「不動産会社から連帯債務者になるとグレードの高い物件が買えると提案された」「連帯債務者って何?連帯保証人と何が違うの?」など、住宅ローンを組む際に連帯債務者について疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
住宅ローンを組んで家を購入する場合には、共働き世帯であれば連帯債務者としてローンを組むという選択肢もあります。連帯債務とは複数人で1つの負債を負う仕組みです。連帯保証人とは異なる仕組みですが、言葉が似ているため混同されることも珍しくありません。
そこで本記事では、連帯債務者について詳しく解説します。連帯保証人との違いや連帯債務者となるメリット・デメリットも解説するため、不動産購入の参考にしてください。
連帯債務者に関する基礎知識
そもそも連帯債務者とはどういったものなのでしょうか。本章では連帯債務者についての基本的な知識と、連帯債務がおすすめの購入ケースを紹介します。
連帯債務者とは
住宅ローンを複数人の収入を合算して組む際に、そのうちの1人を債務者とするとそのほかの人は連帯債務者となります。主に夫婦で収入合算して連帯債務となることが多いですが、親子で連帯債務するケースもあります。
連帯債務の特徴として、債務者と連帯債務者の責任が同等であるという点が挙げられます。そのため債務者だけでなく、連帯債務者にも返済の義務が生じるため注意が必要です。
夫婦の連帯債務ができるのは主に住宅金融支援機構と、民間金融機関が連携して提供するフラット35という商品です。これら以外にも連帯債務を選択できる場合もありますが、その数は多くありません。
フラット35とは
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して融資を行う住宅ローンです。最短15年、最長35年で8,000万円までの融資が可能です。さらに保証人は不要、返済額がずっと変わらない、審査に通りやすいといったメリットがあります。
フラット35に収入合算して契約するためには、次のような要件を満たさなければなりません。
- 連帯債務者が申込者の親、子、配偶者であること
- 連帯債務者の年齢が申込時に70歳未満であること
- 連帯債務者が申込者と同居していること
なお親子で収入合算して親子リレー返済をする場合には、同居は必須ではありません。
連帯債務者になるのがおすすめなケース
1人の収入でローンを返済していけるのであれば、連帯債務者になる必要はありません。単独名義不動産として購入したほうがメリットが大きいため、そのまま購入しましょう。
連帯債務者になる必要があるのは、どちらかの収入だけでは住宅ローンが組めない場合です。具体的には次のようなケースが考えられます。
- 夫の年収だけではローンが組めなかった
- ペアローンよりも手数料を安く済ませたい
- 住宅ローン控除を2人分受けたい
夫婦2人で住宅ローンを組む場合はペアローンという選択肢もあります。ペアローンも連帯債務と同じように借入額を増やすことができます。しかし手数料が多くかかり、住宅ローン控除といった制度も条件によっては利用できないこともあるため、連帯債務を選ぶ夫婦が多いです。
連帯債務者と連帯保証人の違い
連帯債務者と連帯保証人はどう違うのでしょう。
ペアローンの場合は、収入合算と同じように分け合ってローンを組みますが、お互いに連帯保証人となる点が大きく異なります。連帯債務者と連帯保証人の違いを以下の表にまとめたので参考にしてください。
種類 | 返済の義務 | 団体信用生命保険への加入 | 住宅ローン控除の利用 | 登記の名義 |
連帯債務者 | 夫婦(親子)どちらも | 2人とも加入できる場合もある | どちらも利用できる | 債務者と連帯債務者の共有名義 |
連帯保証人 | どちらか一方 | 債務者のみ | 連帯保証人は利用できない | 債務者名義 |
以下で各項目の詳細を解説します。
返済の義務
連帯債務(収入合算)の場合は、収入を合算した双方どちらも返済の義務を負います。しかし連帯保証人の場合はどちらか一方が主債務者となり、債務者が返済できなくなった場合に、連帯保証人が代わりに返済義務を負うことが特徴です。
つまり連帯債務の場合には、債務者と連帯債務者どちらも毎月返済義務を負いますが、連帯保証では通常、債務者のみが返済義務を負うことになります。連帯保証人は、債務者の支払いが滞った場合の保証としての位置づけが大きいです。
団体信用生命保険への加入
住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険という保険への加入義務が課せられます。団体信用生命保険とは、借入主に万が一のことがあった場合に、残債の支払いを免除される保険のことです。
連帯債務の場合は金融機関にもよりますが、債務者・連帯債務者どちらも加入できます。一方連帯保証人は、債務者の支払いができなくなった場合の保証としての役割を担うため、加入することができません。
ただし2人で借り入れて、お互いが債務者と連帯保証人になり合うペアローンでは、条件次第でどちらも連帯保証人でありながら、団体信用生命保険に加入することができる場合もあります。
住宅ローン控除の利用
住宅ローンを組むと、ローン残債の1%を所得税から控除できる住宅ローン控除制度を利用できます。収入や残債によっては、住民税の一部も控除できるため大変有用な控除制度です。
連帯債務の場合は、債務者・連帯債務者どちらも住宅ローン控除を利用することができ、共働き世帯にはかなりの節税効果が期待できるでしょう。ただし、連帯保証人は住宅ローン控除を利用することはできません。
住宅ローン控除について、さらに詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。

