですから、多くの人は不動産を売却しても譲渡所属税が発生することはありません。
自宅以外の物件を売却する場合にはこの特例は適用されませんが、これまで住んでいたマイホームを売る場合には、譲渡所得の3,000万円特別控除が可能なので覚えておきましょう。
10年超所有軽減税率の特例
所有期間が5年超の物件の譲渡所得税率は20.315%ですが、10年以上所有していたマイホームを売却した場合、特例によって譲渡所得のうち6,000万円以下部分の税率を14.21%に軽減できます。この特例は上述の3,000万円特別控除とも併用できるので、さらに税金負担を軽減することが可能です。
ただし、その場合は、マイホームの買換え特例(特定居住用財産の買換え特例)が利用できなくなります。
この「特定居住用財産の買換え特例」は、マイホームを買換えるときに、譲渡所属税(所得税・住民税)の課税を先送りできる、つまり、今住んでいる家を売って新居を購入する場合、将来的にその新居を売るときまでは税金を支払う必要がないという特例です。
しかし、要件に当てはまる人が少ない制度なので、10年超所有軽減税率の特例を利用する際に改めてチェックするとよいでしょう。
戸建ての売却費用に関するQ&A
最後に戸建ての売却費用に関して、よくある疑問に回答します。
仲介手数料に税金はかかるのか?
不動産会社に支払う仲介手数料にも税金(消費税)がかかります。たとえば不動産を150万円で売却した場合、仲介手数料の上限は(150万円×5%=75,000円)と計算されますが、ここに10%の消費税が加算されるので、支払う金額は82,500円(=75000円+7500円)となります。
ただし、個人間の売買による不動産の売却価格には消費税は含まれないので注意してください。
戻ってくる費用は?
不動産を売却すると諸々の費用がかかりますが、逆に支払った費用が戻ってくるケースがあるので覚えておきましょう。
固定資産税・都市計画税の清算金
どちらも年の初め(1月1日)に不動産所有者に対して課税されるものです。つまり、不動産を売却した年の固定資産税と都市計画税は、すべて売主が負担していることになるため、当該不動産を売却した場合は日割り計算で買主に対して清算金を請求できます。
なお、売主と買主の負担分については、日割り計算の起算日によって変わってきます。主に関東県では1日1日ですが、関西圏では4月1日を起算日としていることが多いようです。
住宅ローン保証料
住宅ローンの借入時、返済が遅滞した場合に備えて保証会社に保証料を支払います。住宅の売却にあたり、ローン残額を繰り上げ返済した場合は、その期間分の保証料を返却してもらえます。
ただし、保証料の払戻額は少なく、多くの場合、半分も戻ってこないといわれています。具体的な額については、ローンを利用する金融機関で確認しておきましょう。
火災保険料の払戻金
火災保険の保険料を一括で支払っていた場合、解約分の保険料の払い戻しが請求できます。たとえば、10年契約で火災保険料を一括払いしていたところ、5年で当該不動産を売却した場合は、保険を解約することになるので、残りの5年分の保険料の返戻金を受けられるわけです。
ただし、不動産を売却すれば自動敵に解約されるわけではないため、自ら保険会社に申し出て手続きをする必要があります。
管理費や修繕積立金などの清算金
不動産の管理費や修繕積立金などの支払いは、翌月分(あるいは数か月分)の前払いが基本となっています。そのため、当該不動産の売却によって前倒しで負担していた場合の管理費や修繕積立金などは、日割り計算で買主に清算してもらうことができます。
ただし、管理組合のあるマンションとは違い、戸建ての場合は管理費や修繕積立金などを負担する機会はほとんどないでしょう。
まとめ
戸建ての売却にかかる費用と計算方法、そして、できるだけ費用を安く抑えるポイントについて解説しました。各種税金の計算は少し複雑ですが、不動産の売却費用の多くは不動産会社に支払う仲介手数料ですから、まずは、手数料がいくらかかるのかを把握することが重要です。
また、本記事で説明した以外にも、廃棄物の処分にかかる費用やハウスクリーニング費など、必要に応じてさまざまな費用がかかる可能性もあります。マイホームを売却する場合は、引っ越しにかかる費用も計算に入れなくてはいけません。
どれぐらいの費用がかかるのか具体的に計算したうえで、しっかりとした資金計画を立てるようにしましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
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