土地の売却により利益を得た場合は、譲渡所得に住民税と所得税が課せられるので、土地の売却で得た金額から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得を算出する必要があります。
「土地を買ってから長い年数が経過している」「被相続人が死亡してしまった土地のため詳しい購入費用がわからない」などの特殊な理由により取得費不明となってしまった場合は、どうやって税金を算出すればよいのでしょうか?結論から言って、取得費が正確にわからなくても課税譲渡所得金額の算出は可能です。
そこで本記事では、取得費を算出するのが無理なときの譲渡所得税の算出方法や、土地を売却するときの確定申告について解説します。取得費とは何か、土地売るときの流れについてもわかりやすく説明しているので、土地売却を円滑に進めるための知識としてご活用ください。
不動産一括査定サイト利用者が選んだおすすめサービスTOP3
この記事を読まずに、先におすすめの査定サービスを知りたい人におすすめなのが、以下の3サービスです。 マイナビ編集部で実施した独自アンケート結果による「おすすめの不動産一括査定サービスTOP3」です。実際の利用者の声と編集部の知見が合わさってできたランキングですので、ぜひ参考にしてください。※クラウドワークス、クロスマーケティング調べ(2021/4/9~2021/4/13実施 回答数380人)
取得費に関する基礎知識
土地の売却時には取得費という言葉を耳にする機会が多いと思いますが、どんな費用のことを示しているのでしょうか。土地売却時の取得費に関する基礎知識を見ていきましょう。
不動産を入手する際にかかった費用が取得費
取得費を正確に割り出すためには、実額取得費と概算取得費の違いを把握しておく必要があります。まずは、それぞれの特徴や算出方法を確認しましょう。
実額取得費
実額取得費とは、土地を購入するために実際にかかった費用のことです。土地を取得するために必要になった諸経費を購入費用に加えた合計額を実額取得費として算出します。
土地に住宅がある場合は、経年劣化により価値が下がっていくため、住宅の購入にかかった費用から減価償却費を差し引いて算出しなければなりません。土地を購入したときに売主から受け取っているはずの以下の書類で実額取得費がいくらなのかを確認することが可能です。
- 売買契約書
- 領収書
- 請求書
土地の購入にかかった費用が記載された書類を紛失している場合は、実額取得費を算出するのが不可能になってしまうので大事に保管しておくことをおすすめします。
概算取得費
土地の売却で得た売却代金の5%が概算取得費です。概算取得費は土地の実額取得費が不明の場合に用いられます。実額取得費よりも概算取得費の方が金額が大きい場合は、概算取得費を選択して税金の算出に使うことも可能です。
売買契約書の紛失により実額取得費がわからなくなってしまった場合でも、概算取得費を用いて確定申告を進めることができます。仮に実額取得費が概算取得費よりも大きい場合は税金を多く払うことになってしまうので注意が必要です。
土地と建物の取得費は分けて考える
土地や建物の取得費を算出する方法は性質が異なります。土地の取得費は購入代金に諸経費を加えるだけで算出することができますが、建物の場合は購入代金から減価償却費を差し引く複雑な方法で算出しなければなりません。混同しないように、土地と建物の取得費は基本分けて考えるのが鉄則です。
減価償却の求め方は、建物の構造や事業用、非事業用かによっても異なります。マンションや建売の新築物件を購入した場合は、建物にだけ消費税が加算されているので、建物部分にかかる消費税から逆算して購入代金を算出することが可能です。
不動産売却によって課税される税金の算出のために必要
土地の売却時になぜ取得費を算出しなければならないのか、疑問を感じる方も多いと思います。土地を売却するときに取得費を割り出すのは、土地を売却したときに課せられる税金を算出するために必要だからです。
土地の売却にかかる税金は、譲渡所得に対して所有期間に応じた税率をかけて算出することができます。譲渡所得は以下の算出方法で求めることが可能です。
譲渡費用は土地を売るためにかかった費用のことです。取得費は譲渡所得を割り出すために必要なので、土地を売却する際は取得費を把握しておかなければならないことを覚えておきましょう。
取得費に含まれるもの
個人が土地を購入する場合は、購入費用や諸経費を取得費に含めることができます。土地の取得費に含めることができる費用は以下の通りです。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 不動産取得税
- 特別土地保有税
- 登記費用
- リフォーム費用
- 造成費用
- 建築費用
- 解体費用
- 測量費
- 設備費用
- 借り入れ資金の利子
- 訴訟費用
土地を購入するためにローンを組んだ場合は、土地の使用を開始するまでの間に支払った利子を取得費に含めることができます。購入した土地の所有権について訴訟を起こして争いを解決した場合は、訴訟費用を取得費として扱うことが可能です。
取得費に含まれないもの
法人の場合は、費用によって取得費に含めることができない費用があります。土地の取得費に含めることができない費用は、以下の通りです。
- 事業所得等の必要経費
- 業務用に供される資産の取得に際して課された税金
- 遺産分割にかかった訴訟費用
個人の場合は不動産取得税などの土地の購入にかかる税金を取得費に含めることができましたが、法人の場合は土地の購入にかかった税金を取得費にすることは一切できません。また、個人の場合でも遺産分割のためにかかった訴訟費用は取得費にすることができないので留意してください。
取得費が不明な場合、税金の算出はどうなる?
土地の取得費が不明な場合、税金の算出はどうなるのでしょうか。取得費がわからない場合の税金の算出方法を説明していきます。
概算取得費から税金を算出する
土地を購入した際の売買契約書を紛失してしまった場合など、購入費用を証明できないときは、実額取得費を算出することができなくなります。実額取得費が不明なケースでは、土地の売却で得た収入金額の5%相当額である概算取得費を土地の取得費と考えて税金を算出できることを覚えておきましょう。概算取得費の算出方法は以下の通りです。
土地の売却価格が1,000万円の場合は50万円、2,000万円の場合は100万円、3,000万円の場合は150万円を取得費にできます。購入費用がわからない相続した土地でも、概算取得費として売却価格の5%を取得費にすることが可能です。
取得時期によっては概算取得費ではない計算方法も可能
概算取得費による税金の計算が強制されるのは、昭和27年12月31日以前に土地の購入した場合のみです。土地を取得したのが昭和28年以降の場合は、概算取得費以外の計算方法も選択することができます。
たとえば日本不動産研究所が世間に発表している市街地価格数を用いて取得費を求めれば、概算取得費よりも合理的に取得費を計算することが可能です。
土地が市街地の場合は、取得年によって概算取得費を選択しない方が税金を安く抑える事ができます。概算取得費を用いた計算方法と概算取得費以外の計算方法で、どちらが節税できるのかを試算してみましょう。
減価償却費の算出方法
売却した土地にマイホームなどの建物がある場合は、建物の購入代金から減価償却費を差し引いて取得費を算出する必要があります。建物の減価償却費の算出方法は、以下の通りです。
建物の購入代金に諸経費を足した合計金額から、減価償却費を引いた金額が取得費になります。
減価償却費については以下の記事でも解説しているので、詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

