不動産の価格査定マニュアルとは?査定の仕組みやポイントを解説

不動産売却
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不動産を売却したい時、査定の結果に根拠があるのか不安に思うことはないですか?不動産会社はそれぞれの審査基準において査定をするため、どのような基準で売却価格が決められるのか気になる方も少なくないでしょう。

実は不動産の査定の多くは共通の価格査定マニュアルというものを使用します。マニュアルには建物の評価モデルが定められていて、それを参考に客観的に不動産の価値を判断することができるのです。

不動産の売却を安心して行うためにはまずその仕組みを理解し、どのような基準で査定されているのか理解することが重要です。そこでこの記事では価格査定マニュアルの仕組みやポイントをご紹介します。

価格査定マニュアルに関する基礎知識

価格査定マニュアルは不動産流通を管理する公益財団法人が提供しています。そのため、価格査定をするための情報は実際のモデルを参考にしており、十分な根拠があるのです。一方で、このマニュアルは査定として使用できる不動産類型が限られたり、個人での情報の扱いは難しかったりするので具体的に理解しておく必要があります。

また、一般的な不動産に適用される査定方法でもあり、これを元に売却価格提案書も作成するため売却に備えて知っていて損はない知識といえます。まずは価格査定マニュアルをより詳しく読み解いて、理解を深めていきましょう。

価格査定マニュアルとは

価格査定マニュアルを一言で言えば、一定の基準を元に不動産本来の価値の算出を行ってくれるソフトです。このマニュアルは公益財団法人不動産流通推進センターが制作しており、一般的に不動産会社で使用されています。査定では実際にある不動産の事例などを根拠とし、客観的に算出した情報と他の流動的な評価と合わせて査定価格を決めます。

また、この価格査定は個人住宅用の戸建住宅やマンション、もしくは土地であることが条件です。そのため、資産運用などに使う収益物件に関しては専門外となり、査定対象が限られるというデメリットがあります。しかし、住宅用の建物が条件であるため、ほとんどの場合で活用できる査定方法といえるでしょう。

価格査定マニュアルの査定方法

価格査定マニュアルを使用した場合の査定方法は不動産の種類によって異なります。例えば戸建て住宅の場合には原価法を使用し、マンションや土地には取引事例比較法を使用する場合が多くなります。

また、査定の際には住宅は建物の構造や規模、設備などを考慮して価値を計算します。それに加え、さらにリフォームなど設備がより改良されたものであれば、加味される可能性が高いです。それぞれの情報を合わせて最終的な査定結果を出すことになるでしょう。

原価法とは

原価法とは不動産の評価方法の1つで主に戸建ての査定に使用されるものです。原価を求めるために対象の住宅を新築で建てた場合を想定し、それをベースに価値を算出します。この際に新築に建てた場合に必要になる費用は再調達原価と呼ばれ、工事の材料費だけではなく人件費(付帯費用)も含まれます。

また、さらにそこには最終的に経過年数やリフォームなど維持管理状況も加味されるでしょう。それぞれの情報を合わせ、現在の住宅の価値を算出します。

原価法の計算式は以下の通りです。

積算価格=単価×総面積×残存年数(耐用年数-築年数)÷耐用年数

また、計算が手間な場合は計算シミュレーターなどを使用して計算するのもおすすめです。

取引事例比較法とは

取引事例比較法とは売却したい不動産と類似した不動産を参考にして価格を算出する手法で、主に中古を含むマンションの査定に使われます。算出する際は複数の似たマンションの事例を比較し、個別事情を加味した上で価格を出します。

さらに時価などの変動もあるため、その分を時点修正する必要があるでしょう。この際に算出された価格は比準価格と呼び、最終的に査定に影響する情報です。

比較事例比較法の計算式は以下の通りです。

比準価格 = 取引事例の価格 × 事情補正 × 時点修正 × 標準化補正 × 地域要因比較 × 個別要因比較

価格査定マニュアルの利用方法

価格査定マニュアルは公益財団法人不動産流通推進センターの公式サイトから利用することができます。2012年まではCD-ROM版だけの提供でしたが、現在はWEB版が配信されているためより利用しやすくなっています。年間利用料3,000円を支払うことでスマホやPCなど様々な媒体で簡単に価格査定ができるようになりました。

また、WEB版移行以来、耐用年数も20年から25年に伸びたため算出できる物件の幅も増えています。

価格査定マニュアルの利用は不動産流通推進センターの公式サイトから申し込むことができます。サイト内には価格査定について簡単に動画などで説明したものも用意されているので合わせて目を通すとよいでしょう。

不動産流通推進センター公式サイトはこちらからご確認ください。

価格査定マニュアルで査定できる不動産の種類

すでに前述した通り、価格査定マニュアルでは査定できる不動産の種類が限定されています。不動産で一番多い戸建て住宅、その次に人気のマンション、土地が対象です。いずれも個人住居での使用に限られます。類型が限定されるため、具体的にどんな不動産の種類が査定対象となるのか把握しておくとよいでしょう。

