「離婚することになったが、家はどのように財産分与できるのだろう」と困っていませんか?夫婦二人で手に入れた家は、お互いが資産を出し合って購入したものに含まれるので、財産を分けなければなりません。しかし、現金とは違って分け方が複雑化することも多く、途中でもめて分与までに長引く可能性もあります。
この記事では、家を財産分与する基本のルールや財産分与する2つの方法、公平に家を財産分与する流れ、家を財産分与する5つの注意点を取り上げます。記事内容を参考に、お互いに納得のいく資産の分け方でストレスを軽減しましょう。
家を財産分与する基本のルール
家を財産分与する際は、どの財産をどういった基準で分けるかという基本のルールを知っておく必要があります。また資産となる部分だけでなく、負債はどうなるかという点も決めなければなりません。こうしたルールを知っておけば、もめごとを大きくせずに上手に整理できます。
まずはどのような家が財産分与の対象になるのか、分け方やいつまでに行えるのかといった点も交えて詳しく解説していきましょう。
夫婦で共同して得た家が対象
財産分与の対象になるのは、夫婦で生活していた持ち家や夫婦の共有財産で購入した家です。これには夫婦生活が始まったあとで、妻に隠れて夫が所有し始めた不動産も含まれます。
また不動産名義は、夫と妻どちらになっているかは関係なく、結婚後に取得した不動産のみが対象です。そのため、どちらか一方の親族が全額負担したり結婚前の貯蓄で購入したり、親から相続した家だったりした場合は対象になりません。
ローンの残債を含めて資産は公平に分ける
ローンの残債はマイナスの財産として計上し、夫婦が共同で形成した財産をそれぞれの貢献度に応じて公平に分けます。
原則2分の1ずつとなり、不動産の名義や持分割合も関係ありません。ただし、夫婦どちらかの努力などによって高額な資産形成になった場合など、個別的な事情により割合が修正されるケースもあります。例えば以下のような場合です。
- 金券購入代金をどちらか一方が支払っていた場合
- 夫婦の片方が特殊な技能を持って造り出した資産
- 夫婦の一方が上場企業の役員
夫が医師として働いて築いた財産である場合や、株式会社の取締役であるために築けた財産なら、その財産を築き上げた貢献度は違ってくるでしょう。それらの点を加味した割合で修正されることが一般的です。
また夫婦どちらかが資産を乱費したために、離婚することになったという場合にも持分が変わってきます。そのような場合には、ローンの支払いが残っているというケースが多い傾向にあります。離婚時に住宅ローンがある場合はどうすべきかをもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしましょう。

離婚してから2年以内に財産分与をする
財産分与に時効はないものの、除斥期間が定められています。除斥期間とは、一定期間に権利を使わないと消滅してしまう制度のことです。財産分与の請求における権利は2年間となっており、期間終了後は財産分与の権利がなくなって一切請求できません。
また、時効のように法的手続きを取ることにより、一時停止や中断などができないということも覚えておきましょう。
場合により2年越えでも分与は可能
原則、離婚してから2年以内に財産分与をするルールがありますが、除斥期間を過ぎていても相手が了承してくれるのであれば、いつでも財産分与は可能です。
さらに、調停・裁判などによっても延長できます。しかし、相手と連絡が取れなくなってしまったり、話し合いが長引いてしまったりするケースも考えられるため、早めに行動することを心がけましょう。
家を財産分与する2つの方法
家を財産分与する方法は、主に次の2種類あります。
- 売却で現金化して財産分与
- 家は一方が所有して同等の財産をもう一方に分配
この章では、それぞれの具体的な方法について解説します。
売却で現金化して財産分与
離婚前に家を売却し、現金化して二人で分ければトラブルは減ります。売却方法にはいくつか種類があり、売却した家に住み続けられる制度や買取という手法もおすすめです。以下では、リースバックと買取について解説します。
売却した家に住み続けたいならリースバック
不動産会社に家を売ってその家に住める「リースバック」という方法も検討してみましょう。リースバックとはリース料を支払いながら、一度売却した家に借主として住み続けられる方法のことです。また、不動産会社仲介での売却より安くなる可能性があり、あとで家を買い戻すこともできます。
リースバックを利用する際の手順は次のとおりです。
- 複数社を比較し依頼する業者を選定する
- 選んだ業者と家賃や期間などを相談する
- 査定を受け売却価格を決める
- 契約書の内容をチェックしてサインする
上記の手続きを行ったら、ローンの代わりに毎月家賃を支払いながら、住む続けることが可能です。ただし、利用を始める前に注意した点もあります。リースバックは不動産売却の一種として扱われるので、不動産会社に売却したときには、忘れずに確定申告を行いましょう。
さらに詳しくリースバックについて知りたい方は、以下の記事をチェックしてください。

