家の売却は引き渡しが済むと、不具合が見つかっても自分には責任はもうないと思っていませんか。実は何年も責任はつきまとい、修理費用を求められることもあります。既存住宅売買瑕疵保険はそのような負担を軽減してくれる、売却前に加入できる保険です。
この記事では、既存住宅売買瑕疵保険の基本的なことから、メリット・デメリット、保険以外でトラブルを減らす方法まで解説します。売却後の生活に不安材料を残さないためぜひ参考にしてください。
既存住宅売買瑕疵保険とは
家にかける保険といえば火災保険や地震保険が一般的です。既存住宅売買瑕疵保険も家にかける保険の1つですが、新築を購入したり注文住宅を建てたりした人にとっては馴染みのないものです。この保険にはどのような役割があるのかや費用の相場などを見ていきましょう。
売却する家の不具合を保証
家を売却すると、契約不適合責任というものを負うことになります。この責任は、売買契約書に記載した家の品質などに問題があると、引き渡し後でも修理費用を負担したり、代替品の引き渡しをしたりする必要があります。売却の時に気づいていなかった不具合でも請求され、深刻な問題なら数百万円の負担になったり、契約を解除されることもあります。
売却の時に既存住宅売買瑕疵保険へ加入しておけば、修理費用などは保険の範囲内で支払わなくてよくなります。任意の保険ですが、契約不適合責任は不具合を購入した人が知ってから5年は請求権があるため、未加入では不安になってしまいます。
既存住宅売買瑕疵保険の保証対象
既存住宅売買瑕疵保険の保証対象は、家の基本的な構造と雨漏りに関する部分で、戸建てでは次の部分が対象となります。
基本的な構造 | 雨漏り |
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構造が基本的な耐力性能を満たしていなかったり、屋根などの防水性能が落ち雨漏りなどが発生したりした時に、保険を適用できます。適用されると問題の調査費用や補修費用、住んでいる人の仮住まい・移転費用を負担してもらえます。
引き渡し後に台風や地震などで、火災や落雷、地盤沈下の被害が合った場合は、契約不適合責任とは関係なく、購入した人が加入している火災保険や地震保険の対象です。
加入には専門機関による検査
既存住宅売買瑕疵保険は保険会社がリスクを肩代わりするため、加入するためには専門機関による検査が必須です。検査は国土交通大臣に指定された次の住宅瑕疵担保責任保険法人が主に行っています。
- 住宅保証機構
- 住宅あんしん保証
- 日本住宅保証検査機構
- ハウスプラス住宅保証
- ハウスジーメン
実際には、上記の法人以外にも検査機関に登録された業者が検査を行うこともあります。既存住宅状況調査技術者や既存住宅現況検査技術者の資格を持った人が、基礎や外壁・屋根のひび割れ、床や柱の傾斜などを目視で確認し、問題がなければ加入可能です。
保険に加入するのは検査機関
自動車保険などでは自身が保険会社に加入し、トラブルがあれば被害者へ保険会社が支払いをします。しかし、既存住宅売買瑕疵保険では少し構造が違います。
家を売却する人が検査機関へ依頼をし、検査機関が住宅瑕疵担保責任保険法人へ既存住宅売買瑕疵保険の加入手続きをします。トラブルがあった時の保険金は住宅瑕疵担保責任保険法人が検査機関へ支払い、それから購入した人に支払われるのです。家を売却した人が購入した人とやり取りすることはないです。
購入する側が保険への加入を希望した場合でも間に検査機関が入り、保険金を支払ってくれる所と直接契約を結べないようになっています。
検査機関が倒産をした場合は、家を購入した人が住宅瑕疵担保責任保険法人へ直接請求をして、保証を受け取ります。
既存住宅売買瑕疵保険の費用の相場
既存住宅売買瑕疵保険にかかる費用は、保険の適用期間、保証額、家の広さで変わります。マンションと戸建てでも費用は変わり、次のようになっています。
戸建ての場合
保険の適用期間 | 保証額の最大 | 家の広さ(125平米未満) | 家の広さ(125平米以上) |
2年 | 500万円 | 約2.6万円 | 約2.8万円 |
