現在住んでいる家が持ち家ですと、転居をする際にその家を売却しなければなりません。さらに、転居先の家を新しく購入するのであれば、売却と購入という2つの大きな手続きを同時に行うことになります。
このような「住み替え」の場合、不動産の売却と購入、それぞれにかかる税金を合わせるとかなりの額になるのではと、不安に思っている人もいることでしょう。
この記事では、不動産の売却と購入を同時に行う「住み替え」において、税金がいくらくらいかかるのか、また、どのような手続きが必要なのかなどについてまとめました。住み替えを検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
住み替えでは2つの段階で税金が発生
持ち家から持ち家への住み替えの場合、売却と購入との、2つの段階で税金が発生することになります。
まず、「住み替え先の住宅」の購入と、「住み替え前の住宅」の売却、それぞれにおいて、どのような税金を支払う必要があるのかをみていきましょう。
住み替え先の住宅購入で支払う税金
住み替え先の住宅を購入した際に支払う税金は、以下の通りです。
- 印紙税
- 登録免許税(所有権移転登記)
- 登録免許税(抵当権設定登記※住宅ローンを設定した場合)
- 不動産取得税
それぞれについて、詳しく説明していきます。
印紙税
印紙税とは、契約書などの公的な書類を交わす際に課せられる税金で、税額分の収入印紙を購入し、売主と買主、それぞれの契約書に貼付することによって納税します。
納税額は、契約書に記載されている取引額によって決まります。取引額が、1,000万円を超えて5,000万円以下場合、印紙税の額は2万円です。ただし、2022年(令和4年)3月31日までは、軽減措置が延長されているので1万円となります。
登録免許税(所有権移転登記)
不動産の権利関係を保存したり移転したりする際には法務局で登記手続きを行いますが、その際に課せられるのが「登録免許税」です。
不動産を購入した場合、売主から買主に所有権を移転する必要があります。この場合の登録免許税は、一般的に移転される側(買主)が負担する場合が多いです。
登録免許税(抵当権設定登記)
住宅ローンを設定して住居などの不動産を購入した際は、その不動産に抵当権が設定されます。この抵当権を登記する際にかかるのが「抵当権設定登記」の登録免許税です。
抵当権設定登記の登録免許税は、債権額の0.4%です。2022年(令和4年)3月31日までは、軽減税率が適用されるため、0.1%になります。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を購入(取得)したときに課せられる税金です。土地と建物、それぞれ異なる税率で課税され、不動産の取得後、半年ぐらいすると納税通知書が届きます。
不動産取得税は、以下の計算式で算出されます。
取得した不動産の課税標準額(固定資産評価額)×税率=不動産取得税
2021年(令和3年)3月31日までの税率は、以下の通りです。
土地および居住用建物:課税標準額の3%
非居住用の建物:課税標準額の4%
2021年(令和3年)3月31日までに居住用の宅地を購入した場合は、その土地の課税標準額の2分の1に税率を乗じたものが不動産取得税額になります。
住み替え前の住宅の売却にかかる税金
次に、住み替え前の住宅を売却する際にかかる税金について説明していきます。
住宅を売却する際にかかる税金は、以下の通りです。
- 印紙税
- 登録免許税(抵当権抹消登記※住宅ローンを設定していた場合)
- 譲渡所得税
以下、それぞれについて、詳しく説明していきます。
印紙税
売買契約書は、売主、買主ともに同じものを1通ずつ作成します。
したがって、住み替え前の住宅を売却する際の印紙税についても、「住み替え先の住宅購入で支払う税金」と同じ内容になります。
登録免許税(抵当権抹消登記)
住宅ローンを設定して不動産(住宅)を購入した際には抵当権設定登記をしますが、売却時には、この抵当権を外さないといけません。その手続きが、抵当権抹消登記手続きです。
抵当権抹消登記の際の登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。よって、建物と土地がある場合は、2件で2,000円となります。
譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合、通常の所得とは別に、その利益(譲渡所得)に対して「所得税」と「復興特別所得税」、「住民税」が課せられます。これらを合わせたものが、一般的に「譲渡所得税」と呼ばれています。
しかし、売却益(譲渡所得)全額に対して税金が課せられるわけではありません。譲渡所得から、その不動産を取得(購入)した際と譲渡(売却)した際の費用を引いた額に、譲渡所得税の税率を乗じて譲渡所得税が算出されます。
