ランニングに短パン姿のおっさんをクリックすると、お尻にマウスカーソルが突き刺さり、痛みにたまげて画面から飛び出して走り出す。その向かう先はなんと……。そんな笑いを誘うおっさんの珍妙なリアクションと、のちに起こされる驚きの仕掛けを持ったブログパーツが、目ざといブロガーたちの間で話題を集めている。

配布元はリクルートメディアコミュニケーションズとリクルートガーディアン・ガーデンが主催する「1-click Award」の公式サイトだ。これはタイトルの"1-click"ということからもわかるように、できるだけシンプルに「ワンアイデアで心を動かすWebコミュニケーション」をテーマとしたウェブコンテスト。その優秀作品を決定する審査会が、東京・銀座にあるギャラリー、ガーディアン・ガーデンにて、2月8日に開催されたので結果を報告する。

ブロガーたちの話題を集めている「1-click Award」の公式サイト。ランニングに短パン姿のおっさんのお尻をクリックすると……

審査会の模様は一般公開

今年で第2回目となるコンテストの審査は、一次に通過した20作品を1作品ずつ一般入場者に紹介し、審査員が講評していく公開方式で開催された。審査員は伊藤直樹、佐野研二郎、生意気(ディヴィッド・デュバル-スミス&マイケル・フランク)、中島信也、福田敏也、大迫修三の7名6組。いずれも広告業界のインタラクティブ分野の第一線で活躍するディレクターやアーティストたちだ。彼らによる審査会の様子がライブで見られる。そんなまたとない機会であったためか、会場は立ち見が出るほどの大盛況に。また、シンプルとはいえ、前述したブログパーツ同様に、思わずハッとさせられる仕掛けを持ったインタラクティブなコンテンツが次々と繰り出されたこともあり、熱気に包まれた審査会となった。

審査会の模様は一般公開。用意した席には隙間がないほど会場は満員となっていた

審査は各作品をあらためて紹介しながら、審査員たちが講評が行うという展開。広告業界の第一線で活躍する審査員たちの鋭い指摘が会場を沸かせる

就寝前向けコンテンツが最優秀作品に

最優秀作品「一日のおわりに」の作者である岡部正さん。つながりを感じさせる感動的な作品だが、単純に寂しかったので制作したのだとか

そうしたなか、最優秀賞に選ばれたのは岡部正さんによる「一日のおわりに」という作品だ。これは就寝前に利用することを想定したもので、ユーザーが名前を打ち込むと、自分を含めたそれまでに打ち込んでいたユーザーの名前と時間が、音楽とともに下から上へと流れて表示されるというもの。まるで映画のエンディングのような雰囲気が印象的で「知っている人が寝ていたりするとジンとくる」「つながっているという安心感があって優しい気持になれる」との講評を得て、審査員のほどんどがイチ押ししての受賞となった。

続く優秀作品には稲井あやさんの「creatures」と、田口祥子さんの「彼はゴキブリ」の2作品が選出された。「creatures」は3D眼鏡をかけることで立体的に見えるという斬新なアイデアが使われている作品だ。クリックするたびに不思議な生き物がフワフワと飛び出していく姿が実にユーモラス。審査員から「可愛くしたいのか、変にしたいのか、わからないキャラクターが面白い」という講評を得た。もうひとつの「彼はゴキブリ」は台所のイラストのなかにうごめくゴキブリを叩くゲーム感覚の作品。叩いていると、いきなり目の前に飛んでくるかのように、画面いっぱいにゴキブリが広がって驚かす仕掛けで「"絵"というなかで起こることに次世代感がある」という講評であった。

また、このほか審査員賞として、中島信也賞に下條泰朗×佐藤大介さんによる「問題」、生意気賞にケラコウチ ヒロユキ×ミヤザキ テツオさんによる「ワンクリックで地球を救え!」、福田敏也賞に大西拓人さんによる「『1-click』」、佐野研二郎賞に居平啓太×石原麻名さんによる「ハローピクセルクン」、伊藤直樹賞に藤井組(伊藤智恵子)による「サイト誘導警備員バナーさん」がそれぞれ選出された。

大仰なFlashでなくとも人は動かせる

バナー広告をクリックすると掲載企業のサイトに遷移する。ウェブにおけるごく当たり前の広告モデルだが、そのクリック率は年々低下傾向にある。たかがワンクリック、されどワンクリックというわけだ。そのせいなのか、企業はとにかく人目を引くように派手なリッチ・コンテンツを掲げているが、大仰なFlashをわずらわしいと感じるユーザーも少なくないだろう。そうでなくともアイデア次第で人は動かせる。それを実際のカタチとして提示してくれるのが「1-click Award」の魅力だ。シンプルを良しとするだけにクリエイターを本業としない人の参加もあり、ウェブコンテンツという既存のイメージにとらわれない作品が多いのも面白い。

なお、この「1-click Award」は一次審査で選ばれた20作品は、審査会が開催されたガーディアン・ガーデンで2月14日まで展示されている。ウェブサイトにより人を集めたいユーザーはもちろんのこと、いかにしてユーザーにアクションを起こさせるかを悩んでいる企業関係者も、ぜひ参考にしてみてはいかがか。

今回、受賞した作品をはじめとする一次に通過した20作品は2月14日まで、銀座のガーディアン・ガーデンで展示される