2年 | 1,000万円 | 約2.8万円 | 約3万円 |
5年 | 1,000万円 | 約4.9万円 | 約5.5万円 |
マンションの場合
保険の適用期間 | 保証額の最大 | 家の広さ(70平米未満) | 家の広さ(70平米以上) |
2年 | 500万円 | 約1.5万円 | 約1.6万円 |
2年 | 1,000万円 | 約1.6万円 | 約1.7万円 |
5年 | 1,000万円 | 約2.9万円 | 約3.1万円 |
さらに家の検査料として5~10万円の費用もかかります。細かな料金設定は住宅瑕疵担保責任保険法人によって異なるため、複数社で比較をしておきましょう。
個人向けと業者向けの違い
既存住宅売買瑕疵保険には、個人向けだけでなく業者向けのものもあります。契約不適合責任は業者へも適用されるため、もしもに備えて利用されています。業者向けは買取された中古住宅を販売する時に使われ、個人向けとの違いは次の3つです。
- 業者が住宅瑕疵担保責任保険法人へ手続き
- 家の検査は住宅瑕疵担保責任保険法人
- 保険金は業者へ支払われ、それから家の購入者へ渡る
業者が倒産してしまった場合は、個人の時と同様に、購入した人が住宅瑕疵担保責任保険法人へ請求をして、直接支払いを受け取ります。
既存住宅売買瑕疵保険を利用する3つのメリット
既存住宅売買瑕疵保険は任意の保険であり、加入しなくても家の売却は成立します。検査も受けなければならないから、面倒に思えてしまいます。しかし、この保険には次の3つのメリットがあるため、1つずつ詳しく見ていきましょう。
- 家に問題が見つかってもトラブルが少ない
- 家の安全性を買主にアピールできる
- 税の優遇措置で買主が現れやすくなる
家に問題が見つかってもトラブルが少ない
どれだけ注意を払っていても、欠陥のリスクをゼロにして家を売却するのは困難です。引き渡して数年後に高額な修理費用を請求されても、そのときに支払えるだけのまとまったお金があるとは限りません。
既存住宅売買瑕疵保険に加入していれば、支払いの上限はありますが、修理費用は負担してもらえます。修理に仮住まいが必要になるほどの問題であれば、貯蓄を取り崩すだけでは不足するかもしれません。新居でローンを支払っている人なら、返済を維持するため現在の生活への悪影響は避けられないため、保険の存在は重要です。
トラブルについて購入した人と直接やり取りすることはなく、修理の対応も全て業者がしてくれます。対応に慣れた専門家が間に入ってもらえるから、トラブルの早期解決につながるでしょう。
家の安全性を買主にアピールできる
中古住宅を購入する人は、誰しも安全な物件を選びたいと思うものです。既存住宅売買瑕疵保険へ加入するためには検査が必須のため、耐震や防水など基本的な性能に問題ない家だといえます。
売り出したタイミングで似た条件の家があった場合、購入希望者へ既存住宅売買瑕疵保険に加入済みだから安全性が高いとアピールでき、成約につながるでしょう。
また購入した人は、不具合が見つかったとしても修理費用などは保険から下りるから、売却した人の未払いを心配しなくてよくなります。
税の優遇措置で買主が現れやすくなる
既存住宅売買瑕疵保険へ加入することで、家を購入する人は次のような税の優遇措置を受けられるようになります。
- 住宅ローン減税:ローン残高で所得税や住民税の節税が可能
- 居住用財産の買換え特例:元の家の売却益にかかる税金支払いの先延ばし
- 登録免許税の軽減措置:所有権移転登記で税率が1.7%減
- 不動産取得税の軽減措置:固定資産税評価に控除が適用され不動産取得税の節税
税の優遇ではないですが、自治体からの補助金や融資を購入する人が受けられる場合もあります。家の購入には建物や土地の代金以外にも様々な費用がかかるため、税の優遇などを受けられることは、購入する人にとって大きなメリットです。
競合物件と同じ売り出し価格であっても、税の優遇などでトータルの費用に差がつきます。自身が売り出している家を選んでもらいやすくなるでしょう。
既存住宅売買瑕疵保険を利用する2つのデメリット
