特定事業用資産の買換え特例とは?適用条件や計算方法等を徹底解説

不動産売却

新規事業のために不動産の買換えをする際に、売却益が出たら税金の支払いが発生します。不動産を活用した事業をしている人にとって、税金は利益を増やすためにもできるだけ減らしたいでしょう。

そこで役に立つのが特定事業用資産の買換え特例です。一定の条件を満たせば確定申告することで適用でき、利益を手元に残せます。特例については国税庁の公式サイトで解説されていますが、わかりにくく自分の買換えで利用できるかどうかを判断しにくいです。

この記事では特定事業用資産の買換え特例について、適用条件や計算方法をわかりやすく解説していきます。ぜひ参考にしていただき、新しい事業を軌道に乗せるために支払うべき税金の節約を目指しましょう。

特定事業用資産の買換え特例で税金の繰り延べができる

特定事業用資産の買換え特例とは、一定の要件を満たした買い換えで利益にかかる税金を繰り延べる特例です。個人事業主が不動産を売却して利益が出た場合は、利益に対して最大で39.63%の譲渡所得税がかかります。取引によっては、数百万円にもなる税金をこの特例によって繰り延べられることができます。

不動産の売買ではさまざまな節税対策がありますが、特定事業用資産の買換え特例で重要なのは繰り延べるという点です。非課税にはならないため、将来特例が使えない売買を行うと税金が発生します。

特定事業用資産の買換え特例を適用させる8つの要件

実際に事業用資産を買い換えようとした際に、この特例は適用できるのでしょうか。令和2年(2020年)4月1日時点では、次の8つが特例の要件となっています。

  • 売買する不動産は事業用
  • 購入する土地は売却するものの5倍以内
  • 指定された期間内に買換え資産を取得
  • 購入した資産は1年以内に事業で使用
  • 譲渡資産は一定の所有期間を過ぎている
  • 特定の譲渡方法や取得方法は対象外
  • 決まった組み合わせでの資産で買換え
  • 他に節税できる特例を使っていない

それぞれどのような要件なのか詳しく見ていきましょう。

売買する不動産は事業用

特定事業用資産の買換え特例では、売却する資産も買い換える資産も事業用であることが定められています。事業用かそうでないかの例は次の通りです。

事業用と認められる例 事業用と認められない例
  • コインパーキング経営していた土地の売買
  • 賃貸経営していた物件の売買
  • 借地の売買
  • 空き地や空き家の売買
  • 雑所得や棚卸資産にあたる土地の売買
  • 特例の適用だけが目的で売買したと判断された資産の売買

基本的に貸付けなどで収入を得ていた不動産は、事業用として認められます規模が小さく事業とは呼べないような場合でも、対価を継続して得ているなら特例が適用可能です。

土地を物置場や野ざらしの月極駐車場としている場合などは、特別な施設がないため事業用とは認められないことがあります。

購入する土地は売却するものの5倍以内

事業の拡大などで、より広い土地へ買換えることがあります。戸建ての賃貸経営からマンション経営や、都市部の狭い土地から郊外に密集する商業施設がある地域でのコインパーキングなどでは、広い土地が必要です。

その際に面積が5倍以内なら、特例を用いて税金の繰り延べができます。また5倍を超えていても、5倍以内の部分には適用できるため、諦めずに申請を行いましょう。

指定された期間内に買換え資産を取得

不動産を売却してから何年も期間が空いている場合は、買い換えとは判断されません。売却する年の前年中から翌年中に購入すると、特定事業用資産の買換え特例が適用されます

今が不動産を高額で売却できるタイミングだとしても、税金によってトータルで手元に残るお金は少なくなるかもしれません。お金は銀行に預けていても、利息より物価の上昇の影響で損をする可能性が高いため、資産を売却するなら次の事業も検討しておきましょう。

購入した資産は1年以内に事業で使用

たとえ指定された期間内に不動産を購入していても、新規事業の計画がまとまらずにほったらかしにしていては、事業用の不動産として認めてもらえません。特例を適用させるためにも購入したら1年以内に事業を始めましょう

またすぐに事業を始めても、採算が取れずに1年以内に使わなくなった場合は、特例の対象外になってしまいます。特例を適用させるために、赤字を出しながら事業を続けることはおすすめできません。見切りをつける時期があと少しで1年を超えるという場合は、どちらが得かで判断してください。

譲渡資産の所有期間は5年超

売却する不動産は、基本的に所有期間が売却する年の1月1日時点で5年を超えている必要があります。例えば、ある年の6月に購入した土地であれば、特例が適用できるのは6年後の1月1日以降です。ちょうど5年では要件を満たさないため注意しましょう。

