居住中の家を売りに出したいけれど「掃除や管理が大変だからあまり内覧対応はしたくないな」と考えている方はいませんか。不動産売却成功のカギは営業マンの努力だけではなく、売主による内覧対応が重視されています。内覧とはいわば、「家の最終面接」なのです。
内覧を面接のように考えれば、事前の対策やイメージトレーニングがより大切になってきます。そこで本記事では、内覧対応に悩む売主にぜひ知っておいてもらいたい内覧のメリットや、当日までに必ずしておきたい準備、やり取りのポイント、内覧希望者が奮わない状況の対策に至るまで詳しくまとめました。ぜひ売却を成功に導くための内覧対策としてお役に立てれば幸いです。
家を売却する時の内覧対応について
内覧(下見)については「なんとなく対応している」という人も中にはいるかもしれません。しかし内覧は売主と買主がそれぞれ貴重な時間を使って行うものです。そこで内覧の目的を明確化し、そのうえでどのように対応したらいいのかのビジョン作りをまず最初に行いましょう。
買主にも売主にもメリットがある
見ず知らずの人に家の中を見せることに対して、恥ずかしさや抵抗を感じることは不思議ではありません。しかし内覧対応は買主だけではなく、売主にも次のような明確なメリットがあります。
- 売却の決め手になる可能性
- 家内の清潔さが保てる
- なかなか進まない荷造りの一歩
内覧をすることで買主は実際に物件を購入する決め手を探しに来ています。内覧は買主が物件について知りたいことを売主自ら伝えることができる絶好のチャンスです。
いくら間取りを見ても、実際に住むイメージというのは簡単に浮かぶものではありません。そんなところにいま実際に住んでいる人の生活動線や家具の配置を確認し、自分がその物件に住むことをイメージできれば、それは購入決断の強い後押しになるでしょう。
もうひとつのメリットとしては、内覧前に整理整頓や入念な掃除をすることで家の清潔が保て、転居先に持っていく荷物を減らすことができるなど、引っ越しの準備を進められることがあげられます。
買主がチェックしたいポイント
国土交通省による「平成30年度(2018年)住宅市場動向調査」では、建物の種類(注文住宅・分譲戸建・分譲マンション・中古戸建・中古マンション)によって多少の違いがありますが、住宅の選択動機として立地・価格に次いで間取り・広さ・設備面が重視されています。内覧はこのような点を直接確認できるため、買主としては大きなイベントといえます。
買主が内覧でチェックしたいポイントを売主も把握できれば、内覧対応が的確にできるはずです。以下、チェックポイントを表にまとめてみました。
チェックポイント | 説明 |
部屋の間取り |
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水回り |
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収納の広さ |
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ベランダの使い勝手 |
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玄関周り |
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壁紙や臭いの有無 |
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買主が知りたい情報
内覧のタイミングで買主が知りたい情報とは、不動産サイトや写真・説明文だけでは知ることのできない生活面での細やかな情報であることが多いです。特に近年では災害対策やリフォーム状況、点検の有無なども重要視されています。
こちらに関しても、理由と共に表へまとめてみましたのでご覧下さい。
チェックポイント | 説明 |
近隣の施設 |
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治安や騒音 |
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電波状況 |
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ガスや排水 |
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劣化の状況 |
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売却の理由 |
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買主が知りたい情報については、買主の目線に立ち執筆しているこちらの記事も参考にしてみてください。

売却する家の内覧を成功させるには
内覧にまで訪れている買主の購入意欲をあげるために、売主ができる対応にはどのようなものがあるのでしょうか。少しでも売却成功へと導くため、意識したい気配りのポイントについてまとめました。
内覧希望者の都合に合わせて柔軟に対応する
内覧希望者の中には間取り図と同じ角度から写真を撮りたいと願い出る人もいます。そのような時にはプライベートな物や風景が映りこまないようにお願いしたうえで、できるだけ柔軟に対応しましょう。
家具をそのまま持ち込むことを考えている買主もいます。そのような人は家具の設置場所の寸法をメジャーで測ることを希望してきます。無事に家具が入れるスペースが確保できれば、購入への後押しになるため、近づきすぎず、少し離れた場所で見守ってあげてください。
このようなケースもあり、内覧にはできる限り売主自身が立会いするのがおすすめです。買主の都合にあわせてスケジュール調整をおこない、売却の成功率アップのためにも、できる限り内覧を断ることがないようにしましょう。
