「共有名義のマンションを手放したいけれど、他の所有者は所有を続けるつもりらしく困っている…」とお悩みではありませんか?
共有名義のマンションは、まるごと売却するには所有者全員の合意が必要であるため、自分の持分だけでも売却したいと考える方も多いでしょう。共有名義マンションのうち自分の持分だけであれば、自分の意思のみで売却が可能です。ただし、売却方法にはいくつかのケースがあり、自分に適した方法を選ぶ必要があります。
本記事では、共有名義マンションの持分を売却する方法について詳しく解説します。以下で解説する売却方法や流れを参考にしていただき、よりよい形で売却を実現させてください。
マンションの持分についての基礎知識
共有名義マンションの持分を売却する方法を解説する前に、基本的な知識を紹介します。手続きの誤りなどから法的なトラブルにつながる恐れもあるため、その仕組みをきちんと確認しておくと安心です。
マンションの持分とは
マンションの持分とは、複数人で共有しているマンションにおける共有者それぞれの権利の割合のことです。そして所有者が複数いるマンションなどの不動産のことを共有名義不動産といい、所有者を共有名義人や共有持分権者、共有者などとよびます。
マンションの持分は、主に取得時に支払った資金の割合で次のように求められます。
ただし、相続や話し合いのもと持分が決められている場合はこの限りではありません。
マンションの持分を確認する方法
マンションの持分がどのように分けられているかわからない場合には、登記事項証明書を取得して確認しましょう。登記事項証明書は法務局で誰でも取得でき、権利者の名前や持分が記されています。また、マンションを所有している証明である権利証・登記識別情報にも記載されています。
毎年所有者あてに届く固定資産税評価証明書でも確認が可能ですが、登記事項証明書は売却にも必要な資料であるため、取得しておいて損はないでしょう。
ただし、登記事項証明書や権利証・登記識別情報で持分はわかりますが、書かれているのは「2分の1を所有」といった割合のみです。「ここからここまでを○○さんが所有」など、明確な線引きは書かれていないので注意しましょう。
共有持分のマンションで勝手にできないこと
先述したように、共有名義不動産を丸ごと売却する場合は、共有名義人全員の合意が必要です。この他にも共有持分のマンションには以下のことが単独でできないように民法で制限されているので注意しましょう。
- マンションを短期的に賃貸借に出す
- 賃貸借契約を解除する
- 保存の範ちゅうを超えたリフォームやリノベーション
- マンションを他の共有者の分まで売却する
- 抵当権を設定する
- 定期借地として貸し出す
上記の行為を行うなら、共有者の過半数または全員の同意が必要です。勝手に行うと裁判に発展する場合もあるため慎重に行動しましょう。
共有持分のマンションで自分の持分を手放す方法
では、共有名義マンションの自分の持分を手放す方法について解説します。売却前にすべきことと4つの売却方法を併せて説明しますので参考にしてください。
売却前に行うべきこと
持分を売却する方法は4つありますが、どの方法であっても次のことを済ませてから売却することをおすすめします。
- 権利証・登記事項証明書の確認
- マンション取得時のパンフレットの確認
- マンションの相場価格の調査
- 売却にかかる費用の計算
- ローン残債の確認
- 他の共有者に売却することについて相談
先に述べたように、自分の持分だけを売却するのであれば、共有者の合意がなくても売却できます。しかし、全く相談なく売却してしまうとトラブルに発展することになりかねません。許可が必要ないとしても、相談はするようにしましょう。
持分を売却する4つの方法とは
マンションの持分を売却する方法は以下の4つです。
- 機関投資家へ持分を売却
- マンション持分買取の専門業者を利用
- 他の共有名義人へ個人的に売却
- 共有名義人全員の合意でまるごと売却
以下の章でそれぞれの売却方法について、売却の流れや注意点を詳しく解説していきます。
【方法1】機関投資家へマンションの持分を売却
まず、機関投資家へマンションの持分を売却する方法を詳しく解説します。機関投資家とは大量の資金で長期的な運用を行う大口投資家のことです。
機関投資家がマンションの持分を購入する理由
機関投資家は居住するためにマンションを購入することはほとんどありません。株や債券といった資産運用と同様に、収益が得られる投資商品として購入します。
入居者がすでにいるマンションであれば、安定して賃料を得ることができるため購入してもらえることが多いです。また、他の共有者にも交渉を持ち掛け、いずれ単独名義にするための第一歩として購入することもあります。
買取の相談を持ち掛けられるだけでなく、その投資家としばらく収益を分け合うことにもなるため、売却前には必ず他の共有者にも相談するようにしましょう。
売却先の投資家を探す方法
売却する投資家は、個人的な呼びかけではなかなか見つからないでしょう。不動産会社に売却の仲介を依頼することをおすすめします。
不動産会社によって売却価格の基準となる査定額は異なるため、複数の業者で査定を受けましょう。自分のマンションをより評価してくれる不動産会社を見つけることが成功のカギです。
ただし、不動産会社によっては共有名義不動産の売却に長けていない場合もあるため、持分のみの売却経験があるかどうかも基準に業者選びをしましょう。
不動産会社に査定を依頼するときは、一括査定サイトを利用すると便利です。
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一括査定サイトに関してより詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