ここからは価格査定マニュアルで査定できる不動産の種類を詳しくご紹介します。

一般的な戸建て住宅

一般的な戸建て住宅の場合には原価法を使用して査定を行います。原価法では再調達原価と耐用年数などを加味して計算するため、査定の対象となる工法が限定されます。

査定の対象となる工法は以下の通りです。

  • 木造軸組工法(在来工法)…筋交いという木を使った骨組みの昔ながらの木造工法
  • 木造枠組壁式工法(ツー・バイ・フォー工法)…材料寸法や釘などの規格が固定された工法
  • 木質プレハブ工法…木造の枠組みに合板を使用して作られた工法
  • 鉄骨造…鉄製の梁や柱で骨組みを作った堅牢な工法

RC戸建は専門家の診断が必要な場合がある

RC戸建(鉄筋コンクリート工法)については専門家の判断が必要になります。何故なら築年数や住宅の痛みによって査定結果が変わるからです。RC戸建ては木造工法よりも耐久性が高いため、単純な耐用年数だけでなく建物の痛み具合を考慮するのです。そのため、RC戸建の場合には専門家の現地調査が必要なことが考えられます。客観的な情報と目視を含めた物件の調査も合わせて査定していくことになります。

また、価格査定マニュアルにおいてもRC戸建は別枠でマニュアルが用意されているので、該当する住宅の場合にはそちらも合わせてご確認することをおすすめします。

一般的な戸建て住宅用地

一般的な戸建て住宅用地(土地)の場合には宅地建物取引業法2条第1項において定められた土地が対象となります。そのため、この法令の対象となる土地ではない場合、査定できない恐れもあるので確認が必要です。

一 宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。

引用:G-GOV 宅地建物取引業法 宅地建物取引業法2条第1項より

この法令で定められていない、査定対象外の土地をリストアップすると以下の通りになります。

  • 戸建て住宅用の開発用地
  • 中高層住居専用地域(マンション)
  • 事業用地
  • 工業用地
  • 農地
  • 農家集落地域
  • 山林
  • 建物の建築に不向きな用地
  • 行政法令上で建築できない用地
  • 優良住宅地域で極端に額が大きい用地
  • 別荘地

このような土地は戸建て住宅用地としては査定対象とされないため、価格査定マニュアルを使って査定はできないことを留意しておきましょう。

居住用ファミリータイプのマンション

居住用ファミリータイプのマンションは価格査定マニュアルを使用して査定することができます。

しかし、逆に似たタイプとして挙げられる定期借地権マンションについては査定することができません。何故なら市場の流通が少なく、取引事例が足りないためです。そもそも査定に出されること自体が珍しいため、慣習化もされていません。

また、さらにはマンションごとに保証金などの形態が違うため、類似したマンションに見えても比較には専門家の評価が必要になことも理由です。つまり価格査定マニュアルはマンションに関しては居住用ファミリータイプのみが査定対象ということになります。

また、具体的にマンションタイプで対象とならないものは以下の通りです。

  • 定期借地権マンション
  • 収益物件(収益ビジネスに使うマンション)
  • 店舗や事務所に併設された居住用マンション

価格査定マニュアル査定の流れ

価格査定マニュアルで査定するには査定地の情報を元に類似する不動産を検索する作業が必要です。そのためには売却を考えている不動産の工法や耐用年数など、客観的な情報をまとめていくことが必要です。さらには見当する不動産が現状どういった状態であるかも重要といえます。正確な情報をまとめて価格査定マニュアルに入力することで、より適正な査定額を算出することができるからです。

ここからは具体的な価格査定マニュアルを使った査定の流れを解説していきます。

比較する不動産を検索する

まずは市場に流通している広告や資料を使って、査定の対象である不動産と比較する不動産を探します。一般的な不動産であるなら類似した物件や土地は多くあり、事例として十分利用できるはずです。

また、査定する予定の周辺情報も比較する必要があります。不動産は周辺の利便性などによっても査定額が変わってくるため、物件や土地の純粋な情報以外も重要な査定根拠となるのです。その場合、交通の便や接道状況などが査定対象と近しいものを探します。さらに周辺の開発状況も各市区町村ごとの都市開発図などを使って確認することになるでしょう。このように比較するためには必要な情報の下調べをしっかり行います。

不動産の情報を入力する

査定をしたい不動産の情報をまとめることができたら、価格査定マニュアルに入力する作業に入ります。入力項目では基本的な情報はもちろん現地調査の結果を含め、売主からのヒアリング情報と共に入力します。

価格査定マニュアルに具体的に入力する項目は以下の通りです。

  • 基本情報…工法や耐用年数、土地の情報等純粋な不動産情報
  • 近隣の状況…近隣の公共施設の充足度や利便性の評価
  • 交通の便…電車やバスなどの利便性の評価
  • 環境…周辺の騒音や眺望、陽当りの状態などの評価
  • 画地状況…地形などによる影響を評価
  • 街路状況…土地の方位の良さや街路の整備状況を評価
  • 供給処理施設…排水やガスの施設など
  • 流通性比率など…不動産が売りやすいか等の評価