またこの要件は令和3年(2021年)5月時点で、令和5年(2023年)3月31日まで停止しています。売却するときには最新の情報を確認してください。

なお特定の組み合わせでの買換えの場合は、所有期間が10年に延長されることもあります。

特定の譲渡方法や取得方法は対象外

不動産を譲渡したり取得したりする方法は複数ありますが、次の取引では買換えと認められません

特例が適用できない譲渡 特例が適用できない取得
  • 収用
  • 贈与
  • 交換
  • 代物弁済
  • 贈与
  • 交換

なお、それぞれの取引の意味は次の通りです。

不動産取引の種類 意味
収用 公共事業などのため強制的に不動産を手放す
贈与 不動産の無償譲渡
交換 不動産の一部を対価に別の不動産を取得
代物弁済 現金の負債を不動産で弁済

上記の取引では、そもそも利益が発生しなかったり別の税金が発生したりするため、取引内容に合った節税対策が必要です。

決まった組み合わせでの資産で買換え

特例が適用できる資産の組み合わせは複雑で、具体的な例として次のものなら特例が適用できます

譲渡する資産 買換える資産
既成市街地にある事業所で、所有期間が10年超え 既成市街地外にある土地や建物
所有期間が10年超えの土地や建物 国内にある建物や300平米以上の土地
過疎地域以外にある土地や建物 過疎地域内にある土地や建物

既成市街地とは、政令で指定された地域で首都圏や近畿圏、中部圏にあります。また過疎地域は市町村の財政が一定の基準を下回る地域のことです。

組み合わせの詳細については総務省が運用しているe-GOV法令検索で、租税特別措置法第37条を確認してください。

他に節税できる特例を使っていない

事業で使う資産には、譲渡する際にさまざまな特例が用意されていますが、特定事業用資産の買換え特例を適用させたい場合は、次のものは併用できなくなります

併用できない特例 特例の概要
優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例 譲渡の利益にかかる税率を軽減
減価償却資産の特別償却 減価償却の限度額を増やす
所得税額の特別控除の特例 条件を満たした売却で、特別控除を使い売却の利益を減額

買換える不動産や事業の現状によっては、特定事業用資産の買換え特例を適用させないほうが得かもしれません。正確な税金の計算が必要になるため、税理士などの専門家に相談しながら節税対策をしたほうがよいでしょう。

特定事業用資産の買換え特例は確定申告で適用

これから行う買い換えが、特定事業用資産の買換え特例の適用要件を満たしていても、確定申告で申請しなければ通常通りの税金を納めることになります。事業の利益が増えてきて初めて確定申告をする人は、特に注意して基本を押さえておきましょう。

確定申告をする時期

確定申告の時期は、基本的に毎年2月16日から3月15日です。開始や終了の期日が土日や祝日になる場合は、次の月曜日にずれます。令和3年(2021年)の新型コロナなど特別な事情がある年は、申告の期限が延びることがあります。1日でも提出が遅れると罰則があるため、最新の情報を最寄りの税務署などで確認しましょう。

もし確定申告の計算ミスで税金を払い過ぎている場合は、還付申告をすることになります。翌年から5年以内に申告して還付を受けてください。

不動産を売却してから確定申告をするまでの手続きについて、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

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特例を適用させるために必要な書類

特定事業用資産の買換え特例のために、確定申告では次の書類を用意してください。

【特例のための添付書類】

  • 土地や建物の譲渡所得内訳書
  • 買換えた資産の登記事項証明書
  • 特例が適用できる地域に不動産があることを示す市町村の証明書

【通常の確定申告のための書類】

白色申告 青色申告
  • 申告書B
  • 収支内訳書
  • 本人確認書類(マイナンバーカードの写しなど)
  • 確定申告書B第1表・第2表
  • 損益計算表
  • 貸借対照表
  • 本人確認書類(マイナンバーカードの写しなど)

確定申告は前年の1月1日から12月31日の収支を報告するため、日頃から記録を残して提出期限間際で慌てないようにしましょう。

確定申告はe-Taxがおすすめ

確定申告の提出方法は、税務署に直接持って行くか郵送することもできますが、おすすめはインターネットを使ったe-Taxです。確定申告書を税務署などに取りに行かなくてもよく、必要な数字を入力すると自動的に複雑な計算を行ってくれます。さらに提出は24時間いつでも可能です。

またe-Taxでの青色申告は、白色申告より控除額が10万円増えます。損益計算表や貸借対照表の準備に手間取るかもしれませんが、節税するためにも頑張って作成しましょう。

マイナンバーカードの作成期間に注意

100万円を超える不動産を法人へ売却する際やe-Taxによる確定申告の本人確認などの際に、マイナンバーカードが必要です。これまで通知カードと運転免許証などで確定申告をしていた人も、作成しておいたほうが何かと役に立つでしょう。

注意が必要なのは、マイナンバーカードの作成には1ヶ月程度かかるということです。もし確定申告の提出開始から申請しても、期間内に届かない可能性があります。スマホやパソコン、郵送などでマイナンバーカードの申請はできるので、まだ持っていない人はすぐに手続きすることをおすすめします。