仲介でマンションの持分を売却する流れ
不動産会社の仲介で自分の持分を売却する場合、次のような手順で行いましょう。
- マンションの持分や状態を確認する
- 複数の不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社を選んで媒介契約を結ぶ
- 売却活動で購入する投資家を募る
- 投資家と売買契約を結ぶ
共有名義マンションは、いずれ単独名義にするとしても手間や時間がかかるため、購入を考える投資家が現れるまで時間がかかる場合も多いです。
また、通常のマンション売却と異なり、所有権を売却するだけであるため引き渡しはありません。
【方法2】マンション持分買取の専門業者を利用
マンションの持分を専門的に買い取っている買取業者に買取を依頼するという手段もあります。購入を希望する投資家が現れない場合や、売却に時間をかけたくない場合におすすめです。
マンションの持分の買取とは
不動産会社の仲介で第三者に売却する仲介売却と異なり、買取の場合は不動産会社と直接取引するため、短期間売却や早期換金が期待できます。業者によっては即日換金システムを整えている場合もあります。
不動産の買取を行う業者もありますが、自分の持分だけを売却する場合は共有持分買取業者への依頼がおすすめです。共有持分買取業者は、その名の通り共有名義の不動産の持分を専門的に扱って買い取ってくれます。
また、仲介業者を依頼するとかかる仲介手数料も、買取業者に依頼した場合はかかりません。売却にかかる費用を抑えたい場合にもおすすめの売却方法です。
不動産買取について詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。

