具体的に言うと、栃木なら一軒家を買えるくらいの借金です。ちなみに、個人資産は今財布を見ましたが、3万円くらいです。
借金玉名義の売上は全て会社に入りますし、会社法人の株式は全て私にお金を貸している方が所有しています。自宅は社宅、バイクは社用車。仕事に使うアイテムは全て備品となります。
更に言いますと、自宅にある物品は会社の備品でなければ同居人の持ち物ですので、僕自身は「借金以外何も持っていない」と言っても過言ではないでしょう。借金玉の名に恥じない人生を送っていると自負しております。
さて、本日のテーマは「借金」。
まず、考えるべきことは一つです。借金と言うのは善いものか悪いものか。
これはもう、議論の余地など一つもありません。借金は善いものです。無借金人生最高!という考え方もありますが、僕は明確に否定したい。借金は善いものである。
本日はそんな話をさせていただきます。
借金取りだけは最後まで
あなたの味方である
さて、そんな借金まみれであるところの、いやむしろ借金が本体と言っても過言ではない借金玉ですが、人生で一度も「金を返せ」と言われたことがありません。
この借金を拵えたのは、以前僕が会社を興した時のことです。会社を興すにはお金が必要で、当時も僕は無職の素寒貧。当然出資を受ける必要がありました。しかし「出資」だけだと「代表取締役辞めます」の一言で逃げ出してしまう可能性がある。
更に、会社が大きくなってきた頃、僕は事業拡大のために銀行融資を受けました。誰にも理解出来ない理由で結構な融資が受けられました。これが大部分返せないまま会社は倒れ、僕は借金を連帯保証 していました。事業売却で埋め合わせてもまだたっぷり残ったので、本来であれば僕はここで破産だったと思います。
ここで飛び出して来たのが出資者こと借金取り氏。
ポンと僕の借金を肩代わりしてくれました。
「ここで破産させたら返ってくる可能性はゼロだ、ナンピンしてやる」のキメ台詞で、
借金取りが更に金を貸してくれるという事態が起きたわけです。
そんなわけで、偉大なる借金取り氏は会社を潰した後、鬱でくたばっている僕を年単位で放任し、回復をじっと待ちました。回復してきた頃、僕は氏の助言で再び働き始め、その経験から本を書き、こうして借金玉として文章を生業にするようになりました。「下手につついて死なれたら損だろ」と氏は言いますが、僕が生きているのは完全に彼のおかげです。
先日、借金玉として本を書いた印税が入ってきました。結構売れたので、借金全額とはいきませんがそれなりにまとまったお金になり、当然これは全て借金取り氏の取り分です。
「投資した金額を一桁上げて儲けさせるのは並の起業家、本物の起業家は2桁上げる。その金で次を仕掛けろ、本物の起業家になれ」
こんな名言が出ました。そういうわけで、僕の会社の口座には借金取り氏のお金が満額入っており、僕の生活費も当然そこから出ています。一応「給料」ということにはなりますが、僕のイメージとしては「他人のお金で暮らしている」という感じで、大変人生に張りが出ます。1円も無駄にできないですよね。
これは「他人の好意だけで生き延びております」という恥ずかしいお話なのですが、そんな話にも教訓はあります。借金取りだけは最後まであなたの味方だということです。あなたが死んでしまったら、借金は回収できません。生命保険を担保にすることは一部の例外を除いて禁止されています。
この厳しい世界で何があっても「生きよ」と言ってくれるのは借金取りだけだと言って過言ではないでしょう。
借金とは、「信用」あるいは「期待」を金額にしたものと言えます。
他人の期待をお金に変えて、人は挑戦をすることが出来る。
これが悪いことであるわけがない。
債務者と債権者ほど固い絆に結ばれた存在はいないと言っていいでしょう。
皆さんにもよくわかっていただけたと思います。
悪い借金について
さて、いかに借金が善き美しきものであるかわかっていただいたところで、「悪い借金」もあるというお話はしなければいけないでしょう。ほんの一部ですが、借金を寿ぐ(ことほぐ)借金玉にも「これはアカン」という借金はあります。
さて、「借金は悪い物だろ」と仰る皆さん。
皆さんが「悪い」とお考えの借金は「信用を損なう借金」というものではないでしょうか。
例えば、カードローン。これ自体を僕は「善い物」「便利なもの」だと思います。クレジットカードのヒストリーは社会的信用そのものですよね。人生というのは基本的に挑戦ですし、挑戦とは即ち投資。
例えば、海外で何かを学ぶ機会を得たがお金がない、そんなときにローンを借りるというのは大変良いことだと思います。50万円を用意できるか出来ないかで変わる未来って結構ありますよね。
お金を即時借りられるインフラは素晴らしいです。
しかし、これを「日常的に使うお金」に用いるのは大変良くありません。
それは、挑戦でも投資でもないからです。日常的な娯楽費やあるいは生活費そのものを借金で賄っているというのは、即ち「自分自身のお金で人生を維持できない」ということです。
これは大きく社会的信用を失うものでしょう。
僕もそういう人は絶対に信用しません。
みなさん、思い出してください。
金を返さないあいつ。
大体このパターンでお金を借りていませんか?