計算式は、以下の通りです。
譲渡所得-(取得費+譲渡費)=課税譲渡所得
課税譲渡所得×税率=譲渡所得税
この譲渡所得税の税率は、売却した不動産を所有していた期間によって変わります。所有期間が5年以下の場合を「短期譲渡所得」、5年を超える場合を「長期譲渡所得」といい、それぞれの税率は以下の表の通りとなります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得(所有期間5年超) | 15% | 5% |
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 30% | 9% |
※所得税には、2013年(平成25年)1月1日から2037年(令和19年)12月31日までの間、所得税額の2.1%が復興特別所得税として加算されます。
住み替えで対策できる税金は3種類
住宅の売却と購入を同時に行う住み替えでは、さまざまな税金がかかることがわかりました。住み替えにはいろいろな費用がかかるため、できれば少しでも税金を節約したいと思う人も多いでしょう。
住み替えの際にかかる税金のうち、節税対策ができるものは以下の3種類です。
- 不動産取得税
- 印紙税
- 譲渡所得税
それぞれの節税対策について、詳しく説明していきます。
不動産取得税の節税
不動産取得税は、新築の場合の軽減措置があります。軽減措置を受けられる新築物件の条件は、以下の通りです。
・床面積が、50㎡以上240㎡以下の物件
・居住が目的の物件(別荘やセカンドハウスも含む)
この条件を満たした物件を取得した場合、1,200万円が評価額から控除されます。つまり、新築の建物の固定資産税評価額が1,200万円以下ならば、建物部分の不動産取得税は課せられないことになります。
さらに、建物が「認定長期優良住宅」に認定されれば、控除額が1,200万円から1,300万円になる特例もあります。この特例の対象になると、不動産取得税だけでなく、固定資産税や登録免許税も控除されるので、新築の場合は、条件に当てはまるかどうかを確認してみることをおすすめします。
「認定長期優良住宅」の認定要件は、さまざまです。詳しい内容については、国税庁のホームページの参照をおすすめします。
国税庁ホームページ「No.1221 認定長期優良住宅の新築等をした場合(認定長期優良住宅新築等特別税額控除)」
軽減措置を受ける場合は、都道府県の税事務所へ申請する要があります。しかし、万が一軽減措置を申請せずに不動産取得税を支払ってしまったとしても、不動産取得から5年以内であれば、差額分の還付を受けることが可能です。すでに支払っている場合でも、期限内ならば確認してみるとよいでしょう。
書類のコピーで売却時の印紙税を減らす
不動産売買における契約書は、一般的に、売主分、買主分の2通を作成し、それぞれに収入印紙を貼付して印紙税を納めることになっています。
しかし、売主にとっては、売却して所有権が移転した不動産の契約書を持ち続ける必要がないともいえます。したがって、売主側の契約書の収入印紙貼付を省略することも可能です。
この場合、収入印紙を貼付した買主側の売買契約書をコピーして、売主側が保管する契約書とします。収入印紙を貼付する前のコピーだと、コピーした売主側の契約書にも収入印紙を貼付する必要があるので注意しましょう。
しかし、この方法だと、売主分の契約書の効果がなくなってしまうため、何かトラブルが起きたときの対応に困る場合もないとはいえません。よって、あまりおすすめできる方法ではないということを認識しておきましょう。
確定申告で特例や控除を使う
譲渡所得税の元となる「課税譲渡所得税」の計算方法は、先にあげたように、以下の式になります。
譲渡所得-(取得費+譲渡費)=課税譲渡所得
この課税譲渡所得の額が、低くなればなるほど、譲渡所得額も低くなるため、譲渡所得から差し引く「取得費」や「譲渡費」をできるだけ多くあげることが、譲渡所得税の節税につながります。不動産売買にかかった仲介手数料や契約書の収入印紙代などは、きちんと領収書を保管しておくようにしましょう。
また、他にも課税譲渡所得税を節税するための控除や特例があります。次の項目で詳しく説明をするので、参考にしてみてください。
税金の特例や控除を適用する場合には、確定申告が不可欠です。住み替えをした翌年は、確定申告を忘れないようにしましょう。
住み替えの税金で使える5つの特例や控除
先の項目で、住み替えの際の節税対策として、特例や控除の適用があると説明しました。
では、不動産の売買では、具体的にどのような特例や控除があるのでしょうか。ここでは、住み替えの際に使うことができる、特例や控除についてまとめてみました。