買取業者を選ぶポイント
共有持分買取業者は信用できる業者に依頼することが大切です。ポイントは次の通りです。
- 買取実績が豊富か
- 共有持分不動産についての知識が豊富か
- 相続物件の扱いに長けているか
- 弁護士と提携するなどトラブル対策が取られているか
仲介売却と同様に、複数の買取業者を比較することをおすすめします。上記のような特徴を持った買取業者であれば、高額での取引も期待できるでしょう。
買取価格は仲介より安くなる場合が多い
共有持分買取業者で売却するとすぐに現金化することが可能ですが、仲介売却よりも低い金額で売却することになると考えておきましょう。
というのも、買取業者は購入した持分を転売して利益を得ています。市場の相場価格で売却できる仲介売却と異なり、相場よりも安く売却することになるのです。
買取業者によっても異なりますが、相場の半額程度まで減額されることも珍しくありません。このような理由から、買取業者への売却は「安くてもいいから早く手放したい」「すぐにまとまった資金が必要」という方におすすめします。
【方法3】他の共有名義人へ個人的に売却
持分の売却として多いケースが他の共有者に持分を売却するパターンです。手放したい側にとっても購入する側にとってもメリットがあるため、売却が成立しやすいといわれています。
他の共有名義人なら売却の交渉が容易
売却する投資家や買取業者を探すよりも、共有者のなかから購入者を探す方が簡単であることは想像しやすいでしょう。購入者を見つけやすいため、早期の売却が期待できることは手放す側のメリットです。
また、他の共有者の持分を購入することは、所有持分や収益を増やすことになるため、購入者側にもメリットがあります。
親族や家族間で共有名義人になっていることが多く、交渉がしやすいことも利点です。買取業者や仲介業者に依頼する前に、他の共有名義人に売却を持ち掛けるとよいでしょう。
個人売買でも費用がかかるため注意
共有者同士の売買では、仲介業者を介さずに個人的に取引することも多いです。その場合仲介手数料はかかりませんが、印紙税や登記費用、司法書士報酬といった費用がかかるため注意しましょう。
登記手続きを自分で行う場合は司法書士報酬は不要ですが、共有名義不動産の売買は手続きが複雑になることも多いため、専門家に任せた方が無難です。
また、親族間だからといって無償で譲渡すると、マンションの価値に応じて贈与税が発生することもあるため注意しましょう。
マンション売却にかかる費用については次の記事で詳しくふれているので、ぜひご覧ください。

個人売買はトラブルが発生しやすい
個人売買は仲介する人がいないため、トラブルに発展することも少なくありません。例えば次のようなトラブル事例があります。
- 価格設定が妥当でない
- 売却後に不備や不良が発見される
- 物件情報を明確に提示せず売買が成立してしまう
- 重要事項説明書が発行できず住宅ローンが組めない
- 契約書の不備、口約束のトラブル
共有名義不動産の売買は、親族間といった親しい間柄で行われるため、契約が厳格に行われないことも多いです。明確に契約書に示さず口約束で売買を成立させてしまうと、後に言った言わないの水掛け論になる場合もあります。
このようなトラブルを起こさないためにも、親族間であっても仲介業者を介し、きちんと書類を作成してもらうことをおすすめします。
個人売買のトラブルを回避する対策
仲介手数料は売却費用のなかでも特に大きな負担となります。どうしても個人売買で売却したいと考えているなら、次のようなポイントをおさえてトラブルを回避しましょう。
- 売買の取り決めは全て文章に残す
- 購入者が契約書の内容を全て理解してから契約する
- 弁護士、司法書士、行政書士、宅地建物取引士などの専門家に相談する
トラブル回避のために大切なのは、時間をかけて当人同士が納得できるよう話し合うことです。お互いに疑問点や不安が残ったままの取引とならないよう、書面に記録しながら話し合いましょう。
不動産の個人売買のメリットやおすすめサポートを紹介したこちらの記事も併せてご覧ください。