メリットしかないのであれば、既存住宅売買瑕疵保険は迷わず加入できるのですが、当然デメリットもあります。次の2つのデメリットをメリットと比較して許容できるであれば、申し込みを前向きに検討しましょう。
- 家を売却するための費用が増額
- 古い家では保険を利用するために改修
家を売却するための費用が増額
ローンが残っている家を不動産会社に依頼して売却をする場合、基本的に以下の費用がかかります。
- 仲介手数料
- 抵当権抹消費用
- ローンの一括返済の手数料
- 印紙税
売却で利益が出ると譲渡所得税も支払うことになり、トータルで数百万円になることもあります。既存住宅売買瑕疵保険へ加入すると、追加で7~15万円の費用の増額です。
印紙税や保険代は、家の売却による代金が入る前に支払う必要があります。家の代金を受け取るまで、お金に余裕のない生活が続くかもしれないです。
古い家では保険を利用するために改修
既存住宅売買瑕疵保険へ加入するには、専門機関の検査を受けなければなりません。もし検査の段階で問題が見つかると、改修して再検査を受けることになります。
特に現在の耐震基準より安全性が低い基準で建てられた1981年以前の家では、大幅な改修が必要です。相場は150万円程で、築年数が古くなるほど高額になる傾向です。自治体の助成金を受けたとしても、数十万の出費になるでしょう。
古い家では改修の費用をかけてまで保険に加入をするより、そのまま売却してしまったほうが、出費は抑えられます。また改修に時間がかかってしまうと、売却するタイミングを逃す可能性も出てきます。
家の売却トラブルを保険以外で減らす方法
家の売却に関わるトラブルは契約不適合責任以外でも起こります。自身が不利な状況で売却を進められてしまったり、交渉で購入希望者と言い合いになったりして、損をしてしまうかもしれないです。既存住宅売買瑕疵保険では解決できないもののため、紹介していく5つの方法を覚えておきましょう。
家の売却の基礎知識を身につけておく
家の売却は、大半の作業を不動産会社に任せることになります。しかし初めてだからといっても、基本的な知識も身に付けず丸投げしていては、売却後によりよい方法に気づいて後悔するかもしれません。
また問題なく売却が進んでいても知識がないことで、高額な請求をされたと思ったり、想定より時間がかかっていると感じたりします。
家の売却の基本として、引き渡しまでの流れや、売却にかかる費用は抑えておきましょう。全体の流れの把握で次にやるべきことがわかり、かかる費用から売却で手元に残るお金のシミュレーションもできます。
戸建てやマンションを売却する流れやかかる費用について、詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。



信頼できる不動産会社で家の売却をする
仲介を依頼した不動産会社が売却する人の利益を最優先してくれるとは限らないです。自社の利益を優先して他社からの購入依頼を断ったり、ろくな説明もしないで売却を進められたりして、実は損をしているという場合があります。
数多くある不動産会社の中から、1件1件問い合わせをして見極めようとしていては、膨大な手間がかかってしまいます。そこで信頼できる不動産会社を探すなら、一括査定サイトを活用しましょう。
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口約束で手続きを進めない
家を売却する条件は最終的に売買契約書で決定するのですが、口約束の内容と売買契約書の内容に違いがあると、トラブルの元となります。証拠がなければ不毛な言い合いが続き、契約が白紙に戻ることもあります。
トラブルを避けるためには、些細なことでもいつ誰が言ったことなのかを文章で残しておくことが大事です。何かあったときの証拠となり、相手に見えるようにメモを取っていると無責任な約束事の抑止力にもなります。
文章で残した内容はその場で相手にも確認をしてもらうと、認識の齟齬もなくなりスムーズに家の売却を進められます。
把握している家の不具合は隠さない
家に不具合があることを把握していて、隠したまま売却をしても契約不適合責任から逃れることはできないです。購入した人から厳しく追及をされ、対応をしなければ裁判にまで発展します。