登記の名義
収入合算して購入した場合には、不動産の名義は債務者・連帯債務者の連名で共有名義となります。一方連帯保証人となっても、登記簿に名前を残して所有者になることはできません。
住宅ローンを単独で組む場合は、連帯保証人が必須と思われるかもしれませんが、連帯保証人がいなくても組むことができます。単独名義ローンの場合は、保証会社を利用して連帯保証人をつけないことが一般的です。連帯保証人となるのは、親の土地に家を建てる場合やペアローンを組む場合など、まれなケースです。
住宅ローンと連帯保証人について解説したこちらの記事も参照してみてください。

住宅ローンを組むときに連帯債務者になるメリット
連帯債務者として収入合算して住宅ローンを組むことで、どういったメリットが得られるのでしょうか。
- 収入合算で借入額を増やせる
- 住宅ローン控除を利用できる
- すまい給付金が受け取れる
- 住宅ローンの手数料を節約できる
この章では、上記の4点のメリットを紹介します。
収入合算で借入額を増やせる
連帯債務者の収入を合算して計算することで、借入額を増やすことができます。そのため1人の収入では購入できない物件でも、連帯債務によって手が届くこともあるでしょう。
借入可能額は年収の5倍程度が妥当といわれています。また年収に対する1年の返済額の割合を示す返済比率も、大切な判断基準です。収入合算することで返済比率が下がり借入可能額も多くなるため、物件選びの選択肢が広がるでしょう。
住宅ローンの返済比率について詳しく知りたい人は、以下の記事もおすすめです。

住宅ローン控除を利用できる
債務者と連帯債務者の両者に返済義務が生じるため、それぞれが住宅ローン控除を利用することができます。不動産購入後の生活を考えると、節税効果の高さは大きなメリットといえるでしょう。
ただし住宅ローン控除を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。住宅ローン控除の利用要件は次の通りです。
- 自ら居住すること
- 床面積が50m²以上(一部、40m²以下であること)
- 中古住宅の場合は耐震性能を有していること
- 借入金の償還期間が10年以上であること
- 合計所得金額が3,000万円以下であること
- 増改築等の場合は工事費が100万円以上であること
引用:すまい給付金事務局ホームページ「住宅ローン減税制度利用の要件」(※一部記載を変更)
ローン残債の1%分の控除が10年または13年間(令和元年10月~令和4年12月の入居まで)続くため、収入合算することによって長期間の節税効果を得ることができます。
すまい給付金が受け取れる
すまい給付金とは、消費税率の増加による住居取得者の負担を軽減するための現金給付制度です。連帯債務の場合には、債務者はもちろん連帯債務者も給付対象となります。
実施期間は平成26年から令和3年の12月までとされており、収入によって金額は異なりますが、1人あたり最大50万円まで給付されるためぜひ活用したい制度です。
すまい給付金を受け取るためには、次のような要件を満たす必要があります。
すまい給付金の対象者
- 住宅の所有者:不動産登記上の持分保有者
- 住宅の居住者:住民票において、取得した住宅への居住が確認できる者
- 収入が一定以下の者:[8%時]収入額の目安が510万円以下[10%時]収入額の目安が775万円以下
- (住宅ローンを利用しない場合のみ)年齢が50才以上の者
給付対象となる住宅の要件
- 引上げ後の消費税率が適用されること
- 床面積が50m²以上であること
- 第三者機関の検査を受けた住宅であること 等
引用:すまい給付金事務局ホームページ「すまい給付金とは」(※一部記載を変更)
すまい給付金について、さらに詳しく解説したこちらの記事もご覧ください。