不動産売買でマイナンバーが必要なケースについて、詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

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課税対象となる譲渡所得の計算方法

特定事業用資産の買換え特例を適用させると、買換えによる譲渡所得はどのように計算されるのでしょうか。ここでは次の2つのパターンについて詳しく解説します。

  • 買換え資産が譲渡資産以上の場合
  • 買換え資産が譲渡資産より安い場合

買換え資産が譲渡資産より高い場合の計算式

課税割合が20%で、買換え資産が譲渡資産以上の価値がある場合の計算式は次の通りです。

課税対象の譲渡所得=譲渡する資産の売却価値×0.2ー(譲渡する資産の購入価格+譲渡にかかった費用)×0.2

計算式の前半部分は収入金額で後半部分が必要経費です。必要経費には仲介手数料や印紙税、登記費用が含まれます。計上漏れがないように領収書などをひとまとめにしておきましょう

買換え資産が譲渡資産より安い場合の計算式

収入金額から必要経費を引いた額が課税される所得になるという部分は、買換え資産が譲渡資産より安い場合でも同じです。違いは収入金額と必要経費の計算式です。

収入金額=譲渡する資産の売却価格ー買換える資産の取得価格×0.8
必要経費=(譲渡する資産の購入価格+譲渡にかかった費用)×(収入金額÷譲渡する資産の売却価格)

特例の要件を満たす物件を見つけても価格によって計算式が変わるため、購入する際は税金で損をしないかどうかも検討しましょう。

特定事業用資産の買換え特例の税額計算をシミュレーション

3,000万円で購入した不動産を6年後に200万円かけて4,000万円で売却し、6,000万円の不動産に買換えた場合に支払う税金はいくらか計算してみましょう。

収入金額=4,000万円×0.2=800万円
必要経費=(3,000万円+200万円)×0.2=640万円
課税対象の譲渡所得=800万円ー640万円=160万円
所有期間が5年を超えていると税率は20.315%のため、税額は次のようになります。
税額=160万円×20.315%=32万5,000円

【Q&A】特定事業用資産の買換え特例に関するよくある疑問

特定事業用資産の買換え特例が適用できる状況でも、いざ申請しようとすると本当に問題がないのか不安になるものです。そこで、特例の申請前によくある疑問について解説していきます。

特例を適用させるうえでデメリットはあるのか?

特例を使えば税金がお得になると思いがちですが、実はデメリットもあります。いくつか併用できない特例があり、その中でも減価償却に関わる特例が使えないことで、事業の利益にかかる税金が増えます

また特定事業用資産の買換え特例は税金の繰り延べなので、将来の売却で利益が大きくなり、その際に税金の負担が重くなる点には注意が必要です。将来まで考えて適用しないと、事業で突然の出費を強いられることになるかもしれません。

確定申告の修正はできるのか?

他意はなくても、確定申告でミスしてしまうことはあり得ます。見積もり額で取得金額を申告していても、実際はより高額であったり単純な記入ミスであったりした場合は、更正や修正が可能です。

更正では、買換えした不動産の取得日から4ヶ月以内に税務署へ更正の請求手続きをして、税金を還付してもらいます。修正では、更正と同様に4ヶ月以内に修正申告をして差額を納めましょう。

法人でも買換えで特例は使えるか?

特定事業用資産の買換え特例は、個人を対象とした制度のため法人では使えません。法人では代わりに、特定資産を買い換えた場合の圧縮記帳という制度があります。

圧縮記帳とは、補助金などを使い固定資産の取得費を減らす仕組みで、利益が少なくなるため節税になります。事業を拡大して法人にする予定の人は覚えておいて損はないでしょう。

適用できるか迷ったときの相談先は?

特例は買換えの組み合わせが細かく設定されていて、法令を見ただけでは適用できるか迷ってしまいます。1人で悩んでいては明確な答えに辿り着けないことがあるため、次の相談先を利用しましょう。

相談先 説明
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相談内容が特例の仕組みの解説までであれば、いずれも無料で対応してくれることが多いです。しかし自社で行う買換えで適用できるかの判断までになると、有料で税理士への相談や依頼が必要になるケースもあります

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まとめ

特定事業用資産の買換え特例が適用できると、売却で得た利益にかかる税金を繰り延べられ、直近で現金を手元に残せます。満たすべき要件は複雑ですが、新規事業でお金が必要な人には役立ちます。

余裕を持って期間内に確定申告をするため、帳簿をつけてマイナンバーカードなど必要なものをそろえておきましょう。特例が適用できるか不安なときは、税務署や税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。多くの場合は、無料で基本的なアドバイスをしてもらえます。本記事を参考にして、特定事業用資産の買換え特例の適用を検討してみましょう。

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