むしろ気になる部分は正直に伝え、売買契約書に全て記載しておく方がよいです。問題が起きても契約内容と変わらない品質という判断で、責任を取らなくてよくなります。
自身では問題ないだろうと思っていることでも、購入する人にとっては重要なことかもしれないです。後から隠すつもりはなかったと弁明しても通じないため、不動産会社の担当と相談しながら売買契約書に書く内容を決めていきましょう。
売買契約で責任を負う期間を限定する
契約不適合責任では責任を負う期間などが民法で定められています。基本は購入した人が気づいてから1年以内に、修理費用などの請求をしなさいというものです。売却から何年も経った後でも、相手が気づいてから1年以内なら請求されてしまいます。
しかし責任を負う期間は売買契約書で同意した内容が優先されます。例えば、契約不適合責任は引き渡しから1年以内や、設備の故障は責任を負わないなどの条件に相手が同意していれば、法律の規定よりその内容が適用されます。
既存住宅売買瑕疵保険を利用する場合でも、期間を短く設定できるなら保険の適用期間も短くてよくなり、費用の節約ができます。
既存住宅売買瑕疵保険を利用するときの疑問
ここまで既存住宅売買瑕疵保険の基本的なことから、メリット・デメリットを紹介してきました。しかし実際に申し込みをする段階で気になることも出てきます。そこでよくある3つの疑問について、詳しく解説していきます。
保険料は買主に負担してもらえるか
既存住宅売買瑕疵保険にかかる費用は、検査料を含めて10万円以上かかることもあります。家を売却する側からしたら、できるだけ費用はかけたくないものです。
保険料は買主から加入を求められた場合なら、負担をしてもらうことが可能です。保険に加入していれば税の優遇が期待できても、買主側からは加入できません。そのため保険の負担をしてもらうことが可能になるのです。
売却後のリスクも下げるため自身からは加入せず、買主に既存住宅売買瑕疵保険の存在を紹介してみるのも、節約のためよいのではないでしょうか。
保険を利用するときインスペクションは必要か
インスペクションとは専門家による建物の現状調査で、既存住宅売買瑕疵保険に加入時の検査と似たようなことが行われます。しかしインスペクションは、保険の検査では調べない設備の劣化まで調査をします。保険適用外の所での不具合を避けるため、受けていたほうがよいです。
またインスペクションで問題があるのなら、既存住宅売買瑕疵保険へ加入するかどうかや、そのまま売却を進めてもよいのかなどを検討できます。
インスペクションとは何かやかかる費用について、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。


既存住宅の売買以外でも瑕疵保険はあるのか
瑕疵保険は既存住宅の売買以外に、新築住宅の販売やリフォーム、大規模修繕工事の3つについて用意されています。仕組みはいずれも共通で、次のようになっています。
- 家に住む人が業者に保険への加入を依頼
- 業者が保険会社と契約
- 家の不具合に対して保険会社が業者へ保険金を支払い
- 保険金を使い家の不具合の補修
業者は保険に加入することで補修費用をまかなえ、家に住んでいる人は業者が倒産した時でも補修費用を確保可能です。売却後に注文住宅を建てたり中古住宅をリフォームして住んだりする時は、瑕疵保険を付けた方が安心して生活できます。
まとめ
既存住宅売買瑕疵保険は、家を売却する時に契約不適合責任で高額な修理費用の負担を避けるため必要です。加入には検査を受け7~15万円の費用がかかりますが、購入希望者の節税につながり、早期に契約がまとまる可能性が高くなります。
また不動産会社の厳選や、売買契約書の作り方でも家を売却するときのリスクは下げられます。不具合は隠さないで、家の状態を説明しましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
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