短期間で家を売却したいなら買取
すぐに家を売りたい場合は、不動産会社の仲介による売却ではなく、買取という手法を選択しましょう。買取の場合は不動産会社が買主になるため、仲介を依頼して探す必要がなくなり、時間や手間をかけずに家を売却できます。また即現金化できたり、仲介手数料が不要になったりするというメリットもあります。
不動産会社に買取を依頼する際は、次の流れで行いましょう。
- 身分証明書など買取で使う書類を用意する
- 一括査定サイトなどを利用して買取業者を選ぶ
- 業者と価格・条件などを交渉する
- 引っ越し・引き渡しを行う
とても便利な不動産会社の買取という方法ですが、仲介での売却よりも買取金額が安くなり、価格の交渉が難しいというデメリットもあります。デメリットになることよりも、早く処分してしまえるというメリットのほうが大きいと感じるなら、とても有効な方法になるでしょう。
買取についてより理解を深めたい方は、以下の記事をご覧ください。

家は一方が所有して同等の財産をもう一方に分配
一方が家を所有し、もう一方に同等の財産を分配する方法もあります。子どもの転校を避けるために、この方法を採用する人も少なくありません。そのようなケースの場合は、現金や保有している株などを、家の半分に相当する資産として分け与えることが可能です。
子どもが小さいため、できるだけ負担にならないように分けたいという場合は、片一方が住み続けて家の価値の半分を渡す方法も検討してみましょう。
公平に家の財産分与をする流れ
家の財産分与をスムーズに進めるための流れは次の通りです。
- 家を含めた共有財産のリストアップ
- お互いが納得できる財産分与の割合を話し合う
- 文書で財産分与の条件を残す
- 財産分与で家を残すなら名義の変更
この章では、各手順について詳しく紹介します。
家を含めた共有財産のリストアップ
財産分与の対象となる財産の一例は、以下のとおりです。
- 家を含めた共有の不動産
- 預貯金
- 生命保険
- 退職金
- 負債
こうした共有財産をリストアップしておけば、スムーズに財産分与を進められるでしょう。
家の価値を調べる方法
家を売却する予定であれば、不動産会社の無料査定を利用して相場を調べておきましょう。不動産査定サイトは、ネットで全国の不動産会社に査定が依頼できるだけでなく、利用する際に費用がかかりません。さらに、さまざまな会社の査定額をチェックでき、相性のよい不動産会社と契約できる可能性もあるでしょう。
離婚の財産分与では正確な査定が必要になるため、もめそうな場合は不動産鑑定士へ評価を依頼することをおすすめします。
おすすめの一括査定サイトは「すまいステップ」

- 初めてで不安だから実績のあるエース級の担当者に出会いたい
- 厳選された優良不動産会社のみに査定を依頼したい
- 悪徳業者が徹底的に排除された査定サイトを使いたい
\ 厳選した優良会社に査定依頼 /
すまいステップで一括査定する
その他の一括査定サイトや選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

お互いが納得できる財産分与の割合を話し合う
お互いが納得できる財産分与の割合を話し合うことも重要です。財産分与の割合は、お互いが納得できるなら2分の1にしなくてもかまいません。また専業主婦であっても、2分の1の割合が認められています。家を売却するのか残すのかといった点をこの段階で決定しましょう。
話がまとまらないなら裁判所で調停
どうしても話がまとまらないときは、財産分与の調停を行いましょう。財産分与の調停では、訴訟と異なり厳格な手続きではなく、裁判官と調停委員会を交えて財産をどのように分けるかを話し合います。
財産分与の調停にかかる費用は、裁判所に支払う費用と弁護士費用です。裁判所への費用は収入印紙1,200円と郵便切手代のみですが、弁護士費用はケースバイケースのため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
文書で財産分与の条件を残す
文書で財産分与の条件を残しておけば、裁判になっても証拠として使えます。収入や預貯金、有価証券、不動産、自動車に関連する書類のコピーであっても、財産分与の証拠として有効です。
また、法務大臣が任命した公証人による公正証書を作成しておけば、強制執行もできます。
財産分与で家を残すなら名義の変更
ローンを完済している場合は、法務省で不動産登記申請をして名義の変更を行います。ローンが残っている場合は、金融機関で名義変更の許可をもらいましょう。
こうした手続きは、司法書士などの資格をもっている専門家に代理で依頼することも可能です。やり方がよくわからなかったり、手続きの時間が取れなかったりする場合は、専門家に依頼するようにしましょう。
名義の変更についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事で深堀りしましょう。