なるべく女性が対応する
立会に関しては、夫婦であれば妻がメインで内覧対応をするのがおすすめです。体格の良い男性ひとりだと不思議と威圧感を与えてしまい、希望者が緊張して思うように見回ることができなかったというケースがあるようです。
最近では内覧希望者が女性1人の場合も多く、女性同士ならではの視点で会話が弾みやすくなることもあります。細やかな気遣いが行き届き、内覧希望者に良い印象を残しやすいといったメリットもあります。
もし居住中の家に子どもやペットがいる場合は、買主が落ち着いて内覧できるように一時的に預けたり、夫とともに外出するなどの対応を取ると良いでしょう。
立ち会いは状況を見て判断する
どうしても外せない用事や事情があって売主自身が内覧に立ち会えない場合は、売却を依頼している不動産会社の担当者に鍵を渡して任せましょう。
ただし、内覧希望者が担当者から聞き取れる情報は限られており、実際に住んでいる人の声は売主本人からでしか発信ができません。買主に伝えたいことがあれば、ポイントをまとめて担当者に事前に伝えておくとよいでしょう。
大切なことは内覧の申込は決して断らないことです。立会者をどうするかは状況に応じて判断しましょう。
笑顔での対応を心がける
内覧希望者の中には、売主の人柄やその生活ぶりを判断材料にしている人も少なくありません。質問にはできる限り答え、会話のやり取りには笑顔と聞き取りやすい声量のキープを意識してみてください。
あまり上手にイメージが湧かないときは、「自分が購入希望者だったら」とイメージしてみてはどうでしょうか。いくら素敵な家で間取りや設備が気に入っても、無愛想で全く質問に答えてくれない売主との間に、売買契約を結びたいとは素直に思えないはずです。
細やかな気遣いを見せる
売却を決めた後は、不動産会社の担当者を含めていつ誰が来てもいいように、次のことを準備しておきましょう。これらはアピールではなく、あくまで「気遣い」に留めておくことがポイントです。このような気遣いが内覧当日にスマートにできれば、内覧希望者により好印象を持ってもらいやすくなるはずです。
- 事前に新品のスリッパをいくつか用意しておく
- 窓を開けたり、空気清浄機を利用してこまめな換気をおこなう
- 空調による室温の管理に気を配る
- トイレットペーパーの補充を忘れない
- 家の中の電気は全て点けて、明るく見やすいようにする
- 内覧が長引いているなど、状況に応じてペットボトルのお茶などを冷やしておくのも良い
居住中のマンション売却に関しては、こちらの記事も参考にしてみてください。

家の内覧予定日までにしておく準備
「家の最終面接」に対して売主ができる準備にはどのようなものがあるのでしょうか。アピールするには人でも場所でも清潔感を欠かすことはできません。この章では主に内覧当日までにしておきたい清掃についてを詳しくまとめました。
定期的な清掃で清潔感をアピールする
せっかく清掃をしたものの、汚れを見落としてしまい内覧希望者にマイナスイメージを持たれてしまうのは絶対に避けたいものです。家の売却を決めたら定期的に清掃し、常に清潔感に溢れる家を維持するように努めましょう。内覧期間中はいつ内覧希望者が来ても良いように余裕をもって準備しておきたいものです。
内覧希望者が一番最初に目にする玄関まわりは、清潔感を重視しましょう。特にどうしてもほこりの吹き溜まりになりやすい玄関から廊下は次のことを心がけましょう。
- 靴箱の上には物を置かないようにする
- 玄関先で使うことが多い判子などは靴箱の中にケースを作って収納する
- 傘は立てかけず、水気を切ってから傘立てにしまう
- 朝晩にはホウキや掃除機で隅のほこり・塵を吸い込んでおく
水回りは入念にきれいにする
特に汚れが目立ちやすく、そして頑固で落ちにくい汚れが集まりやすい場所が水回りだと言われています。
そのため一度徹底的な清掃をおこない、その後も1日の終わりにはこまめに掃除をする習慣をつけておくことをおすすめします。水回りは内覧時でも設備がどのようになっているかチェックされることが多いため、自然と内覧希望者の目に入ります。
「水回りだけはクリーニング業者に任せる」というのも考えのひとつではありますが、経費として厳しい場合には出来る範囲で掃除をおこないましょう。ポイントを次の表にまとめてみました。
設備名 | 掃除のポイント |
---|---|
キッチン |
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トイレ |
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お風呂 |
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室内の物を減らす
室内の物を減らすことは、部屋を広く見せる他にも、生活感を無くす効果があります。
特に住宅のメインともなるリビングは部屋の印象として残りやすい場所です。家の売却を決めた時点で、使用感のある家具は移動・または撤去を検討しても良いでしょう。ただし、収納に隠すという考えはNGです。
- どうしても収納しきれないものは思い切って処分する
- 後々の引越しを見越して、必要最低限の物しか置かない
- 蓋付のカラーボックスを利用し、幅や高さを揃えて見栄えを良くする
生活中の売却では「家から完全に生活感を無くす」ことはできません。しかし「可能な限り減らす」のであれば、そこまで難しいことではないのです。使用した物は必ず元の場所に戻し、水回りの水気は気づいたらすぐに拭き取るようにします。使い込みが目に見えて分かる家具は処分を検討しましょう。
室内の匂いをチェックする
「家の匂い」というのは体臭と同じく、自分自身では慣れすぎてしまって気づくことができない盲点のひとつです。匂いに関しては自己判断ではなく、第三者の意見を必ずいれるようにしてください。
