アップルから発売されている12.9インチディスプレイ搭載タブレット「iPad Pro」、そしてiPad Pro専用で、かつ同社初のスタイラスペン「Apple Pencil」。その追随性能や精度の高さ、リアルな使用感などが、イラストを仕事にしている人から趣味として取り組んでいる人まで、"絵描き"の間で話題に上っている。マイナビニュースでも、イラストレーター/漫画家の安倍吉俊氏のファーストタッチレポートをお届けしたところだ。

そんな「iPad Pro」の発表デモにて、アドビ システムズのアプリ「Adobe Photoshop Sketch」などが使われたのも記憶に新しい。現在、アドビは計6つのモバイルアプリ群に関して、「iPad Pro」および「Apple Pencil」への対応を果たしている。

ところで、昨年同社はスタイラスペン&デジタル定規「Adobe Ink & Slide」を発売したところだが、Apple Pencilへの対応を打ち出した今、同機の立ち位置はどうなっていくのだろうか。また、同社のアプリとApple Pencilとの組み合わせは、どんな効果を生むのだろうか。

今回は、同社のCreative Cloudエバンジェリスト・仲尾毅氏に、iPad ProとApple Pencilの実機デモの実施のかたわら、「Adobe Ink & Slide」の今後から各アプリの操作性・連携機能などについてお話を伺った。

アドビ システムズ Creative Cloudエバンジェリスト・仲尾毅氏

Adobe Ink & Slideは「使命を果たした」

アドビは昨年、同社としては初めてのハードウェアとなるデジタルペン&定規のセット「Adobe Ink & Slide」を発売した。だが、このたびの「Apple Pencil」登場以降、アドビ主催のクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX 2015」において、iPad ProとApple Pencilの操作を体験できる「Adobe & Apple iPad Pro Private Event」を開催するなど、「Adobe Ink & Slide」よりもiPad Pro+Apple Pencilに注力している印象だ。

同社のこうしたスタンスについて仲尾氏にズバリ伺ったところ、「アドビはあくまでもソフトウェアの会社です」と前置きした上で、「当時はモバイルデバイス上で筆圧感知に対応した実用的な描画ペンが少なかったこともあり、Adonitさんの協力のもと、アドビが考える理想的なiPad用ペンというものを"レファレンス"(参考用)として提供したのがAdobe Ink & Slideです。つまり、他社と競い合うために出したのではなく、"皆でこんなソリューションを盛り上げよう"という意味合いも含めて発売されたもの」だとした。

また、「(Adobe Ink & Slideは)当面の使命を果たしたのではないかと思っています。…とは言っても、まだ販売を終えたわけではありませんが(笑)。"筆圧"のみならず"傾き"まで検知するApple Pencilはその究極の形だと思います」と述べた。

「iPad Pro」の12.9インチディスプレイはやはり存在感がある(左はサイズ比較のために置いたiPhone6)

「Apple Pencil」はiPad Pro専用で、他のiPadモデルには対応していない