家を財産分与する5つの注意点
家を財産分与する場合の注意ポイントは以下の5つです。
- 家を出る側がローンを支払うのは危険
- 財産分与された家の税金支払い
- 節税対策をする
- 家のローンを滞納しているなら任意売却をする
- 話し合い長期化で音信不通になる可能性
各注意点を把握し、スムーズに財産分与を進めましょう。
家を出る側がローンを支払うのは危険
家を出るほうが残っているローンを支払うケースは少なくありませんが、その場合には次に挙げる注意点を考慮する必要があります。
- 住宅ローンを滞納される恐れがある
- 音信不通になる可能性がある
こういったケースでは、競売により住んでいる側が家を手放すことになる可能性が高いです。さらに住宅ローンの連帯保証人だった場合は、ローンを支払わなければならない状況に陥ってしまいます。
家を出る側がローンを支払うことはリスクが大きいため、ローンを完済する方向性で話し合っておいたほうがよいです。しかし、さまざまな事情により完済が難しい場合は、公正証書を作成しておくことでトラブルリスクへの対策を行いましょう。
財産分与された家の税金支払い
財産分与の税金は、財産を渡す側ともらう側で支払う税金の種類が異なります。もらう側に必要な税金は以下のとおりです。
固定資産税:固定資産評価額×1.4%(標準税率)
必要になると思われがちな贈与税や不動産所得税については、基本的にかかりません。
一方財産を渡す側は、土地や建物などの不動産を譲渡した場合に課せられる譲渡所得税が必要です。分与時の価格が購入時よりも高額な場合に支払う可能性があり、家の売却価格から取得費用や譲渡費用などを差し引いて算出します。
なお、譲渡所得税は所有期間が5年以下の短期譲渡取得と、5年を超える長期譲渡所得によって税率が異なる点に注意しましょう。短期譲渡と長期譲渡それぞれについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてください。

節税対策は忘れない
できるだけ税金の支払いを抑えるために、節税方法についても理解しておきましょう。
財産分与時の税金を節約できる方法は以下のとおりです。
節税方法 | 詳細 |
3,000万円の特別控除を適用 |
|
軽減税率の特例を適用 | 通常の長期譲渡所得税の場合は、所得税15%・住民税5%、所有期間が10年間を超えている居住用不動産を売った場合は、所得税10%・住民税4%に軽減される |
配偶者控除を受ける | 婚姻期間が20年以上の場合は、居住用不動産は最大2,110万円まで税金がかからない |
金銭で支払う場合は税金が不要です。税金の計算や節税のポイントなどについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

家のローンを滞納しているなら任意売却をする
ローンを支払えない、またはローンを滞納しているという場合は、任意売却によって問題を解決できます。任意売却とは、不動産を売却してもローンを返済できないときに、金融機関の同意を得たうえで売却できる方法です。金融機関から同意を得られれば、不動産についている抵当権を抹消してもらえるので、第三者に売却することもできます。
一般的な不動産売買と同じように売却できるだけでなく、引っ越し費用などの諸費用を売却金額から捻出することも可能です。また、競売のように裁判所を通じて不動産が差し押さえられ、強制的に売却されてしまうこともなく、市場価格より安値での売却になる可能性も低いというメリットがあります。
自分で金融機関に交渉することもできますが、かなりハードルが高く同意を得られる確率も低いでしょう。その場合は弁護士や司法書士の力を借りて行うと、よりスムーズに交渉できるのでおすすめです。以下の記事では任意売却の流れや必要書類について、さらに細かく解説しているので参考にしましょう。

話し合い長期化で音信不通になる可能性
離婚手続きの際は、お互いが感情的になって話がまとまらないというケースがほとんどです。離婚届けを出していなければ除斥期間はカウントされませんが、相手が音信不通になってしまうと、財産分与がうやむやになってしまう可能性もあるでしょう。
相手と連絡がとれない、相手が協力してくれないという場合には、弁護士の力を借りることができます。弁護士を通してコミュニケーションをとることで、話をスムーズに進められて余計なトラブルも回避できるでしょう。
まとめ
離婚時にはさまざまな手続きが伴うため、慎重な話し合いが必要になる場面が多くあります。分けるべき財産が現金化されていない家の場合には、特に難しいでしょう。
しかし財産分与に値する家を把握し、共有している財産を負債とともにリストアップしておくことで、夫婦が共通の認識を持って話し合いを進められます。また、話し合った内容を文書の形で残しておくことも大切です。
話がまとまらない場合には、弁護士に依頼するか調停にするなどして対処することをおすすめします。記事内容を活用して、ぜひお互いがすっきりする仕方で財産分与を行い、離婚後の新たな生活をストレスなく送れるようにしましょう。
※「マイナビニュース不動産査定」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
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