多種多様な候補から自分好みの端末を選択でき高度なカスタマイズが可能、それがAndroidの魅力であり強みです。しかし、その自由度の反面わかりにくさを指摘されることも少なくありません。このコーナーでは、そんな「Androidのここがわからない」をわかりやすく解説します。今回は、『スマホの内蔵ストレージに寿命はあるの?』という質問に答えます。

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スマートフォンの内蔵ストレージには「NAND型フラッシュメモリ」(以下、NANDフラッシュ)が採用されています。不揮発性記憶素子を利用した半導体メモリで、他方式と比較すると高速に書き込み/消去できるうえ回路規模が小さく、安価に大容量化できるメリットがあります。なお、Android端末では内蔵ストレージをROMと呼ぶ場合もありますが、意味するところは同じです。

そのNANDフラッシュですが、寿命があります。NANDフラッシュの種類により差があるため、ひと口にはいえませんが、ごく普通の使いかたで5年以上はもつと考えていいでしょう。NANDフラッシュには、処理が特定領域に集中して消耗が進まないよう書き換え回数を平準化する「ウェアレベリング」という機構があり、設計上の寿命を使い切りやすいことも助けとなっています。

NANDフラッシュには、大きくわけてSLC(Single Level Cell)とMLC(Multi Level Cell)、TLC(Tri Level Cell)の3種類があります。情報蓄積に必要な回路の最小単位を「セル」と呼びますが、SLCではセル1つに対し1ビットの情報を記録することに対し、MLCでは2ビット、TLCでは3ビットを記録します。1つのセルに多くの情報を詰め込めるTLCが経済的には有利ですが、書き換え可能回数と速度はSLC>MLC>TLCの順となります。

現行のスマートフォンは、MLCの改良版に位置付けられるeMLCやcMLCが多く採用されています。前述したウェアレベリングの働きもあり、普通の使いかたをするかぎり書き込み上限(eMLCの場合約3万回)に達するのは7、8年もしくはそれ以上になると考えられます。バッテリーや液晶バックライトの寿命のほうがよほど短いはずですから、初期不良にでも遭遇しないかぎり、内蔵ストレージの寿命は気にしなくていいのではないでしょうか。

種類により差はありますが、内蔵ストレージに採用されているNANDフラッシュの寿命よりスマートフォンとしての寿命のほうが早く尽きるでしょう(写真はイメージです)