課税譲渡所得の算出方法
土地の取得費がわかったら、土地の売却費用から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。譲渡所得から課税譲渡所得を算出する方法は、以下の通りです。
居住用財産を売ったときは特例を適用させることができるので、譲渡所得から特別控除として差し引くことが可能です。課税譲渡所得に所有期間に応じた税率を乗じることで、土地の売却で発生する税金を算出することができます。
不動産売却に発生する税金について改めて復習したい方は以下の記事もご覧ください。

土地活用の大まかな流れをおさらい
土地の取得費が不明な場合の税金の計算方法が理解できたので、土地の売却の大まかな流れをおさらいしておきましょう。土地売却は、基本的に以下の流れで進めていきます。
- 複数の不動産会社へ査定に出す
- 売り出し価格を決めて広告を作成してもらう
- 購入希望者による見学
- 買主が見つかったら契約
- 決済と引き渡し
土地売却の流れを把握して、売却を円滑に進めましょう。
1.複数の不動産業者へ査定に出す
土地を売却するときは、まず最初に不動産会社に査定を依頼します。ポイントはなるべく複数の不動産会社に査定を依頼することです。複数の査定結果を比較すれば土地のおおよその相場がわかってくるので、相場価格に近い査定額を提示した会社が信頼できる会社だと判断できます。
おすすめの不動産査定一括サイトについて、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