住み替え(住宅の売買)において適用できる、主な特例や控除は以下の通りです。
- マイホーム売却における3000万円の特別控除
- マイホーム所有期間が10年超えで軽減税率
- 買い換え特例による繰延べ納税
- 売却損が出た場合の通算損益
- 住宅購入時の住宅ローン減税
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
マイホームの売却で最大3,000万円控除
マイホーム(居住用の住宅)を売却して譲渡所得が出た場合は、その譲渡所得から最高3,000万円が控除されます。これを「マイホームを譲渡した3,000万円の特別控除の特例」といい、所有期間に関係なく適用することができます。
この特例を受けるためには、売却した住居が居住用である以外にも、さまざまな要件を満たす必要があります。適用を検討している場合は、国税庁ホームページ「 No.3302 マイホームを売ったときの特例」を参照して確認してみてください。
「マイホームを譲渡した3,000万円の特別控除の特例」が適用されると、譲渡所得が3,000万円以下なら課税譲渡所得が0円となるため、大きく節税できることになります。
しかし、確定申告をしないとこの特例を受けることができません。要件を満たしているかどうかを確認したうえで、確定申告書に「譲渡所得の内訳書」などを添付して、住居を売却した翌年の確定申告の際に忘れないように申請しましょう。
マイホームの所有期間が10年超えで軽減税率
先に、売却した住居の所有期間が5年を超える場合の譲渡所得税は、長期譲渡所得となり税率が低くなる旨を説明しましたが、10年を超える場合は、譲渡所得額の6,000万円以下の部分について、さらに税率が低くなります。
どれくらい低くなるかというと、所有期間が5年を超える譲渡所得税の税率は15%ですが、所有期間が10年を超えた場合、6,000万円までの部分については、税率が10%になります(どちらも「復興特別所得税」を含まず。また、6,000万円を超える部分については税率15%となる)。
この軽減税率は、「マイホームを譲渡した3,000万円の特別控除の特例」により控除した後にも適用することができます。
税金の支払いを先送りする買い換え特例
2021年(令和3年)12月31日までに居住用の不動産を売却し、住み替え用として代わりの居住用不動産を購入した場合は、一定の要件を満たせば、売却益に対する課税を繰り延べすることができます。これを「特定の居住用財産の買い替え特例」といいます。
ここで注意しないといけない点は、あくまでも、将来、住み替え用に購入した住居を売却する際まで課税が「繰り延べられる」だけであって、決して「非課税」になるわけではないということです。
この特例を受けるためにも、さまざまな要件を満たす必要があります。特に、売却した年を含む3年以内に、「マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」や「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」などを受けている場合には適用できないので注意しましょう。
適用要件については、国税庁ホームページ「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」を参照してください。
また、この特例を適用するためにも、確定申告が必要です。「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」や「登記事項証明書」などの書類を確定申告書に添付して、申請手続きをしましょう。
売却で利益が出ないなら損益通算
不動産を売却して損失が出た場合は、当然ですが、売却益(譲渡所得)に対する課税がありません。)しかし、それだけではなく、売却した年に得た他の所得を相殺して、所得税や住民税の減額が可能な場合があります。これを「損益通算」といいます。
もし、売った年の総所得よりも不動産売却の譲渡損失のほうが大きく、その年内で相殺し切れない場合は、次の年の所得以降に繰越しして相殺できることもあります。
この特例についても、特例の適用要件や特例の適用外などについて、細かく定められていますので、国税庁ホームページ「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」で確認してみてください。
「譲渡損失の繰越控除」が適用できれば、最長で3年間(売った年を含めると4年間)の所得まで繰り越して譲渡損失の控除が可能になります。
しかし、他の特例と同様に、確定申告で申請をしないと適用を受けることができません。譲渡所得がないと、譲渡所得税が発生しないため確定申告を忘れがちになります。譲渡損失が出た場合も、確定申告を忘れないように注意しましょう。
住み替え先の購入で住宅ローン控除
住宅ローンを設定して住み替え用の住居を購入した場合、「住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)」が適用できる場合があります。住宅ローン控除とは、年末の住宅ローンの残高に応じて、一定の金額をその年の所得税から差し引くというものです。
住宅ローン控除の適用は、最長10年間で(2019年(令和元年)10月1日から2020年(令和2年)12月31日までに購入した住宅に入居した場合は13年間)、その控除額は、年末のローン残高の1%になります。
例えば、年末の住宅ローンの残高が3,000万円だった場合、最大で30万円が控除されます(控除額は、年間で最大40万円まで)。先に説明をした「認定長期優良住宅」購入の場合は、年間の控除額が10万円引き上げられ50万円となります。
住宅ローン控除適用の注意点の一つとして、「マイホーム売却における3000万円の特別控除」や「マイホーム所有期間、10年超の軽減税率」などの譲渡特例との重複利用できない期間があるということです。さらに、その期間が、これまでは住み始めてから3年間だったのが、2020年(令和2年)4月から1年延長されて4年間に変更されました。
これは、新居で住宅ローン控除を受けていた人が、3年目に住み替えをすることにより、さらに、譲渡特例も適用するという「重複適用」があったためです。今後、適用を検討している人は注意するようにしましょう。
住宅ローン控除を受けるためにも、確定申告が必要となります。確定申告をして住宅ローン控除が適用になれば、納税した所得税の一部が還付されます。
住み替えで税金を支払う注意点
ここまで、住み替えをする際に、どのような税金がかかるのかについてみてきました。次に、住み替えで税金を支払う際の注意点について説明していきます。
納税できるようにお金を残しておく
税金は、いつ支払っても良いというわけではなく、発生する時期と支払う期限があるので注意が必要です。
例えば、売買契約締結時に支払う税金として印紙税が、物件の引き渡し時には登録免許税が、そして、売却した翌年の確定申告で支払う税金として不動産取得税があげられます。
いざ、税金を支払う段階になって手持ち資金がない、といったことのないように、あらかじめ、いつ支払う税金なのかを確認しておき、準備しておくことが大切です。
確定申告の間違いに気づいたらすぐに修正
確定申告を行った後で間違いに気づいた場合は、そのまま放置せず、すぐに修正をするようにしましょう。
税金を納め過ぎたり、税金の還付額が少なかったりする場合は、更正の請求書を税務署長に提出する「更生の請求」という手続きをとります。この請求ができる期間は、法定申告期限から原則として5年以内です。
反対に、納める税金が足りなかったり、税金の還付額が多過ぎたりする場合は、修正申告を行わなければいけません。納める額が間違っていたことで調査を受け、税務署から税額の更正依頼を受けたり、調査の後で修正申告をしたりすると、追加で支払う税金の他に、過少申告加算税が追加請求されます。
余分な納税が発生しないようにするためにも、税金の計算は確実に行い、間違いに気づいたときにはすぐに修正するようにしましょう。
税金の計算で不明な点は放置しない
住み替えで発生する税金に限らず、税金を納める際に大切なのは、不明な点はそのまま放置しない、ということです。
税金の計算がわからないからと、不動産売買後に確定申告をせずに放置しておくと、特例や控除が受けられないだけでなく、支払うべき税金を納めなかったことに対するペナルティが発生する場合もあります。
計算が複雑でわからない場合は、税金のプロである税理士や、税務署の無料相談窓口などで相談をするようにしましょう。
まとめ
住み替えでは、不動産の売却と購入という2大手続きを同時に行わないといけないため、支払う税金の種類が多く、負担も大きくなります。
しかし、住み替えで利益があった場合だけでなく、損失が出た場合も、確定申告をすることで得になることがあります。確定申告の方法や税金の計算などがわからない場合は、そのままにせず、専門家や税務署の窓口で相談することをおすすめします。
住み替えにかかる税金を正しく知ることで、損をしないよう、上手に節税をしましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.land.mlit.go.jp/webland/
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
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