【方法4】共有名義人の全員の合意でまるごと売却
最後に、共有名義人全員の合意でマンションをまるごと売却する方法をご紹介します。繰り返し述べているように、マンションを一棟売却するには共有名義人全員の合意が必要です。
マンションの権利をまとめて売却するメリット
共有者全員の合意を得ることは、大変手間や時間のかかる行為です。しかし、マンションの権利をまとめて売却することで次のようなメリットがあります。
- 購入希望者を探しやすくなる
- マンションを相場通りの価格で売却できるようになる
- 現金にすることで明確に分割できる
権利の一部よりも、単独名義にできるマンション全体の権利のほうが購入希望者が集まりやすい傾向があります。仲介を依頼できる不動産会社も多く、相場通りの価格で売却できるため、他の方法よりも高く売却できるでしょう。
また、売却して現金にすることで、共有者全員で明確に分割することが可能です。不動産の何割かを所有しているという不明確な資産よりも、現金でまとまった金額を得たほうがよいと考える人も多いです。所有していた割合に合わせて現金を分割することで、全員が納得のいくように分配することができます。
共有名義マンションの売却に必要な書類
共有名義のマンションを共有者全員の合意のもと売却する場合、次のような書類が必要です。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 土地測量図、境界確認書
- 身分証明書
- 実印
- 印鑑証明書
- 住民票の写し
権利証や土地の測量図については、共有名義不動産に限らず不動産の売却に必ず必要です。不動産の所有者であることを証明し、隣地との境界を示すことで購入者が安心して購入できます。
また、身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票の写しは、共有名義人全員のものが必要になるため注意しましょう。
マンションをまるごと売却するときのトラブルを避けるポイント
マンションの権利をまとめて売却する場合は、共有者全員の合意が得られなかったり、売却費用の負担で揉めるなどトラブルに発展する場合もあります。トラブルを避けるポイントは次の通りです。
- 名義人の確認を確実に行う
- あらかじめ売却費用の負担分配を決めておく
- あらかじめ売却代金の分配を決めておく
- 委任状を作成して売却する
共有名義不動産の売却に関するトラブル事例や回避方法について解説したこちらの記事も参考にしてください。

【Q&A】マンションの持分
本記事の最後に、マンションの持分についてよくある疑問とその答えをまとめました。共有名義マンションの売却にぜひお役立てください。
マンションの持分の放棄はできる?
結論からいうと、持分を放棄することは可能です。これを共有持分の放棄といいます。
放棄した持分に関しては、他の共有者に分配される仕組みです。共有者が自分を含め2人の場合はもう一方の所有者に所有権が移ります。複数人いる場合には、持分の割合に従って分配されます。
共有持分の放棄は他の共有者の許可が必要ありません。しかし、持分の放棄に伴って発生する名義変更の登記手続きは他の共有者と協力して行うため、現実的には相談が必要です。
共有持分者が行方不明でも売却はできる?
相続で手に入れた共有名義不動産などは、複数の共有者のなかに連絡が取れない人や行方不明者がいるケースも珍しくありません。そうした場合には、不在者財産管理人制度を利用しましょう。
不在者財産管理人制度とは、行方不明者の財産を管理する目的で家庭裁判所が代理の管理人を選任する制度です。その際、家庭裁判所に提出が必要な書類は以下の通りです。
- 不在者財産管理人申立書
- 不在者の戸籍謄本、戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
- 不在の事実を証明する資料
- 不動産登記事項証明書
- 申立人の戸籍謄本、賃貸借契約書の写し等
不在者財産管理人を選出し、家庭裁判所に売却の許可を得ることで、共有者が行方不明のままでも売却ができるようになります。
共有持分のトラブルは誰に相談したらよい?
持分のみの売却でも、権利をまとめて売却する場合でも、トラブルはつきものです。最終的に訴訟に発展するケースも珍しくないため、不動産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士のなかでも、共有名義不動産についてのトラブルを解決した実績を持っている弁護士に依頼すれば、早期の解決を目指すことができるでしょう。
ただし、トラブルによっても異なりますが、訴訟や相談には費用がかかります。今回ご紹介したトラブル回避の方法などを参考に、できる限りトラブルが発生しないよう努めることが大切です。
不動産売買のトラブル解決における弁護士の役割について解説したこちらの記事も参考にしてください。

まとめ
共有で所有しているマンションでも、自分の持分だけであれば許可なく売却することができます。投資家や買取業者を利用したり、他の共有者に売却を持ち掛けたりするとよいでしょう。また、場合によっては共有者全員の許可を得て権利をまとめて売却することもメリットが大きいです。状況に合わせてどのように手放すか検討することが大切です。
ただし、共有名義不動産の売却にはトラブルがつきもので、こじれると訴訟に発展するケースもあります。共有者同士できちんと話し合い、全員が納得できる形での解決を目指しましょう。
共有名義不動産の売却方法については次の記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。

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