先ごろ制作現場の模様をお伝えした3DCGアニメ『ぷちえう゛ぁ』。作品自体の内容もさることながら、ユニークなのが2チームの競作による作品づくり。前回のレポートでは三木俊一郎監督とカナバングラフィックスの打ち合わせ現場にお邪魔し、絵作りについてのメイキングをお伝えしたが、今回はもう1チームの現場から編集、そして音響といったポストプロダクションの制作状況をお届けする。

『ぷちえう゛ぁ』のもう1チームでの演出を手がけるのは、シュールなギャグの『デ・ジ・キャラット』シリーズから、世界名作劇場『レ・ミゼラブル 少女コゼット』まで、幅広い作品を手がける桜井弘明監督。制作はXEBEC。CG制作はザフールで、『Funny Pets』のスタッフが担当している。

桜井監督チームの『ぷちえう゛ぁ』、その第1話のお話は綾波が朝起きてねるふ学園に登校するまで、と言うと非常にシンプルだが、途中ではシンジがいきなり災難に見舞われ、謎の巨大生物が登場し……といったシュールな展開が満載となっており、まさに桜井ワールド炸裂。三木監督チームのスラップスティックなテイストともまた違った『ぷちえう゛ぁ』になっている。今回は映像の長さを調節する「編集」と、音響を調整する「MA」の作業に立ち合わせていただいた。

<編集>
通常テレビアニメは厳密に分数が決まっているが、『ぷちえう゛ぁ』はとくに制限がない。そこで桜井監督の場合は事前に3分前後のBGMを用意し、そのリズムに沿う形でタイミングを調節していく。カットごとの不要な部分を削ぎ落とし、テンポをよくするのはもちろん、場合によっては動いている途中のコマを細かく抜いて、3D特有のなめらかな動きをキビキビしたものに仕上げていく。動きをいじるこうしたテクニックは、2Dアニメの編集の現場ではよく行われるのだとか。

編集スタジオでの作業風景。編集の松村正宏さん(左)は『赤ずきんチャチャ』『ナースエンジェルりりかSOS』の時代からの縁とか
(c)GAINAX・カラー

作業中の編集モニタ。中央の青いラインが順番通りに並べられたカット。これを選択(=紫の部分)して編集する。ワープロソフトで文字を挿入したり、削除したりする感覚に近い
(※作品画像は制作中のものです)
(c)GAINAX・カラー

動画
編集作業中のモニタ。スープ皿が左から出てくるタイミングがちょっとなめらかすぎる、ということで途中のコマを違和感のない範囲で間引いてスピードを上げる
(※作品画像は制作中のものです)
(c)GAINAX・カラー

編集はすべてPC上で行われているので、作業後には奥のVTRルームにあるマスターモニタで最終的な色味を確認
(c)GAINAX・カラー

<MA>
セリフ、BGM、効果音といった作品の音声全般を調節し、適切な音響バランスになるようにするのがMA(=マルチオーディオ)と呼ばれる作業。『ぷちえう゛ぁ』の場合はセリフがなく、またBGMも入っているので、MAでは効果音を付け足した上で音が大きすぎる部分、小さすぎる部分などを細かくチェックしていくことになる。MAで「その場面で何を聞かせたいのか」を明確にさせることで、演出の意図がよりはっきりしていく。

こちらはMAスタジオ。音響効果の神保大介さん(左)も桜井監督とは『赤ずきんチャチャ』時代からの10年以上の付き合いとか
(c)GAINAX・カラー

『ぷちえう゛ぁ』は5.1chで制作。MAスタジオには前方はもちろん、後方にも左右にスピーカーが配置されている
(c)GAINAX・カラー

効果の作業モニタの様子。様々な種類の効果音が少しずつタイミングを変えて入れられているのがわかる
(c)GAINAX・カラー

動画
サンプルとしてBGMを抜いて効果音だけにしてもらった。食事のシーンだけでもかなり細かく効果音がつけられていることがわかる
(※作品画像は制作中のものです)
(c)GAINAX・カラー