住宅ローンの手数料が節約できる
住宅ローンを組む場合は、融資手数料や抵当権設定登記の費用などがかかることが一般的です。これらの費用は借入金額に応じて高くなることもあり、数十万円になることもあります。
収入合算と似たペアローンの場合は、夫婦でそれぞれローンを組むことになるため、こうした手数料も2回分かかります。しかし連帯債務では、契約を一度に行うためかかる費用も1回分のみです。
初期費用をできる限り減らしたいと考えているなら、ペアローンよりも連帯債務のほうがメリットが大きいでしょう。
住宅ローンを組むときに連帯債務者になるデメリット
では連帯債務者になるデメリットは、どのようなものが挙げられるでしょうか。収入合算して住宅ローンを組むデメリットは次の通りです。
- 安定した収入を維持する必要がある
- 離婚しても返済義務が残る
- 団体信用生命保険に加入できないケースがある
- 贈与税が課せられる場合がある
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
安定した収入を維持する必要がある
債務者はもちろんですが、連帯債務者も安定した収入を維持する必要がある点には注意しましょう。双方が継続的に収入を得られる状況でなければ、連帯債務者として認められることは難しいです。
例えば今後出産を考えていて、育休や産休を取ると考えている夫婦には向いていません。つまり育休・産休中に収入が減少しても、問題なく返済できる額で借り入れを行う必要があります。
今後そのような予定がなかったり、安定した収入が見込まれたりする場合は得られるメリットも大きいでしょう。
離婚しても返済義務が残る
収入合算して住宅ローンを組むと、万が一離婚した場合にも返済義務が双方に残ります。連帯債務者をやめることはできないため、離婚後も家を売却しない限りは返済が続くのです。
売却するといっても、片方の都合で家を手放すことはできません。双方が納得しなければ売却できないため、新たなトラブルに発展する可能性もあります。また共有名義の不動産として登記するため、離婚時の財産分与が複雑になりやすいこともデメリットです。
住宅ローンが残った状態で離婚する場合の対処法などについて、詳しく知りたい人はこちらの記事もおすすめです。

団体信用生命保険に加入できないケースがある
連帯債務者になったからといっても、必ず団体信用生命保険に加入できるわけではありません。連帯債務ができる金融機関は限られますが、双方が保険に加入できる金融機関はさらに限定されます。金融機関によっては、連帯債務者が加入するためには金利を上乗せしなければならないケースも多いです。
夫婦で収入合算して住宅ローンを組むときの保証として、夫婦連生団体信用生命保険という保険もあります。夫婦どちらかに万が一のことがあった場合に、ローン残債に応じた保険金が支払われる制度です。こうした特別な仕組みが整った金融機関を選択するのも選択肢のひとつでしょう。
贈与税が課せられる場合がある
債権者が返済すべきローンを連帯債務者が返済した場合は、贈与税の課税対象になる可能性があるため注意しましょう。また住宅ローンの負担割合と住宅の持分が異なる場合も、贈与税の支払いを求められるケースがあります。
贈与税の課税対象になるポイントは、経済的利益の移転があるかどうかです。具体的には、妻が夫の支払うべき返済額まで繰り上げて返済した場合や、借入金額は50%ずつの負担であるにもかかわらず、所有する持分が30%対70%であると、差分の20%について贈与があったと見なされます。
通常の贈与と同様に、年間110万円までの基礎控除は適用されます。繰り上げ返済を行う際など、贈与と見なされないか慎重に判断しましょう。
連帯債務の基礎知識とメリットデメリットについて、詳しく解説したこちらの記事も参考になります。