土地売却の査定方法や注意点について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

2.売り出し価格を決めて広告を作成してもらう
仲介を依頼する不動産会社を決めたら、不動産会社と媒介契約を結びます。土地の売り出し価格は不動産会社の担当者とよく相談した上で最終的には売主が決定します。購入希望者から値引き交渉を受けることも前提に、少し高めに設定しましょう。
売り出し価格が決まったら不動産会社が売却活動をスタートさせます。不動産会社が行う主な売却活動は以下の通りです。
- 広告の作成
- レインズへの登録
- 見学希望者への対応
売却活動は不動産会社がメインで行ってくれますが、まかせきりにするのはよくありません。担当者とこまめに連絡を取り合って売却活動の進捗を確認しましょう。
3.購入希望者による見学
土地の購入希望者が現れたら、不動産会社は見学の予約を取り付けます。担当者が見学者の対応を行うため、売主が立ち会う必要はありません。見学前に雑草が生えていないか、ゴミが落ちていないかを確認し、土地をきれいな状態にしておくことが大事です。
また、土地が遠方にある場合は、専門の業者を雇って定期的に土地の管理をしてもらうようにしましょう。購入希望者の印象をアップさせることが土地売却成功の鍵と言えます。
4.買主が見付かったら契約
購入希望者と売主の双方が条件に合意したら土地の売買契約を締結します。売主と買主の不動産会社が契約日を調整し、決められた契約日に売買契約書への署名捺印を行ってください。売主は買主から手付金を受け取りますが、金額は売却価格の5~10%に設定することが一般的です。
売主は売買契約が成立したタイミングで、不動産会社への成功報酬として仲介手数料を支払う義務が発生します。仲介手数料には売却金額ごとに上限が定められていて、売買契約締結の時点で半額を支払うのが一般的です。買主に契約が解除される可能性もあるので、仲介手数料を全額支払うのは避けましょう。
5.決済と引き渡し
土地の引き渡しは売買契約を結ぶときに決めた期日に行われます。決済と引き渡し日は同日であることが基本ですが、売主か買主の希望により別々にすることも可能です。
売主は買主から手付金以外の残代金を受領し、土地の引き渡しを行います。不動産会社には仲介手数料の残り半額を支払ってください。引き渡し日に土地の所有権を売主から買主に移動する所有権移転登記の手続きを行います。
土地の固定資産税は、引き渡し前日までの分を売主が、引き渡し日以降の分を買主が負担するのが一般的です。土地の売却が終了したら、必要に応じて確定申告を行い納税します。
土地を売った後の確定申告の必要性について
土地を売却して現金を得た後に確定申告を行う必要はあるのでしょうか。土地売却後の確定申告について解説していきます。
譲渡所得が発生した場合は絶対に行う必要あり
売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いて売却益が発生した場合は、土地の売却で得た譲渡所得に対して譲渡所得税が課せられます。土地の売却で利益を得た場合は、忘れずに確定申告を行い税金を納めてください。
不動産売却による譲渡所得がある場合は、個人事業主や会社員、公務員などの職業にかかわらず確定申告が必要です。給与所得以外の収入が20万円を超えている人は、必ず確定申告が必要だと考えてください。
譲渡所得が発生しなくてもした方がよい場合もある
土地の売却により売却損があった場合は、課税されないので確定申告をする必要がありません。しかし、売却損が発生した場合は控除を受けて税金の負担を軽くすることができます。売却損があった場合の控除を受けるためには確定申告が必要です。
土地の売却により発生した損失で税金の控除を受けたい場合は、確定申告を行いましょう。損失が発生したけど、控除を受ける必要がない場合は確定申告を行う必要はありません。しかし、控除を利用して納める税金を少なくしたり、納めた税金の還付を受けることができるので、売却損が出た場合でも確定申告を行うことをおすすめします。
決められた期間内に申告する
確定申告の期間は、土地を売却した翌年の2月半ば~3月半ばくらいの間です。確定申告の期間はその年によって多少ずれることもあります。期間を過ぎた場合は延滞税や無申告加算税が課税されてしまうので遅れないように注意してください。
確定申告の方法は以下の通りです。
- e-Taxによる電子申告
- 郵送による申告
- 税務署の窓口で申告
郵送で確定申告書を送付する場合は、通信日付印に表示されている日付が申告期限内になるように送る必要があります。期間に余裕を持って郵送することを心がけましょう。
受けられる特例を確認
不動産の売却で売却益があった場合は、以下のような特例を受けて譲渡所得にかかる税金を抑えることができます。
- 3,000万円の特別控除の特例
- 軽減税率の特例
- 特定居住用財産の買換え特例
また、不動産の売却で売却損が発生した場合も、以下の特例を受けることで損益通算や繰り越し控除を受けられます。
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
特例を受けるためには適用条件をクリアする必要があります。確定申告の前に受けられる特例がないかを確認しておきましょう。
土地売却の基礎知識と税金対策について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事をあわせて読んでみてください。

まとめ
土地の売却時に取得費が不明な場合でも、土地の売却金額の5%にあたる部分を概算取得費として税金の算出に用いることが可能です。また、実額取得費よりも概算取得費の方が金額が大きい場合は、概算取得費を譲渡所得の算出に使うことができます。
土地の取得時期によっては、概算取得費以外の計算方法を用いて取得費の算出に役立てることが可能です。概算取得費を使用しない方が節税できる場合もあるので、概算取得費以外の方法でも試算を行ってみましょう。
土地の売却により売却益が発生した場合は、定められた期間内に確定申告を行い、課税譲渡所得により算出された税金を納めてください。売却損が出た場合も、確定申告によって税金の還付や損益通算、繰越控除などを受けることができます。
取得費が不明な場合の取得費の取り扱いを覚えて、土地の売却を円滑に進めましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
・https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf
◆記事で紹介した商品・サービスを購入・申込すると、売上の一部がマイナビニュース・マイナビウーマンに還元されることがあります。◆特定商品・サービスの広告を行う場合には、商品・サービス情報に「PR」表記を記載します。◆紹介している情報は、必ずしも個々の商品・サービスの安全性・有効性を示しているわけではありません。商品・サービスを選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品・サービススペックは、メーカーやサービス事業者のホームページの情報を参考にしています。◆記事内容は記事作成時のもので、その後、商品・サービスのリニューアルによって仕様やサービス内容が変更されていたり、販売・提供が中止されている場合があります。