喫煙者ではない場合でも、どんな家にもそれぞれの「室内の匂い」はどうしてもあるものです。一番確実な手段として、売却を依頼している不動産会社の担当者に最終チェックをお願いしましょう。
そして内覧希望者が来る日には、部屋の換気と共に消臭スプレーや芳香剤による対策がおすすめです。ただし強すぎる香りは時に気分を悪くしてしまうこともあるため、なるべく無香料タイプのものを選んでください。
家の内覧対応での会話のポイント
内覧希望者の中には「いま住んでいる売主との会話内容を判断材料にしたい」と考えている人も少なくありません。ここでは内覧対応時の会話について、売主として意識しておきたいポイントを3つ解説します。
家の長所を伝える
ベランダから見える風景や、近くにある美味しい食事処、子どもがいる親視点での近隣施設における感想など、「ここに住んでいて良かった」と感じたことは、この家の立派な長所のひとつです。ささやかなことであったとしても、ぜひ伝えたいポイントとして事前にまとめておきましょう。
- 駅への距離や掛かる時間
- 生活に関わる近隣施設の有無
- 近所同士のお付き合い状況
立地や間取り・設備以外にも、不動産サイトや広告だけでは買主に対して魅力が伝わりきれていない箇所は多く存在します。暮らしに関わる長所は、会話のなかで忘れずに伝えておきたい重要なポイントです。
短所も隠さず伝える
もし短所として考えつくところがあれば、後から伝わるよりも先に伝えたほうが印象が良いこともあります。業者の手で対応できる箇所以外に関しても、内覧の時点で隠さずに伝えておくことができればベストです。
- 現時点で壁のひび割れがある
- 特定の方向にある窓を開けると騒音がする
- 近隣トラブルがあった
- 空調効率が悪い部屋がある
- コンセントの位置が地味に使いづらく不便な時がある
場合によっては契約不適合責任として後々大きなトラブルに繋がるケースもあるため、短所に関してどのように回答すべきかは事前に不動産会社の担当者と相談することをおすすめします
“参考:法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」”
売却理由は前向きに伝える
家を手放す理由について、購入の前に質問してくる買主も少なからずいます。必ず正直に答えなければならないということはありませんが、売りたいがあまりに嘘をつくのは避けたいものです。もし今回の売却理由にネガティブな一面があったとしても、内覧希望者にはできる限りポジティブな言い方で伝えましょう。
- 「手狭になった」という理由は「家族構成が変化するため」に言い換える
- 「不便だから」という理由は「ライフスタイルを変えるため」に言い換える
- 「離婚」という理由は「両親と同居をするため」に言い換える
売却理由の伝え方に関してはこちらの記事もおすすめです。

アピールのしすぎは禁物
よくある失敗談としてありがちなのが「売主によるアピール問題」です。会話のなかでついつい話が弾みすぎてしまい、内覧希望者が聞いていないことまで長々と話してしまうと、売りたいという欲が透けて見えて悪い印象になってしまうケースは多いのです。
内覧時には、家具を持ち込めるかどうかメジャーで寸法を測ったり、時間が限られているため効率よく見て回りたいという希望者もいるため、つい後を追って歩くような付きっきりの状態にならないよう、適度に距離をとるなどの配慮も忘れないようにしましょう。
条件の口約束はしない
特に不動産会社の担当者が同席していない場面で注意したいのが「条件の口約束」になります。その場でおこなう不確実な口約束はトラブルの原因になりやすいです。
もし値引きや備え付け家具に対して内覧希望者から提案があったとしても、その場で決定するのは避け、必ず担当者へ相談しましょう。希望者に対しては、「家族とも相談したい」「担当者と検討する」など、当たり障りのない言い回しに留めておいてください。
すべての部屋を見せる必要はない
居住中である以上、どうしても他人に見せたくないプライベートスペースがあっても不思議なことではありません。そのようなスペースがある場合は事前に不動産会社の担当者に知らせ、対応を相談しておくと良いでしょう。
ただし、収納スペースに関してはその対応がマイナスとなることも多いです。家の購入動機としても収納力の高さはチェックされるポイントであるため、そこを確認できないのなら…とせっかくの内覧機会が無駄になってしまう可能性もゼロではありません。収納スペースはできるだけ整理し、内覧時には見せられるように努めましょう。
内覧希望者がゼロの場合は原因と対策を考える
内覧希望者がなかなか現れない場合は、売主として早急に原因と対策を考える必要があります。
- 売り出し価格が適切かどうか
- 掲載している写真や情報に不備はないか
- 担当者の問い合わせ対応に問題はないか
- 売却に適している時期かどうか
- 不動産会社や、媒介契約を見直す必要性も考慮すべきか
最後、内覧希望者を増やす対策として役立つ記事を紹介します。ぜひ各記事の内容も参考にご覧下さい。



まとめ
内覧によって得る情報が買主に対する大きなひと押しとなる以上、当日をいかにスムーズな立会いの末で完了させることができるかどうかが、売却の成功率をあげるカギといっても過言ではありません。
満足のいく条件で売却するためにも、日頃から浮かんだ長所も短所も忘れずにメモとして残し、内覧当日までに担当者と対応やシミュレーションを重ねてみてください。内覧対応を成功させ、物件が無事に売却できるようぜひ本記事を役立ててください。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
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