連帯債務者に関するQ&A
最後に、連帯債務者についてよくある疑問を解説します。疑問を解消して住宅ローンを利用しましょう。
連帯債務の契約を解除する方法は?
収入を合算して契約した住宅ローンは、基本的に全額返済したときにだけ契約解除が認められます。離婚や収入状況の変化などで返済中に解除したい場合は、債務者と同等以上の連帯保証人を用意する必要がありますが、これは現実的であるとはいえません。変更を認めるかどうかは金融機関の判断に委ねられるためです。
現実的な策としては購入した不動産を売却し、売却金額でローンを全額返済することが考えられます。また転職などで片方の収入が多くなり、単独名義でローンを組み直したい場合は、借り換えを行うのも手です。
連帯債務者が死亡した場合は?
団体信用生命保険に加入していれば、住宅ローンの残債額にかかわらず完済され、遺族は返済免除になります。もちろん、そのままその家に住み続けることも可能です。
しかし、次のような場合には返済が免除にならないため注意しましょう。
- 団体信用生命保険に加入していなかった
- 住宅ローン返済に延滞があった
- 連帯債務者が死亡し、団体信用生命保険に加入していなかった
フラット35では、連帯債務者も団体信用生命保険に加入することができるため、万が一に備えてぜひ加入しておくことをおすすめします。
連帯債務に住宅ローンを借り換えた場合は?
当初単独で返済していたローンを借り換える際は、新たに連帯債務者を追加することもできます。ただし、新たに加えられた連帯債務者は住宅ローン控除を受けることができません。
また、連帯債務を設定したローンを借り換えることもできます。借り換える場合には、どちらか一方を他の金融機関に移すことはできず、必ず債務者と連帯債務者がそろって手続きをしなければなりません。
借り換え時の審査は当初の審査よりも厳しくなるといわれています。金利が安いからといって、むやみに借り換えを検討するのではなく慎重な行動が大切です。
債務者が自己破産した場合は?
債務者が自己破産してしまうと、たとえ連帯債務者が債務者の分の支払いまで担えるとしても、債務者の持分は差し押さえられます。持分を差し押さえるといっても、不動産は明確に半分だけ売却するということはできません。よって不動産の権利を半分失うことになり、差し押さえられてしまうと連帯債務者まで生活ができなくなります。
債務者が自己破産しても、連帯債務者がその家を所有し続けたい場合は、任意売却で債務者の持分を買い取るという解決方法がおすすめです。ある程度の資金は必要になりますが、その後は単独名義で家を持ち続けることができます。
しかし、まずは自己破産する前に手を打つことが大切です。債務者の分まで返済する能力があるなら、住宅ローンの借り換えをするなどして単独名義のローンに切り替えましょう。また、返済能力があるうちに売却して住み替えることも一つの手です。
任意売却についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

まとめ
収入を合算し、連帯債務者を設定して住宅ローンを組むことは、メリットだけでなくデメリットも多いです。借入できる金額が上がり節税効果も高い仕組みですが、双方に安定した収入が求められ、離婚後の問題が大きくなりやすい傾向があります。
不動産購入は、人生の中で最も大きな買い物になる人が多いでしょう。住宅ローンは便利な制度ですが、巨額の負債を背負うことになることと同義であることを忘れてはなりません。住宅ローンを組む前に、連帯債務者の役割をしっかり理解しておくとよいでしょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
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