高視聴率を連続で記録しているTBS火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。12月13日の放送では、ロケ地として東京・上野にある国立科学博物館で開催中の「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」が登場しました。ゆりちゃんと風見さんがそれぞれデートしている最中にばったり遭遇、というハラハラする展開でしたが、ラスコー展のミステリアスでロマンチックな雰囲気がドラマの盛り上げに一役買っていたように思います。

ラスコー展の展示では彩色と線刻の2つの技法が使われていて、線刻の方はブラックライトで照らされて分かるようになっています。(c)SPL Lascaux international exhibition

世界遺産登録名は「ラスコー」ではない

ラスコー洞窟は、2万年ほど前にクロマニョン人によって描かれた躍動感あふれる動物たちの彩色画が残っており、世界遺産として登録されています。ところで、世界遺産の登録名は「ラスコー」ではありません。正式名称は『ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡』です。フランス南西部のヴェゼール渓谷に点在する先史時代の遺跡群がまとめて登録されており、その中のひとつがラスコー洞窟というわけなのです。

この洞窟の発見には逸話があります。第2次世界大戦中の1940年9月、4人の少年と1頭の犬がこの一帯に広がる森で探検ごっこをしていました。すると、先陣をきった犬が穴の中に落っこちてしまったのです。少年たちが数日後にまたその穴に入ってみると、そこは洞窟となっていて、ランプの明かりの中で無数の動物の絵が浮かび上がりました……。それを学校の先生に伝えて、その先生が研究者に伝えてという風に話が広がっていき、世紀の大発見に大騒ぎとなりました。

実物大で再現された2mほどの黒い牝ウシの壁画です。立体的な表現にびっくりします。(c)SPL Lascaux international exhibition

展示用に「ラスコー2」を作成

戦後多くの見学者が訪れ、壁画がダメージを受けたためにオリジナルの壁画は立ち入り禁止となり、近くに「ラスコー2」と呼ばれる展示用のレプリカが作られました。ところで第一発見者の少年は、ナチス・ドイツ占領下のフランス政権時代にあって、目立たぬように息を潜めて生活しており、発見者であることを戦時中は伏せていたそうです。

こちらは「ラスコー2」で再現された馬の壁画です。濃淡をつけた彩色が見事ですね

少年たちを驚かせた壁画ですが、クロマニョン人が描きました。クロマニョン人は旧石器時代にヨーロッパに分布した、狩猟採集の生活をしていた人類です。ラスコー洞窟の壁画や装飾的な石器を見ると、彼らが豊かな芸術的センスをもっていたことがうかがえます。

ラスコー展では、洞窟を再現した迫力のある展示(ゆりちゃんと風見さんが遭遇した場所ですね! )の他にも、とてもリアルなクロマニョン人のマネキンや多彩な道具などの展示などがあり、立体的に当時の様子を体感できるよう工夫がこらされています。まるでテーマパークのひとつのアトラクションのようで、大人も子どももみんな楽しめると思います。

ラスコー展では、クロマニョン人のマネキンがお出迎え! アクセサリーもけっこうおしゃれです。(c)SPL Lascaux international exhibition

東京では2017年2月19日までの展示で、その後、3月25日~5月28日に宮城・東北歴史博物館、7月11日~9月3日に福岡・九州国立博物館に巡回します。なお、筆者がゆりちゃんのようにラスコー展で博物館デートをしたかどうかはヒミツです。

世界遺産データ

ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡。文化遺産。1979年登録。フランス

地図

筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて