マンションを売却して、損をしてしまわないか不安になっていませんか?利益を出せるのが理想ですが、不景気が続く現状では周囲の開発が進むなど特別な事情が無い限り、購入時より価値は下がっています。
しかし損をしてしまうからといって、そのまま受け入れるのはもったいないのです。税金の特例や控除が複数用意されており、申請することで損失を最小限に抑えられるからです。
この記事では、マンション売却損をカバーする方法を詳しく解説していきます。特例や控除が適用できるか要件を確認し、可能であれば手続きの準備をしましょう。売却のコツまで紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
まずはマンション売却損について知ろう
マンションの売却を人生の中で何度も経験する人は少なく、専門家にとっては基本的な知識でも、一般の人が知らないのは当たり前です。慣れない言葉ばかりでは、理解するまでに時間がかかってしまうため、まずは売却損の概念から知っていきましょう。
売却損とはどのような状態を指すか
マンション売却損とは、売却した価格が購入したときより安い状態を指します。中古は新品より安くなるのは当たり前です。周囲の開発が進むなど、特別な事情が無い限りは、売却損が発生する確率は高いでしょう。
マンションは新築で何千万円もする買い物です。10%の値下がりでも100万円単位の損になる可能性もあります。カバーする方法を知らないまま、新しい所有者に引き渡してしまい、後悔することになるかもしれません。
売却損が出た場合は税金がかからない
売却損が出るマンションの売買では、税金はかかりません。もし利益があると、所得税・復興特別所得税・住民税の3つの支払いを求められます。税率は最大39.63%になり、毎年の給与から源泉徴収されている分とは別に納税をします。
売却損で税金がかからないのは良いことですが、トータルで資産は減少してしまいます。お金の不安を減らして引っ越し先での新生活を送るため、なにかできることはないのかを考えましょう。
売却損が出ると税金を軽減できる
売却損が出た場合、通常の所得で支払っている所得税や住民税に対して、軽減措置が用意されています。源泉徴収されている場合は、軽減措置以降の軽減税率分が返ってきます。
マンション売却で注意すべき点は、これらの軽減措置は一定の条件のもと講じられること、自動では適用されないということです。たとえ条件を満たしていても、自ら申請をしない限り所得から税金は引かれてしまいます。
スムーズに軽減措置の申請をするため、特例の種類や受けるための要件を知っておきましょう。
マンション売却損で利用できる2つの特例
マンション売却損で利用できる特例は2つあり、どのような状況で売買をしたかによって、申請するものは変わります。よくある住宅ローン残債ありの場合と、買い替えの場合について紹介しますので、要件を確認していきましょう。
住宅ローン残債ありのマンションを売却で損した場合
住宅ローンの残債がある状態でマンション売却損が発生した場合、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」という制度があります。マンション売却損をその年の他の所得と相殺(損益通算)して、所得税や住民税を減らすことが可能です。相殺できなかった額は翌年に繰り越され、最長で3年間は税金が安くなります。
控除される額は、住宅ローンの残債から引き渡して手元に残ったお金を差し引いたものが限度です。3,000万円の残債があり、売却で2,500万円が手元に残ると、500万円が損益通算に使われます。
最新の令和2年4月1日に定められた法令では、令和3年12月31日までは要件を満たして申請をした場合にこの特例が適用されます。年度によって詳細が変更される可能性があるため、利用するときは最新の法令をチェックしましょう。
特例を受けるための要件
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を受けるためには、以下の要件があります。
- 売却する年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えている
- 住宅ローンが10年以上残っている
- 売却するマンションは日本国内にある
- マンションに住まなくなってから3年を過ぎた年の、12月31日までに売却
- 引き渡して残った額が、住宅ローンの残債より低い
売却したいマンションが相続したものであっても、所有期間は亡くなった人が住んでいた期間もカウントされます。名義を自分のものにしてすぐに誰かに引き渡しても、5年以上住んでいてくれたなら問題はありません。
特例除外になるケース
上記で紹介した要件を満たしていても、特例の適用を除外されるケースがあります。繰越控除が適用できる期間中では、所得が3,000万円を超える年は、その年だけ通常通り税金を支払うことになります。
また以下のケースでは、損益通算も繰越控除も適用できないため、注意をしておいてください。
- 一緒の生計で暮らす親族や内縁関係の人に売却
- 3,000万円の特別控除や他の譲渡にかかわる特例を、前年や前々年に適用
- 他の物件で、マンションを売却した年の前年以前の3年以内に、損益通算や繰越控除を適用
マイホームを持っている人が両親から家を相続し、短期間で両方売却したい時は、特例除外になりやすいです。急いで家を手放す必要がない人は、期間を空けた方が節税をしやすいでしょう。
住宅ローンの残債があってもマンションを売却する方法について、詳しく知りたい人は以下の記事も参考にしてみてください。

住み替えでの売却で損した場合
所有しているマンションを売却して新居を購入予定の場合、「居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」という制度があります。住宅ローンを完済している人は、こちらの特例が適用できるかどうかを検討しましょう。
節税できる仕組みは住宅ローンの残債がある場合と同様で、通常の所得と合算して損益を計算し、最長で3年は繰り越して控除を受けられます。新居の支払いなどで出費があるため、できるだけ適用させて新生活の負担を減らしましょう。
特例を受けるための要件
売却するマンションの要件
- 売却する年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えている
- 売却するマンションは日本国内にある
- マンションに住まなくなってから3年を過ぎた年の、12月31日まで売却
- 床面積は50㎡以上
買い替え先の物件の要件
- 売却をした年の、前年1月1日~翌年12月31日までに購入
- 床面積は50㎡以上
- 購入した年の12月31日までに入居(見込みでも可)
- 10年以上の住宅ローン
50㎡は約15坪で、マンションなら2LDKの間取りが一般的です。3人までなら窮屈に感じることなく生活ができるでしょう。
特例除外になるケース
特例から除外されるのは、どのようなケースでしょうか?要件は細かいのですが、チェックをしていきましょう。
繰越控除だけが適用できない場合
- 売却するマンションの敷地面積が500㎡を超える
- 繰越控除を適用したい年の12月31日で、住宅ローンの支払いが10年を切っている
- 繰越控除を適用したい年の所得が、3,000万円を超えている
損益通算・繰越控除ともに適用できない場合
- 一緒の生計で暮らす親族や内縁関係の人に売却
- 3,000万円の特別控除や他の譲渡にかかわる特例を、前年や前々年に適用
- 他の物件で、マンションを売却した年の前年以前の3年以内に、損益通算や繰越控除を適用
住宅ローンの残債ありの場合と、基本的には同じ要件です。売却するマンションや買い替え先の面積にだけは注意をしましょう。
特例と併用して使える控除制度
様々な特例の除外がある中で、住宅ローン控除だけはマンション売却損で併用することが可能です。この制度自体は最長で10年間適用されますが、繰越控除で所得がゼロになっている時は、効力を発揮できません。また取得してから6ヶ月以内に入居しなかったり、床面積の半分以上を事務所などとして使っていたりしても、NGとなります。
どの特例や控除を使うと一番損失をカバーできるのかは、売却をするマンションや、買い替えをするかどうかで変わってきます。どれだけマンション売却損があるのかを見積もることができると、検討をしやすいでしょう。
家の住み替えを成功させる否決について、詳しく知りたい方は以下の記事がおすすめです。

マンションの売却損を計算する方法
マンション売却損は必要な数字さえ分かると、実際に取引をする前にある程度予測することができます。ここでは、計算で必要になる取得費と譲渡費用について、詳しく解説していきます。
取得費を算出する
取得費とは、売却するマンションを購入するときに支払った額です。以下のものが計上できるため、資料をさがしてみてください。
- マンション本体の価格
- 仲介手数料
- 登録免許税と登記の手数料(司法書士に支払ったものも含む)
- 印紙税
- 不動産取得税
- 住宅ローンの手数料や団信の保険料
- 中古マンションを購入場合の固定資産税の精算金
- リフォームや新築のプラン変更の追加費用
- 自己都合で支払ったキャンセル料
マンション本体の価格は経年劣化が考慮され、減価償却という方法を使い、実際に支払った額より安くなります。
もし資料が見つからず正確な額が不明であれば、売却できた価格の5%が概算法として適用されてしまいます。実際は3,000万円支払っていたマンションでも、不明なまま2,000万円で引き渡すと、取得費は概算法で100万円です。金額の差が大きくなりやすいため、できるだけ使わないようにしましょう。
譲渡費用を算出する
マンション売却のために、直接支払ったものが譲渡費用として、以下の項目が計上できます。
- 仲介手数料
- 自身が負担をした印紙税
- 追加で支払った広告費
- より高額で売却するために支払ったキャンセル料
取得費と同様にこれらの費用を計上するには、証拠となるものが必要です。マンション売却を進めて受け取った領収書などは、大切に保管をしておきましょう。
また、引き渡しまでに必要となるが、売却と直接は関係ないとして計上できない費用もあります。
- 住宅ローン完済のための抵当権抹消費用
- 見栄えを良くするための修繕費やクリーニング代
- 新居への引っ越し代
- 不動産会社などへの交通費
いくらかけてもマンション売却損のカバーには繋がらないため、節約をした方がよいでしょう。
譲渡損失(売却損)を算出する
譲渡損失の計算式は、売却代金と取得費、譲渡費用の3つから求められます。
実際に数字を入れてみて、マイナスになっているとマンション売却損となり、特例や控除でカバーする必要がでてきます。売却代金は、一括査定サイトで複数社に依頼を出すと、簡単に相場を把握することができます。実際は値引き交渉などで査定結果より安くなる傾向ですが、大まかな予測は立てられるでしょう。
売却損が出た場合に確定申告はどうなるか
確定申告は、給与所得があり年末調整を毎年している人にとっては、馴染みのない手続きです。もし提出が必要である人がしないと追加で税金を取られ、対応が悪質なら懲役もあり得ます。売却損が出た場合は、どのような対処をしたらよいのかを見ていきましょう。
基本的に確定申告は不要
源泉徴収が行われる給与所得しか収入が無い人は、マンション売却損が発生したとき、確定申告は不要です。計算間違いをしていて後から利益があったことが分かると問題があるため、何度かチェックをしておきましょう。
確定申告が不要な人でも、税務署から連絡が来ることはあります。売却による登記変更は把握されているため、利益があったのかどうかの確認を取られます。無視をしていると、疑いから税務調査が入り対応に手間がかかるだけです。領収書などを用意して、すぐに回答をするのがおすすめです。
特例や控除を受ける場合は確定申告が必要
税金などがお得になる制度は、基本的に条件を満たしていても、申告をしなければ適用されません。マンション売却損がある人は、確定申告をしなくても罰則はありませんが、特例や控除が受けられないです。損失を少しでもカバーしたい人は、手続きが必要になります。
注意しなければならない点は、確定申告の催促は誰もしてくれないことです。サポートが行き届いた不動産会社なら、連絡をしてくれるかもしれませんが、通常は忘れていたならそれまでです。いつ確定申告をするのかを知っておきましょう。
売却した翌年の2月16日~3月15日までに申告
確定申告の時期は決まっていて、例年は2月16日~3月15日の1ヶ月間です。曜日の関係で数日前後することがあるため、最新の情報は税務署のHPなどで確認しておきましょう。マンション売却のタイミングによっては、確定申告まで1年以上のタイムラグがあります。資料は大切に保管をして、作成することをスケジュールに残しておくと、スムーズに進められます。
マンション売却損の計算方法や、適用できる特例や控除で不安がある人は、専門家である税理士に相談するのがおすすめです。確定申告の時期が近づくと、最寄りの役所などが無料の相談会を開いてくれている場合があります。積極的に利用して、最大限カバーをしましょう。
特例を受けるための必要書類
特例を受けるためには、最寄りの税務署などから入手できる確定申告書と、制度ごとに以下の書類を用意します。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を使う場合
- 売却したマンションの所有期間がわかる書類(売買契約書や登記事項証明書)
- 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書
- 繰越控除は追加で、損益通算をした年分からの確定申告書(損失申告用)
居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例の場合
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
インターネット上から利用できるe-taxなら、書類の用意は簡単で計算間違いがなくなり、期間中ならいつでも作成できます。マイナンバーカードがあるなら、スマホからでも確定申告は可能です。
確定申告について基本的な知識を身につけたい方は、こちらの記事もおすすめです。

マンション売却による損失を抑えるには
ここまでマンション売却損が出た場合の対策を紹介してきました。しかし理想は損失を出さないことです。高額での売却が期待できないマンションでも、紹介する3つの対策を実行して、後悔のないようにしましょう。
マンションの売却が得意な不動産会社に依頼する
仲介を依頼する不動産会社は、それぞれ得意分野があります。戸建てや土地の売却が得意な所に依頼をしても、効果的な広告は打てず、購入希望者にマンションの魅力を十分に伝えられないです。
得意分野がマンションで実績がある不動産会社に依頼をすると、他社より高額での売却を期待できます。たとえ損失がでる取引になっても、最小限に抑えてくれるでしょう。
上手な業者選びに役立つ情報を知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

売却期間に余裕を持って計画を立てる
マンション売却は、一般的に広告を出してから購入希望者が決まるまで、3ヶ月はかかります。時間に余裕を持っていないと、内覧を増やすためや値引き交渉に応じるためなどで、想定より安く売ってしまうことがあります。準備だけでも1ヶ月程度は見積もっておき、じっくりと購入希望者を探しましょう。
マンションは1年を通して、人の移動が多い2月や3月に成約件数が増えます。11月や12月から売却活動を始めていると、物件を探している人の目に付きやすく、短期間での引き渡しも期待できます。
一般的な不動産売却にかかる期間について、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

適正価格で売り出す
マンションは、自分の利益を優先した価格設定をすると、いつまで経っても売却するのは難しいです。定価が存在しない不動産で複数社の査定比較からわかる相場は、大事な指標となります。適正価格で売却活動を始め、購入希望者と交渉で合意ができてやっと売却が成立です。
一部の不動産会社は、適正価格より極端に高額な査定を出す場合があります。これは顧客確保が目的で、実際はすぐに値下げを要求してきます。売却にかける時間を短縮するため、まずは一括査定サイトを使い、最新の適正価格を調べておきましょう。登録されている不動産会社の厳選もされているため、スムーズに売却を進めやすくなります。
おすすめの一括査定サイトは「すまいステップ」

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その他の一括査定サイトや選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

まとめ
マンションは立地などの条件が良くないと、売却損をしてしまいやすくなります。しかし確定申告で利用できる特例や控除を適用すると、毎年支払っている税金の負担を軽くすることができます。手続きの手間はかかりますが、是非条件を確認して売却損をカバーしましょう。
さらに不動産会社の厳選や売り出す価格の設定で、できるだけ高くマンションを売却することが可能です。一括査定サイトなどを使い、最新の相場を調べることから始めてみてください。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
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