2013年に待機児童数ゼロを達成した横浜市。保育施策が充実している自治体としても知られ、保育園等の利用申し込みが増える中、今春も8人にまで待機児童数をおさえた。しかし一方で、待機児童には含まれなかったものの、申し込みをしたにも関わらず認可保育園に入園できなかった、いわゆる「保留児童」の数は2,534人にものぼり、一部からは不満の声もあがっているという。現在、市の保育現場ではどのような変化が起きているのか、担当課に尋ねた。
実は増加している「保留児童」とは
横浜市によると、保育園などの利用申込者数は年々増加している。特に2013年春に待機児童数ゼロを達成して以降、2014年春には前年に比べて4,114人増、今春は前年比4,594人増の5万7,526人にのぼった。この状況について担当課は「利用そのもののニーズが高まっている上に、待機児童数ゼロ報道の影響もあると思われる」と回答。特に今年については、子ども・子育て支援制度の導入により、施設整備の充実に関して期待感が高まったことが背景にあるとみている。
そんななかでも、今年4月時点では待機児童数を8人におさえた。しかし、横浜市が「一部から不満の声もある」としたのが、認可保育施設を利用することができなかったにも関わらず、待機児童数に含まれなかった人たちの存在だ。
厚生労働省の定義では、認可保育施設を利用できなかった場合でも「自治体の単独保育施策による保育施設を利用している」「主に自宅で求職活動をしている」「育休を取得している」「利用できる施設があるにも関わらず第1希望の施設利用しか望まない」などの条件に該当すれば、待機児童に含まれない。これらの条件に該当した人たちの数を横浜市では「保留児童」と呼んでカウントしている。
この「保留児童」の数が、今年4月1日の時点で2,534人。このうち横浜市が独自の基準で認定し、助成している「横浜保育室」などの認可外保育施設の利用者は926人にのぼる。さらに、「保留児童」は昨年の同時期と比較すると150人、さらにおととしの同時期と比べると788人も増えているのだ。
「地域間格差」と「保育士不足」が課題に
なぜこのようなことが起きているのか。大きな背景としては、就学前の児童数が減っている一方、定員増を上回る勢いで利用申込者数が増えていることがある。加えて担当者は「地域間の格差」と「保育士不足」をあげた。
横浜市の北部に位置する港北区、神奈川区、鶴見区については、就学前児童数の増加を背景に利用申込者数が定員を大幅にオーバー。中でも、港北区にいたっては、450人分の定員増を実現したにも関わらず、448人の保留児童が発生する事態となった。加えてこれらの地域では大規模な宅地開発なども進んでいて、保育施設を整備するための土地も不足しているという。反対に、地域によっては児童が集まらず、272園で1,974人もの定員割れが生じている。
さらに保育士不足も深刻だ。面積に余裕があり、定員を増やせる既存の施設でも、保育士が確保できずに断念するケースが少なくないという。さらに担当者は、「処遇が低いといわれるなかで、家賃などが高い横浜市を保育士が敬遠するケースもある」と指摘した。
これらの課題に、横浜市はどのようにして立ち向かおうとしているのか。後編では、今年度実施している市の取り組みをご紹介する。
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