今年のテーマは「マルチスクリーン」

10月25日(太平洋夏時間)、米カリフォルニア州ロサンゼルスにおいてAdobe Systems主催によるユーザカンファレンス「Adobe MAX 2010」が開幕した。本稿では、初日に行われたNokia Theaterでの基調講演の様子をお伝えする。スピーカーを務めたのは同社CTOのKevin Lynch氏。

スタート前のデモンストレーション

AdobeのCTOを務めるKevin Lynch氏

Lynch氏は冒頭で、今業界に起こっている変革としてCPUやネットワークの性能向上、バッテリーの大容量化、パーソナルコンピュータの画面サイズの多様化などを挙げた上で、その影響として近い将来モバイル端末がデスクトップ端末よりも多くなると指摘した。そしてそのような変革が利用者やコンテンツ提供者にどのような影響を与えるのか、またAdobeからは何が提供されるのかとった観点について、以下の5つの領域に対してそれぞれの回答が提示された

  1. Webサイト
  2. 電子出版
  3. ビデオ
  4. エンタープライズアプリケーション
  5. ゲーム

Adobeにとって、「マルチスクリーン」はこの5つの領域全体に渡るチャレンジである。プラットフォーム、ツール、フレームワーク、サーバ、サービスに至るまで、すべての方向からトータルにマルチスクリーンをサポートしていくことによって、新しい価値の創造を目指す。Lynch氏による以下の発表も、全域でマルチスクリーン対応がテーマの中心となっている。

ワンソース/マルチデバイスで作るWebサイト

Webサイトの領域に関しては、まずマルチスクリーンに対応したオーサリングツールとしてすでにリリース済みの「HTML5 Pack for Dreamweaver CS5」が紹介された。Dreamweaverの拡張機能として提供されているこのツールを利用すれば、デスクトップやモスマートフォン、タブレットといった画面サイズの異なるデバイスに対して、それぞれ最適なレイアウトを自動で設定できるようになる。任意の画面サイズにおける表示をオンデマンドで確認しながら、個別にレイアウトの調整が行える他、HTML5やCSS3のコードヒントの表示などにも対応している。

HTML5 Pack for Dreamweaver CS5によるマルチスクリーンサポート

また、このような異なる画面サイズのデバイスに対応した実際の事例としては、同社のWebサイト「Adobe Developer Connection(ADC)」が紹介された。ADCではデバイスの画面サイズに応じて自動でカラム数やメニュー表示などのレイアウトが調整されるようになっている。実際に複数のデバイスでアクセスしてみれば、そのことが確認できるだろう。

Adobeでは、コードを書くことなくHTML5やCSS3よるアニメーションを作成することができるツールも開発している。Lynch氏が次に紹介した、「Edge」のコードネームを持つプロジェクトである。JavaScriptライブラリのjQueryをベースとして開発されており、Flashなどと同様にタイムラインに沿ってオブジェクトを移動させることで簡単にアニメーション効果を演出することができる。

Edgeプレビュー版のデモ

Webサイトを訪れるユーザがHTML5やCSS3に対応したWebブラウザを知ることも重要だ、と言ってLynchが紹介したのが、同社のサイト分析ツール「SiteCatalyst」だ。SiteCatalystには新たにHTML5/CSS3をサポートする機能が追加されたという。これによって、HTML5を利用したWebサイトをどのタイミングでローンチすればいいかなどを知ることが可能となる。