査定結果が報告される

査定が問題なく終わると結果が算出され、査定結果は売主に査定報告書として提示されます。この報告書では立地条件や利便性など客観的な情報が明記されます。それと同時に眺望が良いなどといったことや周辺道路などからの騒音状況といった主観的な情報も含まれます。

基本的に客観的な不動産の査定内容は業者の違いでの変動は比較的少ないですが、主観的な眺望といったポイントの査定内容は担当者の手腕次第です。そのため、そのような項目については売主は担当者としっかりとコミュニケーションを取り、正確に情報を伝えることが大切なのです。

また、最終的に報告された査定結果は売却価格提案書として不動産の売却に使用されることになります。

不動産の査定価格を調べるときのポイント

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不動産の査定価格を調べるときのポイントは複数の不動産会社に依頼し、情報を照らし合わせて査定価格の根拠を確認することです。価格査定マニュアルは一定の基準に沿っているため客観的な情報の評価の差は出にくいですが、主観的な部分に関しては別なのです。そのため、査定価格を調べる際には多くの情報を冷静に精査する必要があるでしょう。そこで査定価格を調べるときのポイントをご紹介します。

複数の不動産会社に査定を依頼する

まずは複数の不動産会社に査定を依頼して、比較することがポイントです。ほとんどの不動産会社が同じ価格査定マニュアルを使っているといっても、提示される査定額はそれぞれに違います。そこで複数の不動産会社に依頼することで、その査定結果の価格や根拠を比較することができます

さらに同時に多数の不動産の相場もわかれば不動産会社の信頼性も見えてきます。じつは不動産会社では契約するために査定価格を吊り上げる会社も少なくないため、そういった意味でも複数社の査定結果を比較することが会社を見極めるためにも重要といえます。

一括査定サイトを利用する

手間を減らして比較しやすくするために一括査定サイトを利用することもおすすめです。価格査定マニュアルは個人でも使用できますが、正確な情報を入力するのに専門性もあるために難易度が高いでしょう。しかし、一括査定サイトを使えば直接出向く必要なく、誰でも簡単に一回の入力で複数の不動産会社の査定を受けることができます。

査定したい不動産情報さえ用意できればすぐに比較査定できるため、まずは一括査定サイトを使って不動産会社を選り分けていくとよいでしょう。

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その他の一括査定サイトや選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

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査定価格の根拠をよく確認する

各不動産会社の査定結果は担当者に根拠をよく確認することもポイントです。なぜならたとえそれぞれの会社が価格査定マニュアルを使っていたとしても、主観的な意見についてはばらつきがあるためです。それ以外にも査定価格をわざと高額設定している恐れもあります。そのため、何故査定の評価が高くなっているのか、価格の根拠を必ず担当者に確認するようにしましょう。

価格査定マニュアルに関するQ&A

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価格査定マニュアルの概要がわかってきたところで、その結果の差や信頼性について疑問も浮かんでくるでしょう。そこでここからは価格査定マニュアルに関するQ&Aをご紹介します。最後に目を通して、もれなく疑問を解決しましょう。

価格査定マニュアルは信用できる?

価格査定マニュアルはそもそも国交省が制定したマニュアルなため、信頼性は高いです。提供しているのは公益社団法人不動産流通推進センターですが、価格査定マニュアルは国交省の価格査定マニュアル策定委員会研究報告書を元に作られています。そのため、国が制定した信用できる査定マニュアルであるといえます。

個人が価格査定マニュアルを利用することはできる?

価格査定マニュアルは業者向けの査定ツールなため、個人で利用するのは難しいでしょう。価格査定マニュアルは料金を支払えば事実上は利用は可能です。しかし、自分で事例を探したり、正確な情報を把握して入力することはかなり専門性が高い作業になります。そのため、実際には個人が使うことを想定されておらず、使いこなすことは困難であるといえるでしょう。

業者によって価格査定マニュアルの結果が違う理由は?

価格査定マニュアルを使っているのに業者によって結果が違うのは、比較対象の物件が異なるためです。さらに担当者の主観的な評価や不動産会社の事情によっても査定価格が変わってきます。同じ評価基準を使用しているといっても、比較する物件や事情が違えば査定額は変動してしまうでしょう。

まとめ

価格査定マニュアルは物件本来の価値を客観的に評価できる査定方法です。耐用年数などだけで極端に価値を損なわず、適正に評価する基準といえるでしょう。特に一般的な個人住宅などの査定おいては評価の正確な根拠として使えるため、その構造を理解しておくことは有益です。とはいうものの、あくまでも価格査定マニュアルを使っても業者によって比較する対象や加味する事情が異なれば査定額は変動します。

そのため、査定の仕組みを理解して、どのようにして不動産は評価されるものなのか理解しておくことが大切です。今回ご紹介した価格査定マニュアルの骨組みをしっかりと把握することで、査定でより上手く立ち回りやすくなるでしょう。

※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/
https://www.rosenka.nta.go.jp/
https://www.retpc.jp/chosa/reins/
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
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