「金がない、給料日になったら返す」で返ってこなかったお金、パチンコして酒呑んで外食して使われている気がしませんか?残念ながらその予感は当たっています。それは挑戦でも投資でもなく浪費に消えていったでしょう。
人生には「挑戦」や「投資」が必要です。これは、「会社を興す」みたいな大きなことに限りません。「新しい洗濯機を買う」のだって挑戦であり投資です。海外旅行や会食だって、投資であり挑戦であり得る筈です。そういうわけで、それが挑戦であり投資であり返済可能だと思えるならお金は「迷わず借りるべき」と僕は考えています。人生は結構すぐ終わってしまいますからね。
まだ納得がいかない皆さん、こう考えてみてください。「就職活動のためのスーツを買うから金を貸してくれ」と親しい間柄の友人に頼まれて、断る人ってそうはいないのではないでしょうか。まぁ、僕は「じゃあ一緒に買いに行こうぜ、選んでやるよ」とは言いますけど。
それは間違いなく、挑戦であり投資ですよね。
このお金を用意できなくて人生が詰んでしまう人は結構います。サラリーマンのエントリーコスト、現代は大分安くなりましたが結構なものですよね…。そういう時に借りるお金は本当に助かるものですし、尊いものです。
多重債務者にならないための
借金リテラシー
「多重債務者」という言葉があります。これは「色んなところから借りまくって収集がつかなくなった人」という感じの意味合いです。ちなみに、僕は借りている先が一つだけなので多重債務者ではありません。言葉って難しいですね。
あっちから10万、こっちから5万を何回も繰り返した皆さんの末路はご存じの通りです。皆さんも、財布の中にクレジットカードは入っているでしょう。カードローンの使い方に自信はありますか?「怖くて使えない」という人、結構いますよね。実を言うと僕もこのタイプでした。数千万の借金より数万円の借金の方が未だに怖さを感じます。
では、どうやって使いこなせばいいのか。これは極めて簡単です。
この2点だけを考える。
後者は誰もが「返せる」と思って借りるので考えるだけムダという説もありますが、一応考えておきましょう。
「投資」と思えるなら借りるべきです。僕も出資者を捕まえるためには使いました。
「暮らしていけないから借金をした」という話がありますが、これは原理的におかしいのです。日本で生活が出来ないほど収入が乏しいなら、頼るべきは金融機関や他人ではなく「行政」です。税金を払っている日本国民なのですから胸を張って頼るべきでしょう。
生活費が足りない、あるいは娯楽費が足りないのであれば、収入を増やすか支出を減らすのが最適解。そこで「借金」というのは単なるその場しのぎにすぎません。おまけに、借金には「利子」がつきますので、繰り返せば繰り返すほど加速度的に事態は悪くなります。
「生活を自分自身の収入に合わせて構築できない」という本質的な問題があるのですから、これは至極当然の帰結と言えます。
「生活費に困っている人」にお金を貸すくらいなら、「パッと遊ぶから金を貸せ」という人に貸した方が、まだ返ってくる確率は高いでしょう。
10万円、20万円、50万円、100万円…人がどこで立ち止まれなくなるかはいつも定かではありませんが、事態は加速度的に悪くなっていきます。
あなたが貸したお金がそのブレーキになることは、まずないと考えていいでしょう。
「仕方ない」借金はしてはダメ、
未来への投資はしなきゃダメ
僕は発達障害による知覚過敏で、公共交通機関に乗るのが非常に大きいストレスになってしまうのです。12万円ほどでしたが、これは結構勇気のいる「挑戦」であり「投資」でした。しかし、長い鬱暮らしから立ち直りかけている僕を支えてくれたのはこのローンでした。
今考えても、これは「善い借金」だったなと思います。一千万単位の借金を抱えた人間が、12万円の借金にビビるというのは情けない気もしますが。でも、人生にはこういう投資が必要なことがよくあります。
人生というのは挑戦で、挑戦の本質は投資です。借金をする理由が「仕方ない」ではないのならば、それはあなたの自己責任でという留保をつけるものではあるけれど、「借りるべき」だと僕は思います。もちろん投資倒れもあるでしょうが、人生はそうやって豊かになっていくものだと思います。人生というのも、一つの事業ですからね。
借金玉が胸を張って言います。
借金は基本的に「善いもの」です。
しかし、あなたが借金をするとき、ローンを借りるとき「仕方ない」という感覚があったなら、それは立ち止まるべきです。未来への投資は「仕方ない」ものではないはずですから。
細かいマネーリテラシーより、これ一つを覚えておくのが僕は一番大事だと思います。
さて、僕は60万借りたまま行方をくらました奴に裁判所経由で「金返せ」というアレを送り付ける作業に戻ります。
プロフィール
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ブラック企業での壮絶な体験、波乱万丈な私生活を、自身のブログで紹介して話題に。
人気のブログが書籍化された『天国に一番近い会社に勤めていた話』も読者から高い評価を得ている。
現在は沖縄に移住し、『警察官クビになってからブログ』のほか、新聞や雑誌にコラムを掲載するなど活躍中。