フィックスターズは2月24日、米Broadcast Internationalと共同で開発した、H.264ソフトウェアエンコーダ「CodecSys」シリーズの新製品として「CodecSys CE-100」および「同CE-200」の発売を国内で開始したことを発表した。出荷は4月頃を予定しており、海外は同4月頃から米国での発売を計画、順次発売地域を拡大していくという。

今回発表されたH.264リアルタイムソフトウェアエンコーダ「CodecSys」の「CE-100/200」シリーズ

フィックスターズ 代表取締役社長兼CEO

同社代表取締役社長兼CEOの三木聡氏は、「Cellの特徴を生かしたリアルタイムソフトウェアエンコーダがようやく完成した。開発にかなり時間がかかったが、出来上がった製品自体は、高いクオリティかつソフトウェア処理ならではの柔軟性を有したものとなったと自負している」と、製品にかける期待を強調した。

同シリーズは、Cell/B.E.およびその派生品をアクセラレータとしてワークステーション(WS)などに搭載したターンキーソリューション。ベーシックモデルとして、HDDに保存されている非圧縮の映像データをリアルタイムエンコードすることが可能な"CodecSys CE-100シリーズ"と、CE-100の機能に加え、カメラから取り込んだ映像をリアルタイムエンコードすることが可能な"CodecSys CE-200シリーズ"の2シリーズに分かれる。

CodecSys CEシリーズの概要

CodecSys CEシリーズの特長

搭載するWSは、Lenovoの「ThinkStation S10」もしくはFibreChannelによる外部ストレージが接続可能な「ThinkStation D10」のいずれか。S10を用いたモデルが「CE-100」および「CE-200」、D10を用いたモデルが「CE-110」および「CE-210」となっており、200/210には、キャプチャカードとして、「Bluefish EPOCH|HORIZON」に標準対応している。

CodecSysのH.264エンコーダの特長

CodecSysのシステム構成

キャプチャカード「Bluefish EPOCH|HORIZON」

アクセラレータとしては、Cell派生チップで、Cell/B.E.に比べ浮動小数点演算の処理能力を向上させた「PowerXCell8i」を搭載したPCI Express対応カード「GigaAccel 180」を採用。これをWSに搭載することで、リアルタイムにフルHD解像度の映像をH.264フォーマットへエンコードすることが可能となる。同社では、PowerXCell8iの性能を最大限に引き出すために、画素単位で行う処理のすべてをSPEの並列演算命令向けに書き換えたほか、演算性能を最大限に引き出すためにデータ転送タイミングを最適化したという。このほか、8個のSPEコアのすべてを並列動作させるタスクスケジューリング技術も搭載している。

H.264エンコードに使用される「GigaAccel 180」

また、独自の「マクロブロックモード選択アルゴリズム」を採用することで、入力となる元画像の精細感を失うことなくH.264フォーマットへエンコードすることが可能である。

さらにソフトウェアは、入力フォーマットの追加やエンコーダアルゴリズムの改善などのアップグレードや、用途に応じたエンコーダのカスタマイズ、構築済みの既存システムとのインテグレーションなどが可能である。

エンコーダの性能としては、ビデオ圧縮機能では、Frame/Field双方のエンコードに対応しているほか、低ビットレート時の圧縮効果を高める複合化技術「CABAC」に対応。また、Main Profileに加え、Blu-Rayオーサリングなどハイビジョン解像度の圧縮に適したHigh Profileをサポートしている。このほか、圧縮に関するパラメータを自由に設定することが可能である。

オーディオ圧縮機能では、トランスポートストリームに出力する際、ビデオに加え音声も多重化することが可能。この際の音声コーデックは、MPEG-1 audio layer-2もしくはAACに対応しており、出力ファイルをそのままネットワークストリーミング用途に使用することが可能だ。

このほか、インタフェースとして、バッチエンコード機能を有し、大量のデータ圧縮の自動化が可能である。

実際に同社では、人が大勢おり、かつ後ろに木々が生えているフルHD解像度の16.7秒のビデオクリップをH.264でエンコードした場合を、IntelのCore 2 Duo(2.53GHz)と比較した場合で、Core 2 Duoで139.55秒かかるところを、Cell8iでは14.28秒と、実時間未満でのエンコードが可能であったとしている。

Core 2 Duoとの処理性能比較

記者発表時の実際のデモは、4種類行われた。1つ目は、1080/30p、YUV420の自然画(12Mbps、High Profile)の動画ファイルをH.264に変換するというデモ。

動画
エンコード風景(wmv形式 10.3MB 17秒)
H.264に変換した動画(wmv形式 4.52MB 17秒)

2つ目は、1080/24p、YUV420&WAVのCG動画(8Mbps、High Profile)をTSフォーマットに変換するというもの。

動画
エンコード風景(wmv形式 17.5MB 1分6秒)
TSフォーマットに変換した動画(wmv形式 20.2MB 1分17秒)

3つ目は、480/30p、YUV420の自然画(2Mbps)をH.264に変換するというデモ。

動画
エンコード風景(wmv形式 839KB 4秒)
H.264に変換した動画(wmv形式 3.15MB 12秒)

4つ目は、1080/60i、YUV422の画像をビデオカメラを介してリアルタイムで撮影、H.264へエンコードするリアルタイムキャプチャのデモ。

動画
エンコード風景(wmv形式 5.84MB 22秒)
リアルタイムでH.264に変換した動画(wmv形式 4.95MB 19秒)

実際のデモに使用されたLenovoのワークステーション

リアルタイムエンコードに用いられたカメラと対象物のマグカップと時計

いずれのデモにおいても、かなり高速にエンコードが行われていることが見て取れる。

なお、価格はCE-100が290万円、CE-110が310万円、CE-200が330万円、CE-210が350万円(いずれも税抜き)となっており、2年目以降の保守費用が年間45万円ほどかかる。ワークステーションを除いた、カードとソフトウェアのみの販売には基本的には対応していないが、個別注文として対応することもあるとのこと。

同社では、CE-100/200シリーズの販売目標を初年度で100台としている。また、Cell/B.E.を2つ搭載したIBMのブレードサーバ「IBM BladeCenter QS22」をハードウェアに利用したハイエンドモデル「CE-1000/2000」シリーズの開発を進めており、5月の初頭には出荷を開始できる見込みとしている。